都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
新国立劇場 「フィデリオ」
新国立劇場 2004/2005シーズン
ベートーヴェン「フィデリオ」
指揮 ミヒャエル・ボーダー
演出 マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
キャスト
ドン・フェルナンド 河野克典
ドン・ピツァロ ペテリス・エグリーティス
フロレスタン トーマス・モーザー
レオノーレ ガブリエーレ・フォンタナ
ロッコ ハンス・チャマー
マルツェリーネ 水嶋育
ヤキーノ 吉田浩之
囚人1 水口聡
囚人2 青戸知
合唱 新国立劇場合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
2005/6/7 18:30 新国立劇場オペラ劇場 4階
新国立劇場で「フィデリオ」を聴いてきました。
監獄の舞台は、塔をイメージしたという大きな円柱で示唆されていました。「救済の時」以外は終始暗い照明の元、看守たちは共産国の軍服のような衣装で威圧的に振るまい、囚人たちはぼろぼろの白い衣装で抑圧された状況を嘆きます。外の空気を吸うために登場した囚人たちの合唱の際に、何やら太極拳のような仕草をしていたのには驚かされましたが、新国立劇場合唱団の歌唱は彼らの悲痛な思いを力強く叫んでいました。ピツァロの悪に鉄槌が下され、愛をの勝利を高らかに歌う最後の大円団では、突如、皆がタキシードにウエディングドレスでカップルを作り、一種の集団結婚式のような様相を呈します。これにはやや面食らいましたが、夫婦愛による勝利と歓喜の状況を表現するには上手い方法なのかもしれません。フロレスタンがレオノーレとロッコにパンをちぎって渡すシーンなど、細かい部分の所作にも色々と工夫がありました。興味深い演出だったと思います。(ところで、舞台上の円柱が、以前SCAIで見た遠藤利克展の「空洞説」に似ていました。質感こそ異なりますが、他を圧倒するような存在感は同じでした。)
音楽の面では、最近いつも充実した合唱を聴かせてくれる新国立劇場合唱団と、レオノーレ役のフォンタナが頭一つ抜きん出ていたと思います。特にフォンタナは、第一幕こそややセーブ気味でしたが、第二幕、特にフロレスタンと出会う場面から表情に鬼気迫るものが加わって、力強い歌唱がステージ上で一際輝いていました。囚われの身にしては随分と恰幅が良いフロレスタンのモーザーを完全に圧倒しています。聴き応えがありました。
役作りがとても上手く歌い回しも器用なロッコのチャマーと、囚人役の水口聡と青戸知の丁寧な歌唱には好感が持てました。私としてはイマイチだったピツァロのエグリーティスとフロレスタンのモーザーにもう一段の存在感があれば、公演の水準がさらに上がったようにも思います。(特にエグリーティスは、以前「フィガロの結婚」で聴いた時よりかなり厳しい歌声でした…。)
ボーダーは極めて重厚なベートーヴェンを聴かせてくれました。以前、新日本フィルの公演で聴いたアルミンクの「レオノーレ」がリズミカルで鋭角的な音楽なら、ボーダーはもっと腰を低く構えたゆったりとした音楽に仕上がっていたと思います。私はアルミンクの方に軍配を挙げたいのですが、こればかりは嗜好の問題なので何とも言えません。反応がもう一つな東フィルを上手くまとめ、高揚感のあるフィナーレを作り上げていたのには感銘させられました。また聴いてみたいと思わせる手堅さがありました。
次の新国立劇場は、次シーズンの開幕公演となる「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を聴こうと思います。好きな作品なので楽しみです。
ベートーヴェン「フィデリオ」
指揮 ミヒャエル・ボーダー
演出 マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
キャスト
ドン・フェルナンド 河野克典
ドン・ピツァロ ペテリス・エグリーティス
フロレスタン トーマス・モーザー
レオノーレ ガブリエーレ・フォンタナ
ロッコ ハンス・チャマー
マルツェリーネ 水嶋育
ヤキーノ 吉田浩之
囚人1 水口聡
囚人2 青戸知
合唱 新国立劇場合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
2005/6/7 18:30 新国立劇場オペラ劇場 4階
新国立劇場で「フィデリオ」を聴いてきました。
監獄の舞台は、塔をイメージしたという大きな円柱で示唆されていました。「救済の時」以外は終始暗い照明の元、看守たちは共産国の軍服のような衣装で威圧的に振るまい、囚人たちはぼろぼろの白い衣装で抑圧された状況を嘆きます。外の空気を吸うために登場した囚人たちの合唱の際に、何やら太極拳のような仕草をしていたのには驚かされましたが、新国立劇場合唱団の歌唱は彼らの悲痛な思いを力強く叫んでいました。ピツァロの悪に鉄槌が下され、愛をの勝利を高らかに歌う最後の大円団では、突如、皆がタキシードにウエディングドレスでカップルを作り、一種の集団結婚式のような様相を呈します。これにはやや面食らいましたが、夫婦愛による勝利と歓喜の状況を表現するには上手い方法なのかもしれません。フロレスタンがレオノーレとロッコにパンをちぎって渡すシーンなど、細かい部分の所作にも色々と工夫がありました。興味深い演出だったと思います。(ところで、舞台上の円柱が、以前SCAIで見た遠藤利克展の「空洞説」に似ていました。質感こそ異なりますが、他を圧倒するような存在感は同じでした。)
音楽の面では、最近いつも充実した合唱を聴かせてくれる新国立劇場合唱団と、レオノーレ役のフォンタナが頭一つ抜きん出ていたと思います。特にフォンタナは、第一幕こそややセーブ気味でしたが、第二幕、特にフロレスタンと出会う場面から表情に鬼気迫るものが加わって、力強い歌唱がステージ上で一際輝いていました。囚われの身にしては随分と恰幅が良いフロレスタンのモーザーを完全に圧倒しています。聴き応えがありました。
役作りがとても上手く歌い回しも器用なロッコのチャマーと、囚人役の水口聡と青戸知の丁寧な歌唱には好感が持てました。私としてはイマイチだったピツァロのエグリーティスとフロレスタンのモーザーにもう一段の存在感があれば、公演の水準がさらに上がったようにも思います。(特にエグリーティスは、以前「フィガロの結婚」で聴いた時よりかなり厳しい歌声でした…。)
ボーダーは極めて重厚なベートーヴェンを聴かせてくれました。以前、新日本フィルの公演で聴いたアルミンクの「レオノーレ」がリズミカルで鋭角的な音楽なら、ボーダーはもっと腰を低く構えたゆったりとした音楽に仕上がっていたと思います。私はアルミンクの方に軍配を挙げたいのですが、こればかりは嗜好の問題なので何とも言えません。反応がもう一つな東フィルを上手くまとめ、高揚感のあるフィナーレを作り上げていたのには感銘させられました。また聴いてみたいと思わせる手堅さがありました。
次の新国立劇場は、次シーズンの開幕公演となる「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を聴こうと思います。好きな作品なので楽しみです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )