都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
疾風怒濤のニューイヤー・コンサート2006

曲 ヨハン・シュトラウスのワルツやポルカなど
指揮 マリス・ヤンソンス
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
このようなイベントは、タイムリーに記事にした方が良いかと思いますが、思いの外楽しめたので、今更で拙いながらも少し取り上げてみました。毎度お馴染み、元日恒例のお約束企画「ウィーンフィル・ニューイヤー・コンサート2006」です。指揮はヤンソンスでした。
それにしてもニューイヤーを地上波の生中継で聴くのはとても久しぶりです。と言っても、前々から期待を膨らませ、冒頭からチャンネルを合わせて待ち構えていたのではなく、日本酒を飲みながら少し気分良くなって来た所で、TVを付けたら偶然NHK、しかもニューイヤー、さらには丁度後半の開始部分だったというわけでした。
今年はモーツァルトイヤーと言うことで、選曲にかなり工夫が凝らされていました。ニューイヤーで聴くフィガロ序曲も実に新鮮ですが、それに続くランナーのワルツ「モーツァルト党」は、最高の通俗性で楽しませてくれる名曲です。魔笛序曲の三つの和音が鳴り響いたと思ったら、僧侶の行進曲、さらにはザラストロのアリア等へと進み、いきなりドン・ジョバンニへ。宴のシーンや、他に幾つかのアリアを鳴らした途端、また魔笛の序曲へ舞い戻る。もう滅茶苦茶。もちろん、だからこそ面白いわけですが、こんなパロディーをここで楽しめるとは思いませんでした。
パロディーと言えば、シュトラウスの「芸術家のカドリール 」も、有名曲のメドレーで楽しませます。メンデルスゾーンの結婚行進曲から、モーツァルトの交響曲第40番、その後もシューベルトなどを経由し、魔笛のフレーズから華やかなマーチへ。直線的に飛ばしまくるヤンソンスの指揮は、ウィーンフィルを煽るかのようにまくしたて、このような通俗曲にも緊張感をもたらします。もう文句の付けようもありません。
そのヤンソンスですが、愚直に、また少し聴衆を挑発するかように、自らのスタイルを貫いていました。ナーバスなウィーンフィルを、重心低く、豪胆で迫力のマッチョな音へと変える一方、ワルツとポルカの愉悦感は殆ど排除され、まるで乗り切れない、鋭角的なリズムで音楽を刻んで行きます。また、お馴染みの(?)強いアタックも健在です。ガンガンと金槌を打っているかのように、アタックに反応して、半ば金属的な音を鳴らすウィーンフィル。時折TVに映る、メンバーのしかめっ面の表情が何やら意味深です。刺激的とも言えるニューイヤーを演出して、ともかく楽しませてくれました。
最後の二曲(美しく青きドナウとラデツキー)こそ、やや重過ぎるように思いましたが、ニューイヤーを良い意味でリフレッシュさせたヤンソンスの力量には脱帽です。「もう全く受け付けない!」という方もおられそうなワルツに、私はとても惹かれます。途中挿入のバレエも非常に美しく、後半部分だけではありましたが、まさに酔いも醒めるほど面白く聴けたニューイヤーでした。
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