都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「イスラエル美術の兆し展」(横浜会場) ヨコハマポートサイドギャラリー 6/18

「イスラエル美術の兆し展 多文化社会に生きる」
6/10~7/7
東京と横浜の二会場に分かれて開催されているイスラエルの現代美術展です。出品作家は全部で四名。横浜会場であるヨコハマポートサイドギャラリーでは、ダニエル・バウァーとニラ・ペレグの作品が展示されていました。
展示室の中央に置かれているビデオ・インスタレーションは、ニラ・ペレグの「Canicule」という作品です。ホームセンターで購入してきたという、裏地に葉とレンガの模様が描かれたビニールシートをスクリーンに見立てて、多くの人々が水浴びをしている光景を、靄のかかったような不鮮明な映像で見せていきます。イスラエルの作家ということで、映し出された場所がイスラエルを含んだ中東地域かと思ってしまいますが、実は数年前猛暑に見舞われたパリで撮影されたフィルムなのだそうです。様々な人種の人たちが肌を露にしての水浴びの姿。この映像の手にかかると、それが人々の暴力的なぶつかり合いやデモ行進などの、力強く逞しい営みへと変化させて見えてきます。本来はガラスに映し出して両面から見ることの出来る作品だったそうですが、今回の展示ではあえてビニールシートという全く別の素材を使って、新たな表現を模索していったのだそうです。パッと見ただけでは水浴びとは分からない映像です。見る側の様々な物語が投影されそうな作品でした。
ペレグの作品の横に4点程並んでいたのは、ダニエル・バウァーによる平面作品でした。一見、ごく普通のイスラエルの風景写真かと思いきや、実は写真に17世紀オランダ絵画の光の表現を取り込んで重ね合わせたという、凝った仕掛けになった作品です。荒々しい岩肌の露出するイスラエルの地平線にのしかかるオランダ絵画の独特の空。全く接点のない「場」を同一化させて斬新な「場」をもう一つ生み出していました。私には面白く見えましたがどうでしょうか。
ヨコハマポートサイドギャラリーは、この展覧会の開催で、初めてその存在を知りました。駅前とは思えないような横浜駅東口の殺風景な所を歩くこと5~6分。オフィスビルの一階にある目立たない小さなギャラリーです。私が行った時はギャラリーの方がわざわざ「作品解説」をして下さいましたが、美術展で説明を受けるのは初めての体験で少し驚きました。(もちろんとても参考になりましたので、有難かったです。)今度は東京会場のトーキョーワンダーサイトで、残りの二名の作品を見てこようかと思います。
*ヨコハマポートサイドギャラリーは日・祝日がお休みです。
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