goo blog サービス終了のお知らせ 

「浄瑠璃寺」 京都府木津川市

真言律宗
「小田原山 浄瑠璃寺」
2015/8/20



「真言律宗 浄瑠璃寺」へ行ってきました。

京都府最南端、奈良県との県境に面した木津川市。そのさらに南西部の山中に位置するのが浄瑠璃寺です。

創建は1047年。平安時代です。(ただし諸説あります。)12世紀には九体阿弥陀堂が造られ、平安末期には京都より三重塔を移設。今に至る寺観がおおむね整備されました。

東に薬師仏、中央に宝池、そして西が九体阿弥陀如来です。池を挟んで西に阿弥陀如来を配する伽藍は、平等院と同様です。過去仏と来世、未来仏。此岸と彼岸の世界を表しています。

さて浄瑠璃寺、所在こそ京都府内ですが、アクセスは奈良市中からの方が遥かに便利です。JR、もしくは近鉄の奈良駅より浄瑠璃寺行きのバスが出ています。

9時より15時頃まで1時間に1本。(12時台はありません。)本数こそ僅かですが、乗ってしまえば意外と早い。何と全便が急行バスです。途中、2~3の停留所にしかとまりません。ともかく山の中と聞いていたのでどれほど遠いのかと思いましたが、実際には30分もかからないうちに到着しました。


バス停から浄瑠璃寺入口方向

浄瑠璃寺のバス停のそばがお寺の入口です。実に静かでした。土産物屋らしき店がありましたが、そもそも開いていませんでした。人気がありません。周囲は鬱蒼とした緑に囲まれた山間の田園地帯です。ちょうど雨が降ったからでしょうか。聞こえるのは雨音とウシガエルの合唱、そして蝉の声だけです。それ以外、ほぼ一切何も聞こえませんでした。


宝池と九体阿弥陀堂(右)

山門をくぐると正面に池が開けてきました。左を向くと小高い丘の上に三重塔がそびえています。一方、右手は平屋の本堂。九体阿弥陀堂です。九体の阿弥陀仏を祀るゆえか横長です。塔とともに国宝の指定を受けています。

こうした九体の阿弥陀仏を祀る阿弥陀堂は、当時、京都を中心に競って建造されましたが、今残っているのがここ浄瑠璃寺だけです。


浄瑠璃寺「九体阿弥陀堂」 藤原時代 国宝

此岸と彼岸。本来は三重塔から廻るべきなのかもしれませんが、気づかなった私は、まず阿弥陀堂の方へと向かいました。受付で拝観料を支払って中に入ります。靴を脱ぎ、お堂の裏側の外廊下を奥へ進みます。ちょうど受付の反対側に入口がありました。

そっと扉を開けてみました。並ぶのは阿弥陀如来像です。全九体で横一列。これほどのスケールで祀られているのを見たことはありせん。堂々たる姿です。中は薄暗いものの、金色の輝きを未だ失っていないようにも見えます。思わず息をのんでしまいました。


浄瑠璃寺「西方九体阿弥陀如来像」 藤原時代 国宝 *パンフレット写真より

堂内では一体一体の仏像の前でじっくりと向き合うことが出来ます。ちょうど前に座って上を見やると、阿弥陀仏の視線にすっぽり収まりました。じっと見据える視線。時に険しくも、どこか優し気でもあります。まさしく荘厳です。(内部の撮影は出来ません。上に掲載した写真はパンフレットの画像です。)

中には九体阿弥陀如来像のほか、不動明王に四天王像、さらに子安地蔵菩薩像などが祀られています。なお四天王像に関しては持国天と増長天の二体のみでした。ほか多聞天は東京国立博物館、広目天は京都国立博物館に寄託されています。


浄瑠璃寺「三重塔」 藤原時代 国宝

本堂を出て池の端を歩き、反対側にある三重塔へ向かいました。祀られているのは薬師如来。ただし秘仏です。開扉日が限定されています。この日に拝むことは叶いませんでした。(ほかにも吉祥天女像や大日如来像などが秘仏として扱われています。)


三重塔より九体阿弥陀堂方向

三重塔は階段上のやや高い場所に建てられています。そこから池越しに彼岸、阿弥陀堂を眺めてみました。一体一体の如来の前にそれぞれ板扉が設置されていることが分かります。パンフレットによれば春分と秋分の彼岸の中日には、太陽がちょうど堂の後方へ沈んでいくそうです。どのように美しい光景なのでしょうか。今でこそ中に入ることが出来ますが、元々は堂の外の東側から来迎仏を拝むのが一般的だったのかもしれません。

さて浄瑠璃寺のある当尾一帯は古くから浄土信仰の霊地として栄えた地域。石仏が多いことから、現在は「当尾の石仏の里」とも名付けられています。

観光に際しては浄瑠璃寺とあわせ、その先に位置する岩船寺とバスで廻るのが一般的のようですが、この日は時間の都合で断念。ただし少しバスまでに時間があったので、しばらく散歩することにしました。石仏は浄瑠璃寺の徒歩圏内にもいくつか点在しています。


「やぶの中三尊」

茂み、まさに薮の中に潜むように立つのが「やぶの中三尊」です。正面に地蔵菩薩、右に十一面観音様、そして左の岩に彫られたのが阿弥陀如来。銘に弘長2年(1262年)と記されていますが、それは当尾地区の石仏で最も古いものでもあるそうです。


浄瑠璃寺周辺地区

ぷらりと石仏を探しての散歩道。元々、当尾は花崗岩が多く露出している地域でもあります。かつては僧や行者が奈良から伊賀の方へと行き交っていました。何時しか誰にともなく岩へ石仏を刻んでいったのかもしれません。


宝池と三重塔(左)

バスに関しては奈良交通の世界遺産1dayPassが便利でした。Passを使うと往復500円で奈良駅と行き来することが出来ます。(通常は片道570円。)


浄瑠璃寺山門

夏の雨の中の浄瑠璃寺彼岸体験。小さな小さなお寺です。先だっての「白鳳展」の観覧にあわせての短い滞在でしたが、しばし満喫しました。

「真言律宗 小田原山 浄瑠璃寺」
拝観時間:9:30~17:00。
 *ただし冬季(12~2月)は前後各1時間短縮。
拝観料:300円。
住所:京都府木津川市加茂町西小札場40
交通:JR線、近鉄奈良駅より奈良交通バス112系統「浄瑠璃寺」行き、終点下車すぐ。(全便急行。所用時間約30分。)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )