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読売日本交響楽団2011年シーズン発表記者会見

読売日本交響楽団2011-2012シーズン記者発表会(11/22開催)に参加してきました。



既に来シーズンのプログラムは同楽団WEBサイトでも告知されていますが、先日改めて常任指揮者のカンブルランと正指揮者の下野が同席した上で、その概要などが発表されました。

2011年度公演スケジュール@読売日本交響楽団(pdfパンフレット

まず初めに読響を代表し、同楽団の理事長である横田弘幸氏の挨拶が行われました。

~理事長 横田弘幸~


挨拶する同楽団理事長の横田弘幸。通訳を挟んで右はカンブルラン。

2012年に創設50周年を迎えるオーケストラ。
日本におけるクラシックの普及と発展に尽力してきたと自負している。
現在もカンブルランと下野の両巨頭を迎えて意欲的に活動している。
来年は楽団の「プレ50周年」ともいえる年。日本にクラシック音楽を普及させるという原点にたち戻り、日本人の生活の中にもっとクラシックを取り込んでいこうという活動をさらに進めていきたい。

続いて同楽団事務局長の坂田氏により、来シーズンの大まかな概要などについての簡単な説明がありました。

~事務局長 坂田誠一郎~


プログラムについて説明する事務局長坂田誠一郎。

来シーズンは常任指揮者にカンブルランが就任してから2年目の年。また下野も2006年に正指揮者に就任して今年で4年。読響の顔である。
来年は芸術劇場が改修工事に入るため、名曲シリーズとマチネーは初台の東京オペラシティコンサートホールに移る。工事は2012年に終了する予定だが、元に戻る時期などは今検討している段階だ。

[定期演奏会]
カンブルランは4月と9月と11月の公演に登場。テーマは「ロミオとジュリエット」。
5月にはチェコ・フィルで活躍したマーツァルが読響に初共演する。
7月には下野がヒンデミットの珍しい曲とともにブルックナーを披露。下野が東京でブルックナーを振るのは初めてである。
10月は團伊玖磨の没後50年に際し、彼の交響曲第6番を演奏する。
3月にはスクロヴァチェフスキが来日。その年の5月にベルリンフィルでも指揮予定のブルックナーの交響曲第3番を演奏する。

[サントリーホール名曲シリーズ]
4月のカンブルランはチェコでまとめたプログラム。モーツァルトの「プラハ」に始まり「モルダウ」からヤナーチェクへ至るプログラムを演奏する。
6月のカリニャーニによるモーツァルトのレクイエムは、新国立劇場のコジ・ファン・トゥッテに出演予定のキャストで臨む。
12月の恒例第9公演は全部で6公演を予定。指揮は全て下野が担当する。

[オペラシティ名曲シリーズ]
サントリーの名曲シリーズと違うのは7月と10月。
7月は下野が定期公演と同じブルックナーを演奏。曲は第4番「ロマンチック」。
10月は昨年5月の読響との共演が好評だったオラリー・エルツが指揮。シベリウス国際コンクールで優勝した俊英に期待したい。

[オペラシティ・マチネーシリーズ]
9月のカンブルランが「幻想交響曲」を振り、また11月にはドイツものの王道とも言えるシューベルト、ワーグナー、R.シュトラウスを披露する。
また1月には下野がドヴォルザークシリーズから大曲の新世界を振る。
2月のヴァンスカの悲愴と3月のスクロヴァチェフスキの第4番という、チャイコフスキー対決にも注目してほしい。

[みなとみらいホリデー名曲シリーズ]
2005年から始まったシリーズ。本格的なプログラムをファミリーでも楽しんでほしい。
注目してほしいのは10月公演。定期同様に下野が團伊玖磨の交響曲第6番を披露する。これは団が神奈川と所縁があることから組まれたプログラムだ。

一通りの説明の後、常任指揮者のカンブルランより自身のプログラムにかける意気込みなどが語られました。

~常任指揮者 シルヴァン・カンブルラン~


常任指揮者カンブルラン。身振り手振りを交えてのトークでした。

プログラム全体の大きなテーマは「ロミオとジュリエット」。大勢の人が取り上げで様々な愛と死、そして喜びが表現されている主題だ。
ベルリオーズの「ロミオとジュリエット」は大作。オーケストラや合唱が絡み合い、現代的でロマンチックな音楽が展開される。グランドオペラのようにドラマチックだ。
プロコフィエフとラヴェルのプロを予定している。プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」については華やかで、悲しみだけでなく明るさも感じられる音楽だ。またラヴェルは私のようなフランス人にとっては重要なレパートリー。特に今回の「ボレロ」はオーケストラにとっても意味深い音楽で、団員一人一人の真剣な取り組みが要求される。ドラマチックな演奏にしたい。
チャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」と一緒に演奏するのは悲愴。実はチャイコフスキーは滅多にやらないがこの悲愴は好きな音楽だ。
チェコプロは興味深い演奏になるはず。チェコへ一種のオマージュである「プラハ」をはじめ、オーケストラにとっては難曲でもあるヤナーチェクを効果的に演奏したい。
ベートーヴェンは音楽の核心だ。指揮をする全ての人間に喜びを与えている。また彼の音楽は常に今の人間に語りかけている。演奏することは常に新しく、また発見のあることだ。
ドビュッシーやワーグナーのプロは「海」をテーマにしている。メンデルスゾーンの海は嵐をも示し、ワーグナーも海の情景をエキサイティングに描いた。一方でドビュッシーやショーソンは静かで透明感の海を表していると言えるだろう。
モーツァルトのプログラムは常に古きよき友人に再会するつもりで演奏している。
ドイツプロにも力が入る。マイスタージンガーについては唯一、笑いの要素がある彼の作品であるかもしれない。R.シュトラウスのティルはオーケストラの能力を高める上でも重要。楽しい音楽なので私自身も楽しんで指揮をしたい。

カンブルランは時に通訳の方がストップをかけなくてはならないほど熱のこもった様子で音楽に対する思いを話していました。

そして引き続き、正指揮者の下野からも同じくプログラムに対するコメントがありました。

~正指揮者 下野竜也~


下野竜也。

継続してやっているヒンデミットは難曲だが、演奏する毎にオーケストラの方からため息が減っているのは嬉しい。(笑)
ヒンデミットの「さまよえるオランダ人への序曲」は私が組んだ弦楽合奏版で演奏する。楽しみだ。
ヒンデミットとあわせて取り上げているドヴォルザークは昨年、1番と4番を演奏してマニアックと言われたので、来シーズンは5番や9番をやりたい。ちなみに3番と9番を並べたのはサンキューという意味だ。(笑)
日本人として邦人作品を積極的に演奏していきたいと思っている。昨年は黛先生と取り上げたが今度は團先生だ。
恒例の第9の話をカンブルランにしたら「GOOD LUCK!」といわれた。


カンブルランと下野の両指揮者。

冷静な語り口ながらも終始、冗談を交えてのにこやかな会見となりました。
最後にカンブルラン、下野両氏も同席した上で、質疑応答が行われました。こちらも興味深い内容であったのでまとめておきます。

~質疑応答~

Q 入場料について。最近ネットなどで一回券を買う若者も多いと聞くが、読響はシーズン券と一回券の値段の差が大きすぎるのではないか?一年を通してコンサートに通いつめるのは大変だ。
A(坂田) シーズン料金が設定された詳しい意図についてはわからないが、やはり長期間通っていただきたいという思いで安いシーズン料金を設定している。変更についても検討はしていきたい。

Q 創立以来、音楽監督をおいていないが導入する意図は?
A(坂田) 音楽監督をおこうという考えはない。今の通り常任、正指揮者の体制でいく。

Q 團伊玖磨の「広島」とアダムスのドクター・シンフォニーをプログラムした意図は?
A(下野) 演奏する前にあれこれ自分の心情を話すのは危険なのでなるべく避けたいと常に思っている。これも作品を聞いてから色々考えて下さいという他ないが、特に若い人たちが音楽を通して、昨今の日本の置かれた状況や先人たちが残した課題などについて色々頭を働かせる良い機会になるのではないかと思った。広島とアダムスを組み合わせることで、日本からの視点と外国からの視点の違いなども見えてくるかもしれない。たまには演奏会でそうしたことを考えるのも良いと思う。

Q 世界中で様々なオケを指揮してきた中で、今読響に携わっているのはどういう理由なのか。また日本の聴衆とは?
A(カンブルラン) ドイツでもフランスでも日本でも指揮や音楽は同じだ。目の前にあるのは音楽、楽譜であって、それに違いなどない。
日本の聴衆はとてもポジティブに音楽に接してくれる。演奏でも集中しているのがよくわかる。日本人は音楽を聞きにコンサートへ来ているが、それが違う国もある。世界で最悪の聴衆なのはパリだ。(笑)

Q 例えば演劇など他のジャンルとのコラボレーションなどは行わないのか。
A(カンブルラン) もちろんそれは重要だ。ただ本質的に劇場とコンサートの人間は違うと思っている。また今の私は主に交響曲をレパートリーにしている。またオペラ公演については日本とフランスでシステムが異なる。私は7週間程度のリハーサルが必要で公演も8~9日ほどは続けるべきだと思うが、日本でそれをするのは難しい。

Q 今年はマーラーイヤーということで、在京の各オーケストラはさかんにマーラーを演奏している。しかし読響はコンサートマスターにマーラーに造詣の深いデヴィッド・ノーランを迎え入れているにも関わらず、あまりレパートリーにのらない。何故なのか。もっと演奏すべきだ。
A(坂田)決してマーラーを避けているわけではなく、結果的になったと言うしかない。次のシーズンでもテーマにロミオとジュリエット、そしてヒンデミットなどの設定があってプログラムが決まった。
A(カンブルラン) アニバーサリーイヤーは常々やってくる。マーラーの前はメシアンがあってそれは楽しかった。でもその時にメシアンをやり過ぎたのか今は誰も聞きたがらない。(笑)何度も重ねて演奏するとそういう状況に陥る。それはなるべく避けたい。

以上です。この後、カンブルランと下野の記念撮影の他、懇親会などが続いて約1時間半ほどの記者会見は散会となりました。


発表会後、撮影に応じる横田、カンブルラン、下野の三氏。

なお読響でこうした新シーズンプログラムの発表会があったのは過去にあまり例がないそうです。私自身、普段なかなか接点のない指揮者の方々の音楽にかける思いを拝聴出来てとても収穫になりました。もし可能であれば、ファンの方などを招待してのさらに間口の広がった発表会などあればより面白くなるかもしれません。



何年か前、読響の演奏会でカンブルランによるトゥーランガリラ交響曲を聞いて非常に感銘を受けたことがありました。(上のちらしは当時のものです。)その後、彼が常任に就任すると聞いてとても嬉しくなりましたが、下野氏他、ミスターSやヴァンスカらも交えた実力派揃いの指揮陣の登場する読響から目が離せそうもありません。


発表会会場の東京芸術劇場。

読響の来シーズンにも大いに期待したいと思います。
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