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東京国立近代美術館 「草間彌生展:永遠の現在」

東京国立近代美術館(千代田区)
「草間彌生展」-永遠の現在
2004/10/26~/12/19

こんにちは。

竹橋の近代美術館でやっていた草間彌生展を見てきました。確か以前、森美術館で「クサマトリックス」という個展を開催していたと思うのですが、それは見そびれてしまったので、今回、初めて草間さんの作品を本格的に体験しました。

まず、黒いドットに浸食された大きな黄色いかぼちゃが迎えてくれますが、それを抜けると、全面ガラス張りの輝かしい空間が待ち構えています。これは「信濃の灯」という作品だそうです。タイトルの意味はちょっとわかりませんが、たくさんの鏡を張り巡らした無限の鏡の部屋から、派手な電飾をほどこした、これまた無限の鏡の小部屋を覗く作りとなっています。要は、無限の中にさらにきらびやかな無限の空間があることになるわけですね。私は小部屋を覗きながら、電飾のまばゆい機械的な点滅にしばし見とれてしまいましたが、ともかくも、でかいかぼちゃに無限の無限ということで、いきなり草間ワールドにノックアウトされること必至です・・・。

草間さんが小学生の時に描かれた自画像(?)がありました。「5年 草間彌生」と署名してありましたので、おそらくその頃描かれたものだと思います。もちろん、この時点で、すでに小さくともたくさんのドットが描かれています。また、その後の70年代のコラージュの作品にはたくさんの虫や植物が登場してきます。ドットで描かれた自画像の上に、さらにドット状になった網目のネットを被せてしまうあたりは、草間さん独自の視覚性がよく現れていると思いました。

上の写真にあるのは「水玉強迫」です。やはり、黒い大きなドットが目をひきます。ただ、タイトルに「強迫」とありましたが、私はあまりそういった印象は受けませんでした。ソフトな感触のバルーンと、ブラックホールのようなたくさんのドット。その異空間には、不思議にも心地よいものさえ感じました。黄色の力でしょうか。あまりよくわかりません・・・。

「水上の蛍」は、この展覧会で一番印象に残る作品です。これまた鏡の無限の空間を、数えきれないぐらいたくさんの小さな光がずっと点滅しています。入るのに列が出来ていましたので、長い間そこにいることは出来ませんでしたが、もし可能ならば入り口も閉めて、30分でもそれ以上でも体験してみたい世界です。銀河の中心、脳の中を視覚化したもの、小さな魂がふわふわと浮いたこの世ではない世界・・・、色々なイメージが浮かびます。「自己消滅」がテーマのようですが、あの空間に入ると、確かに自己を忘れそうになります。神秘体験って、これに近いようなことを指すのでしょうか。

「男根の命を凍結してしまったかのよう。」(パンフレットから。)とされる突起物に覆われたいくつかのオブジェ。これらは他の美術館でもたまに見ますが、これだけまとまった形になって展示されているのはとても珍しいと思います。私にはあの突起物が、この世界を浸食してくる何かの触手のように見えるのですが、どうなんでしょうか。美しい食卓もテーブルもボートも、どんどん触手に侵されていきます。不気味・・・。少し背筋が寒くなりそうでした。

一番最後にあった3枚の絵画はとても美しかったです。ドットが実に精密に、もはや絶対に画面から離れることがないくらい、しっかりと描かれています。そしてその色彩感も見事です。どのようにこの絵を捉えていいのかはわかりませんでしたが、30年代の作品と比べたとき、初めは対象を少しずつしか覆っていなかったドットが、いつの間にやらこうして全面的に主役に躍り出たような気がしました。「水上の蛍」や「天国への梯子」では、ひたすら無限の世界へ進んでいくのに、ドットや触手の方はどんどん対象を覆って侵攻してくる。この辺りはどのように考えればいいのでしょうか。

日曜日の午後に行ったのですが、会場は驚くほど空いていてゆっくりと見ることができました。現金な話で恐縮ですが、800円かそこらでこんなクサマワールドを体験できます。なかなかおすすめです。

公式サイトに50円引きの割引引換券がありました。プリントアウトして持参すれば良いようです。
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