『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』 あべのハルカス美術館

あべのハルカス美術館
『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』
2023/4/22〜6/18


『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』展示風景

幕末から明治初期にかけて現在の高知県で活動した絵師、金蔵は、数多くの芝居絵屏風などを残し、「絵金さん」の愛称で地元の人々に親しまれてきました。

その絵金の高知県外では半世紀ぶりとなる展覧会が『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』で、会場では屏風絵や絵馬提灯など約100点の作品が公開されていました。

まず冒頭に並ぶのが絵金の代表作といえる芝居絵屏風で、いずれも絵金が30代にして野に下って以降、町絵師として描いたものでした。

いずれの芝居絵屏風もほぼ二曲一隻のかたちをしていて、歌舞伎の一場面などを極めて劇的な構図とビビッドな色彩によって表していました。

またこの他にも『力士図』や『常盤御前図』といった掛け軸の小品をはじめ、四季の風物を軽妙な筆致で描いた『土佐年中風俗絵巻』なども展示されていて、いわゆる血みどろや劇画的だけでない絵金の多様な作風を見ることができました。


第2章『高知の夏祭り』展示風景。手前は左から『船弁慶』、『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』。ともに高知市朝倉 倉・前田町内会。

高知の夏祭りをイメージした展示が殊更に魅力的だったかもしれません。ここでは高知市朝倉の朝倉神社の山門型の絵馬台をはじめ、香美市土佐山田町の八王子宮に伝わる「手長足長絵馬台」を設置し、絵金の芝居絵屏風を並べていて、まるで同地の「絵金祭り」に出かけているような気分を味わうことができました。


第2章『高知の夏祭り』展示風景

この芝居絵屏風は江戸末期頃には夏祭りに飾られたとされていて、今でも高知県内の約10箇所の神社にて昔ながらに屏風を絵馬台に飾る風習が残されました。


左から『敵討優曇華亀山 赤堀屋敷』、『蝶花形名歌島台 小坂部館』。ともに芳原下西組。

また夏祭りにて提灯や蝋燭の灯りで浮かび上がらせている芝居絵屏風を、炎のゆらめく蝋燭をイメージした照明によって追体験できるような工夫も面白いのではないでしょうか。

「友竹」の隠し落款を探しながら芝居絵屏風を見るのも楽しいかもしれません。その類まれなる個性に改めて感じ入るものがありました。



会期中に展示替えが行われます。

『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』目録(PDF)
前期:4月22日(土)〜5月21日(日)
後期:5月23日(火)〜6月18日(日)

前期の会期は明日21日までです。その後、芝居絵屏風を中心に入れ替えがあり、23日より後期がスタートします。


絵馬提灯『釡淵双級巴(かまがふちふたつどもえ)』展示風景。創造広場「アクトランド」

第2章「高知の夏祭り」の展示スペースは撮影が可能でした。


幕末の土佐が生んだ天才絵師、絵金。その恐るべき魅力に酔いしれる。『幕末土佐の天才絵師 絵金』が開催中|Pen Online

6月18日まで開催されています。おすすめします。

『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』@ekinten_osaka) あべのハルカス美術館@harukas_museum
会期:2023年4月22日(土)〜6月18日(日)
 *前期:4月22日(土)〜5月21日(日)、後期:5月23日(火)〜6月18日(日)
時間:10:00~20:00(火〜金)、10:00〜18:00(月、土、日、祝)
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:4月24日(月)、5月8日(月)、5月22日(月)
料金:一般1600円、大学・高校生1200円、中学・小学生500円。
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
交通:近鉄線大阪阿部野橋駅西改札、およびJR線天王寺駅中央改札より徒歩3分。地下鉄御堂筋線天王寺駅西改札より徒歩2分。*それぞれシャトルエレベーターまでの所要時間。
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『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』 広島市現代美術館

広島市現代美術館
『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』
2023/3/18~6/18



2020年12月からの改修工事を終え、今年3月にリニューアルオープンを果たした広島市現代美術館にて、『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』が開かれています。


多目的スペース「モカモカ」

これはリニューアルに際していくつもの箇所が生まれ変わったように、なにかが切っ掛けになって生じるさまざまな「まえ」と「あと」の現象や状況に着目し、国内外の現代美術を紹介するもので、広島県にゆかりのある和田礼治郎や石内都をはじめ、オノ・ヨーコやシリン・ネシャットといった45組のアーティストによる新作を含めた約100点が公開されていました。


展示室A-1 会場風景

まず冒頭で展開するのは、改修工事の図面や記録写真をはじめ、役目を終えた照明器具といったかつての美術館の備品で、中には古いエレベーターの部品などが並んでいました。


展示室A-1 会場風景

また休館中にSNS投稿された「#ゲンビの工事日記」の写真も細かく紹介されていて、工事中の進行の様子や作業内容、また働く人々のすがたなどを見ることができました。


高橋銑 作品展示風景

続く現代美術では田中功起のインスタレーションや平田尚也の彫刻などが展示されていて、地下の展示室では若林奮や竹村京をはじめ、コウミユキや高橋銑といったアーティストの作品が並んでいました。


コウミユキ『Stand Up!』シリーズより 2023年

このうち動物をモチーフとした彫刻を手がけるコウミユキは、すでに人の手に渡ったものや壊れてしまった犬の置き物などで作った『Stand Up!』シリーズを展示していて、犬と思しきすがたを見せながらも、さまざまな動物が融合したようなユニークなかたちを生み出していました。


竹村京『修復』シリーズより 2022年

竹村京の『修復』シリーズも目を引いたかもしれません。ここでは美術館にて使われて役目を果たした電球や学芸員の私物などを蛍光シルクの布で包んでいて、ブルーライトによって淡い光を放っていました。

今回の展示のハイライトを飾るのは、2005年に第6回ヒロシマ賞を受賞し、16年ぶりの新規購入作品となったイラン生まれのアーティスト、シリン・ネシャットの『Land of Dreams』でした。

これはアメリカ、ニューメキシコ州の地元住民を被写体とした26点の肖像写真と、若いイラン人の美術学生を主人公としたふたつの映像にて構成されていて、映像では広島の被爆者の言葉を引用しつつ、アメリカの差別や偏見、貧困の問題や核政策の不条理の危険性などを住民の夢を通して描いていました。


和田礼治郎『FORBIDDEN FRUIT』 2022年

中庭を舞台とした和田礼治郎の『FORBIDDEN FRUIT』も魅惑的だったかもしれません。葡萄の木などが植えられた空間へフルーツが投げ入れられて、あたりにはほのかに甘い匂いが漂っていました。


石内都『The Drowned』シリーズより 2020年〜

このほか、横山奈美や石内都、毒山凡太朗の作品なども見どころではないでしょうか。また細かな章立てを行わず、劣化、変質、修復、原子力、爆発、夢、治癒といったキーワードを「#(ハッシュタグ)」として提示し、展示のテーマを伝えているのもユニークに思えました。


毒山凡太朗『Let There Be Light』 2023年 『Long Way Home』 2022年

全館スペースの展示ゆえか質量ともにかなり見応えがありました。時間に余裕を持って出かけられることをおすすめします。


この春、リニューアルオープン!広島市現代美術館の特別展『Before/After』が見逃せない|Pen Online

一部の展示作品の撮影も可能です。



6月18日まで開催されています。

『リニューアルオープン記念特別展 Before/After』 広島市現代美術館@HiroshimaMOCA
会期:2023年3月18日(土)~6月18日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~17:00
 *入場は閉館の30分前まで
料金:無料。
住所:広島市南区比治山公園1-1
交通:広電(市内路面電車)比治山下駅より徒歩10分。広島駅及び紙屋町より広電・広島バスにて段原中央下車。動く歩道「比治山スカイウォーク」経由にて約700m。
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『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』 Vol.5 嶋臺(しまだい)ギャラリー・ASPHODEL・両足院

京都市中心部・二条城・両足院・光明院
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』
2023/4/15~5/14



Vol.4 世界倉庫・藤井大丸ブラックストレージ・Sferaより続きます。



朝、ホテルをチェックアウトし、まず向かったのは『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』の開催エリアではない嵐山でした。というのも、この日は写真祭だけでなく、福田美術館と嵯峨嵐山文華館にて開かれている『橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU』の鑑賞を予定していたからでした。

よって先に関雪展を見終えた上にて、昨日、クローズしていたために見ることができなかった嶋臺(しまだい)ギャラリーと両足院へ行くことにしました。



嵐山にて関雪展を見て、嶋臺ギャラリーの位置する烏丸御池に着くと、ちょうど昼の12時前になっていました。嶋臺ギャラリーとは17世紀に生糸商として創業した老舗に所縁のある場所で、幕末に焼失したのちに、明治になって再建された建物をギャラリーとして用いたものでした。



ここではスイス人フォトグラファー、ロジャー・エーベルハルトが、最新作シリーズ『Escapism』(エスカピズム/現実逃避)と題する展示を行っていて、スイスのコーヒーフレッシュの蓋に印刷された風景写真に着想を得た作品を公開していました。



エーベルハルトは、小さな蓋に印刷された風景写真を、さらに高解像度のカメラを用いて撮影していて、クローズアップされたイメージを大きく引き伸ばしてプリントすることで、もともとのクリーム容器の蓋の写真へ新たな世界を作り上げていました。



明るい光の差し込む広間と暗い土蔵の壁を残す2つの空間とのコントラストも面白かったかもしれません。クリーム容器の蓋という身近でありながらも意外な素材より引き出された、驚くほどに色彩鮮やかで多様なイメージに見入りました。



このあとは建仁寺塔頭の両足院を目指すべく祇園へと向かいましたが、その途中にて昨日、両足院にも近いASPHODELでのココ・カピタンの展示を見逃していたことに気づいたため、先にASPHODELへと行くことにしました。



京都の10代の若者のポートレートを制作したカピタンは、大西清右衞門美術館、光明院、ASPHODELの3会場にて展示を行っていましたが、その中ではASPHODELの会場が質量ともに最も充実していたかもしれません。



禅僧を目指す学生から舞妓、または制服姿の高校生など、京都に生きる若者たちの多様なすがたを見ることができました。



枯山水庭園や池泉回遊式庭園などを有する両足院にて展示を行っていたのは、コートジボワールを拠点に活動するビジュアルアーティストで写真家のジョアナ・シュマリでした。



シュマリは日課とする朝の散歩の際、風景を写真に撮ることを習慣としていて、その写真へコラージュや刺繍、ペインティングやフォトモンタージュといった技法を組み合わせつつ、何枚もの薄い布のレイヤーを重ねて作品を制作しました。



淡いパステルカラーに彩られたシュマリの作品は、日常の光景でありながらも、詩的でかつ幻想的な雰囲気もたたえていて、細部のコラージュといった手業の感触も魅力に感じました。



時間やスケジュールの都合で出町桝形商店街の会場には行くことができませんでしたが、結局2日間にて『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』のほぼすべての展示を見ることができました。



京都ならではの歴史的建造物やモダンな近現代建築を会場としつつ、国内外の写真家らが現代的なテーマを扱った作品を公開していて、会場の趣きはもちろん、作品そのものも想像以上に見応えがありました。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』は5月14日まで開催されています。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』@kyotographie_) 京都市中心部・二条城・両足院・光明院
会期:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
休館:各会場により異なる。
時間:10:00~19:00 
 *「インフォメーション町家」の開館時間。各会場により異なる。
料金:Eパスポート、紙パスポートチケット6000円(学生3000円)、平日限定パスポート4500円。
 *単館チケット(一般1200円~800円、学生1000円~600円)を販売。
 *無料展示あり。
住所:京都市中京区三条町340
交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅6番出口から徒歩5分。
 *住所、交通は「インフォメーション町家」(八竹庵 旧川崎家住宅)
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『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』 Vol.4 世界倉庫・藤井大丸ブラックストレージ・Sfera

京都市中心部・二条城・両足院・光明院
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』
2023/4/15~5/14



Vol.3 二条城・東福寺塔頂光明院より続きます。

ホテルにてチェックインを済ませると16時半をまわっていましたが、『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』の市中心部の会場は19時まで開いているところが多いため、もう少し展示を見て歩くことにしました。



まず向かったのは富小路高辻の少し北に位置する世界倉庫で、ジャマイカ系イギリス人の写真家デニス・モリスが写真とインスタレーションからなる展示を行っていました。



デニス・モリスは少年の頃、1960年代当時のイギリス政府の移住政策のもと、「より良い暮らし」を送るべく母親とともにジャマイカからロンドンへとやってきて、牧師を通じて写真に出会いました。



そして身近な人々や地域社会のようすをカメラで記録しはじめると、ジャマイカ人ミュージシャンのボブ・マーリーの後押しなどもあり、写真家として音楽業界でキャリアを切り開いていきました。



会場ではカリブ系移民の人々の暮らしなどを写した写真が並んでいて、当時の部屋を再現した空間などを通して、1960年代から70年代のイーストロンドンのカリブ系移民たちの生活をたどることができました。



なお世界倉庫とは木屋町のクラブ「WORLD KYOTO」が手がけたコミュニティスペースで、1階にカフェも入居していました。町家の右手より入り、中庭のような空間を抜けて進む構造そのものも楽しいかもしれません。



この世界倉庫の少し北の藤井大丸ブラックストレージでは、ウクライナ生まれのアーティスト、ボリス・ミハイロフが『Yesterday's Sandwich(昨日のサンドイッチ)』と題したスライドショーを公開していました。



『Yesterday's Sandwich』は、ミハイロフがキャリアをスタートさせた1960年代末から1970年代にかけて制作された作品で、当時の体制において発表できなかった写真のスライドが偶然ミスで重なったことをきっかけに生まれました。



そこには都市の風景や軍事パレード、さらに女性のヌードなどが重なり合いながら写されていて、音楽とともに詩的とも幻想的ともいえる光景が作り出されていました。



今回の『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』で最も面白く感じた作品だったかもしれません。約15分から20分弱ほど続く魔術のように展開するイメージの乱舞に見入りました。



四条大橋を渡って祇園に位置するライフスタイルブランド「Sfera」にて展示を手がけているのは、ジャーナリストで写真家として活動し、移民や人権などをテーマに作品で知られるセザール・デズフリでした。



デズフリは2016年の夏、ドイツのNGO団体の所有する難民救助船に3週間にわたって乗船し、リビアからイタリアへ渡航しようとする難民たちを助け出すようすを記録していて、救出された118名の難民のポートレートを撮影しました。



さらにデズフリは難民たちが旅の途中で何が起き、イタリア到着後にどのような人生を送っているのかをリサーチしていて、さまざまな難民たちの証言から移住先にて直面する問題点などを露わにしていました。



地中海を渡る難民たちドキュメントといえる展示だったかもしれません。救助船上とその後に撮影された同じ人物のポートレートにも目が留まりました。



このあとはSfera近くの居酒屋にてお酒をいただき、明日に備えるべく、ほろ酔い気分にてホテルへと戻りました。


ラストのVol.5 嶋臺(しまだい)ギャラリー・ASPHODEL・両足院へと続きます。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』@kyotographie_) 京都市中心部・二条城・両足院・光明院
会期:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
休館:各会場により異なる。
時間:10:00~19:00 
 *「インフォメーション町家」の開館時間。各会場により異なる。
料金:Eパスポート、紙パスポートチケット6000円(学生3000円)、平日限定パスポート4500円。
 *単館チケット(一般1200円~800円、学生1000円~600円)を販売。
 *無料展示あり。
住所:京都市中京区三条町340
交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅6番出口から徒歩5分。
 *住所、交通は「インフォメーション町家」(八竹庵 旧川崎家住宅)
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『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』 Vol.3 二条城・東福寺塔頂光明院

京都市中心部・二条城・両足院・光明院
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』
2023/4/15~5/14



Vol.2 八竹庵(旧川崎家住宅)・HOSOO GALLERY・京都文化博物館別館から続きます。

四条烏丸から御池界隈の展示を一通り見終えたのちは、『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』の会場で最も西に位置する二条城へと行くことにしました。



二条城では高木由利子が「PARALLEL WORLD」と題する展示を行っていて、会場は城内の二の丸御殿の台所・御清所でした。



ここで高木は日常的に民族衣装を着ている12カ国の人々を撮影した『Threads of Beauty』と、DIORのための撮り下ろしや、ポール・スミスやイッセイ・ミヤケといった80年代から現代までのファッションを撮影した2つのシリーズを展開していました。



ともかく目を引くのは『Threads of Beauty』で、天井から吊るされた特大サイズのデジタルプリントへ、さまざまな民族衣装を着た人々がモノクロームに写し出されていました。



さらに進むとファッションのシリーズなどが並んでいて、窓から屋外を眺めると二の丸御殿の建物を背景に『Threads of Beauty』の作品が何点か展示されていました。



また高木自身がプリントに着色したものや、印画紙や和紙、さらに漆喰といった異なる素材にプリントされた作品の質感も魅惑的かもしれません。



台所から御清所へ続く展示空間はかなり広く、作品も想像以上に多く並んでいて、見応えに不足はありませんでした。



一つの会場の展示としては『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』で最もスケール感があったのではないでしょうか。そもそも私自身、これほどまとめて高木の作品を見たことのは初めてでした。



修学旅行生や国内外からの観光客で賑わう二条城を出ると、今度は『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』にて最も南西部にある東福寺塔頭の光明院へと向かいました。



二条城前駅より地下鉄東西線に乗車し、三条京阪駅にて京阪線に乗り換えて南下、光明院の最寄駅である鳥羽街道駅に着くと15時前になっていました。



光明院とは14世紀に東福寺の塔頭として創建された寺院で、作庭家の重森三玲が手がけた枯山水庭園などが広がり、「虹の苔寺」として知られてきました。

ここで展示を行うのはスペイン出身で、ロンドンなどを拠点にして写真や絵画、散文などと幅広く活動するココ・カピタンでした。



昨年カピタンは『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』のレジデンスプログラムで2ヶ月間ほど京都に滞在していて、主に10代の若者たちを被写体としたポートレートを制作しました。なおカピタンは大西清右衞門美術館とここ光明院、さらにASPHODELの3箇所にて作品を公開していました。



光明院では主に禅僧を目指す学生たちの作品が並んでいて、修行のようすと思しき光景を捉えた映像も目を引きました。



また重森の庭を望む空間と作品のコントラストも面白かったかもしれません。すでに夕方近くになっていたのか人もまばらだったため、少し疲れた足を休めながらしばし滞在しました。



帰りは東福寺駅へと歩き、青もみじに彩られた通天橋など見ながら、JR線にて京都駅を経由して市の中心部へと戻りました。



そして屋外の伊藤佑町家跡地にて、スペイン人アーティスト、インマ・バレッロの陶磁器のインスタレーションを鑑賞したのちは、一度チェックインをするべく宿泊先の五条烏丸のホテルへと向かいました。



Vol.4 世界倉庫・藤井大丸ブラックストレージ・Sferaへと続きます。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』@kyotographie_) 京都市中心部・二条城・両足院・光明院
会期:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
休館:各会場により異なる。
時間:10:00~19:00 
 *「インフォメーション町家」の開館時間。各会場により異なる。
料金:Eパスポート、紙パスポートチケット6000円(学生3000円)、平日限定パスポート4500円。
 *単館チケット(一般1200円~800円、学生1000円~600円)を販売。
 *無料展示あり。
住所:京都市中京区三条町340
交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅6番出口から徒歩5分。
 *住所、交通は「インフォメーション町家」(八竹庵 旧川崎家住宅)
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『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』 Vol.2 八竹庵(旧川崎家住宅)・HOSOO GALLERY・京都文化博物館別館

京都市中心部・二条城・両足院・光明院
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』
2023/4/15~5/14



Vol.1 京都芸術センター・くろちく万蔵ビル・誉田屋源兵衛より続きます。



誉田屋源兵衛から西へ歩いてすぐの場所にあるのが「インフォメーション町家」のある八竹庵(旧川崎家住宅)会場で、『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』のチケットやグッズの販売とともに松村和彦の展示が開かれていました。



写真記者でもある松村は、認知症の本人や家族、周囲の人々に取材した作品を公開していて、作品をたどっていくと認知症の症状や世界を追体験できるような構成となっていました。



また糸が和室と洋室の空間、さらに作品同士をつなげていくような手法も興味深かったかもしれません。



なお「インフォメーション町家」では『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』の過去の展示のダイジェスト映像やカタログなどが閲覧できるほか、今年から新たにスタートするKYOTOGRAPHIEの姉妹フェスティバル『KYOTOPHONIE』の関連展示も行われていました。



それに展覧会の内容や情報、イベントを紹介するコンシェルジュも設置されているため、ここを起点に『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』を巡るのも良いかもしれません。



最寄りの大西清右衞門美術館でココ・カピタンの作品を見終えたのちは、烏丸御池へと歩き、続く会場のHOSOO GALLERYへと向かいました。



元禄年間に遡る西陣織の老舗、「細尾」のフラッグシップストアの2階にあるギャラリーでは、山田学がフランスのシャンパーニュ地方にて滞在制作したインスタレーションが展示していて、シャンパーニュの泡のイメージから生命の誕生を連想させる鮮やかな映像を見ることができました。



HOSOO GALLERYから烏丸通を渡り、次に向かったのは京都文化博物館で、ここでは別館のスペースにてキューバ出身のアーティスト、マベル・ポブレットが展示を行っていました。



これは海をモチーフにしつつ、キューバの社会や移民へとオマージュした大掛かりなインスタレーションで、今年の3月から4月にかけて東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて開かれた展示を再構成したものでした。



私も銀座で一度見ましたが、スタイリッシュに展開していたシャネルとは異なり、歴史ある重要文化財の別館の借景を効果的に用いていて、また新たな魅力を感じるものがありました。



また建物2階より見下ろすことの出来る空間や、銀座では小さなモニターだったポブレットのインタビュー映像が、より大きな画面で見られたのも嬉しかったかもしれません。作品の数も多く見応えがありました。 


Vol.3 二条城・東福寺塔頂光明院へと続きます。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』@kyotographie_) 京都市中心部・二条城・両足院・光明院
会期:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
休館:各会場により異なる。
時間:10:00~19:00 
 *「インフォメーション町家」の開館時間。各会場により異なる。
料金:Eパスポート、紙パスポートチケット6000円(学生3000円)、平日限定パスポート4500円。
 *単館チケット(一般1200円~800円、学生1000円~600円)を販売。
 *無料展示あり。
住所:京都市中京区三条町340
交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅6番出口から徒歩5分。
 *住所、交通は「インフォメーション町家」(八竹庵 旧川崎家住宅)
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『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』 Vol.1 京都芸術センター・くろちく万蔵ビル・誉田屋源兵衛

京都市中心部・二条城・両足院・光明院
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』
2023/4/15〜5/14



京都市中心部、および二条城、また両足院など各会場にて、『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』が開かれています。

朝7時半過ぎに東京駅を発ち、新幹線で京都に着いたのは10時少し前のことでした。『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』は、京都市中心部、特に四条烏丸から烏丸御池一帯と祇園、また二条城と両足院、それに東福寺塔頂の光明院など15の施設にて展示が行われています。

この日は木曜日の平日だったため2つの展示がクローズしていましたが、元々、2日間にかけて巡る予定をしていたので、まずは展示施設の集中する四条烏丸一帯を目指すことにしました。



はじめに辿り着いたのは、1993年に閉校した明倫小学校の建物を用い、2000年に京都市における芸術の総合的な振興を目指して開設された京都芸術センターでした。



芸術センター内の前田珈琲にて少し早めのランチをとったのちは、会場にて開かれていた『世界報道写真展レジリエンス ── 変化を呼び覚ます女性たちの物語』を鑑賞しました。



ここでは女性の権利やジェンダーの平等を扱った13カ国、17名の写真家の記録がパネルなどで公開されていて、女性を取り巻くさまざまな課題が写真とテキストともに浮かび上がるようすを目の当たりにできました。



この芸術センターのすぐ近くのくろちく万蔵ビル2Fでは、写真家のパオロ・ウッズとジャーナリストのアルノー・ロベールによる『Happy Pills』が開かれていて、世界各地にて薬を使用する人々を撮った写真がドキュメンタリーとして展示されていました。



避妊やドーピング、またエイズの予防など、さまざまな目的のために薬が使われていて、とりわけ膵臓がんのために自ら安楽死を選択し、致死量の薬を摂取して亡くなったフランスのジャーナリストのエピソードが強く印象に残りました。



また使用期限の切れた薬や偽造品などが露天商によって販売されているハイチの状況も紹介されていて、世界における薬の取り巻く根深い諸問題を知ることができました。



この四条烏丸から五条界隈で特に充実していたのが、誉田屋源兵衛の竹院の間と黒蔵を用いた、石内都と頭山ゆう紀、それに山内悠の3名の展示でした。



まず竹林の間では石内と頭山が「身近な女性の死」を共通のテーマとした展示を行っていて、石内の亡き母に向き合った『Mother’s』のシリーズや、頭山がコロナ禍に亡くした祖母の介護中に撮影した写真などを見ることができました。



作品は太い梁や木組の意匠が目立つ部屋に連なるように並んでいて、大正時代には大店町家だった坪庭のある古い空間ともよく映えて見えました。



一方での黒蔵では、山内悠が屋久島の巨木を捉えた写真を公開していて、迫力のある樹木の質感のみならず、島の大自然に対峙した山内の感覚や目線も伝わるかのようでした。



この古い蔵を改装した黒蔵とは、黒漆喰の空間と八角系のドームを特徴としていて、下から上へと縦に高低差のある空間そのものも魅力的に感じられました。



Vol.2 八竹庵(旧川崎家住宅)・HOSOO GALLERY・京都文化博物館別館へと続きます。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023』@kyotographie_) 京都市中心部・二条城・両足院・光明院
会期:2023年4月15日(土)〜5月14日(日)
休館:各会場により異なる。
時間:10:00~19:00 
 *「インフォメーション町家」の開館時間。各会場により異なる。
料金:Eパスポート、紙パスポートチケット6000円(学生3000円)、平日限定パスポート4500円。
 *単館チケット(一般1200円〜800円、学生1000円〜600円)を販売。価格は会場ごとに異なる。
 *無料展示あり。
住所:京都市中京区三条町340
交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅6番出口から徒歩5分。
 *ともに「インフォメーション町家」(八竹庵 旧川崎家住宅)の住所と交通。
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『戸谷成雄 彫刻』 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
『戸谷成雄 彫刻』
2023/2/25~5/14



1947年生まれの彫刻家、戸谷成雄の個展が、埼玉県立近代美術館にて開かれています。


『森 ⅠⅩ』 2008年 ベルナール・ビュフェ美術館

それが『戸谷成雄 彫刻』で、会場には卒業制作の人体彫刻から代表作「森」シリーズなど、約40点の作品が展示されていました。

まず冒頭にて目を引くのが、大学卒業後に初公開となる2体の人体彫刻、『男I 斜面の男』と『器III』で、いずれも愛知県立芸術大学の卒業制作展に出された作品でした。


『器Ⅲ』 1973年 愛知県立芸術大学

そのうち『器III』とは、当時のベトナム反戦運動や大学闘争の状況の中、何もすることができない自分自身を内省的に表現したとされる自刻の彫像で、口を閉じ、両耳を手で塞ぐすがたを象っていました。


手前:『横たわる男』 1971年 奥:『POMPEII‥79 Part1』 1974/1987年

これに続くのが同じく木彫の『横たわる男』で、ひとりの男が目を大きく見開いては横たわるすがたを表していました。その痩せ細った身体や、鬼気迫るような顔の表情は死体をモデルとしていて、畏怖の念を感じるものがありました。


『地下の部屋』 1984年

代表作「森」や「地霊」シリーズへ至る1970年代末から1980年代前半までの戸谷は、いわば模索期として多様な作品を手がけていて、そのうち作品の一部を燃やしたパフォーマンスに由来する『地下の部屋』が、実に約40年ぶりに公開されました。


手前:『床から』 1979/1987年

こうした『地下の部屋』や『床から』などは石膏から作られていて、のちの『森』シリーズなどとはまた異なった作風を見せていました。


『森 - I』  1984年

『森 - I』とは、『森』シリーズの中で最も早く作られた作品で、素材の木の表面はチェーンソーで荒々しく削り込まれていました。


『「境界」から Ⅲ』 1995-1996年

1990年代半ばから後半にかけて集中的に制作された『境界から』シリーズのうち、『「境界」から Ⅲ』も目立っていたかもしれません。


『「境界」から Ⅲ』 1995-1996年

これは山津波に襲われた日本家屋をイメージしつつ、先史時代に甕や壺を棺として用い、主に幼児の墓だった「甕棺墓」を参照して作られたもので、正面の開口部よりチェーンソーで刻まれた内部空間を覗き込むこともできました。


『洞穴体Ⅲ』 2010年

秩父地方の地図の上へ、山並みや水の流れなどを意識して表現した『洞穴体Ⅲ』も見応えがあったかもしれません。


『洞穴体Ⅲ』 2010年

いずれも裏面には地表の音を耳を当てて聞くという、戸谷自身の身体が有機的な塊として象られていました。


『洞穴体Ⅴ』 2011年

舟越保武の『ダミアン神父像』やジャコモ・マンズーの『枢機卿』などの並ぶ地下のセンターホールにも、戸谷の『洞穴体Ⅴ』が展示されていました。


『湿地帯』 1985年 埼玉県立近代美術館

MOMASコレクションの『湿地帯』とあわせてお見逃しなきようにご注意ください。


手前:『視線体一連』 2020年

知られざる初期作から代表的な『森』シリーズ、そして近年の『視線体』シリーズなどを通し、戸谷の制作を時間を追ってたどる内容といえるかもしれません。また美術館の空間と作品とがうまく響いているようにも思えました。


撮影も可能でした。5月14日まで開催されています。

『戸谷成雄 彫刻』 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:2023年2月25日(土) ~5月14日(日)
休館:月曜日。ただし5月1日は開館。
時間:10:00~17:30 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大高生960(770)円、中学生以下は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *MOMASコレクション(常設展)も観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展』 弥生美術館

弥生美術館
『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展』 
2023/4/1~6/25



今年没後10年を迎えたイラストレーターの森本美由紀の個展が、東京・文京区の弥生美術館にて開かれています。

それが『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展』で、画学生時代の取り組みから1980年代の雑誌の仕事、さらに1990年代の渋谷系サウンドとの競演などが作品と資料にて紹介されていました。



まず目を引くのが森本のイラストレーションの真骨頂ともいえる筆と墨によるドローイングで、筆の掠れや強弱をつけた輪郭線などによって、ファッショナブルな女性らを生き生きとしたすがたにて描いていました。



1959年に岡山県にて生まれた森本は、上京してセツ・モードセミナーに入学すると、日本のファッション・イラストレーターの先駆者である長沢節の元に学び、在学中にフリーランスのイラストレーターとしてデビューしました。



そして1980年代に『Olive』や『an・an』といった雑誌にイラストを描いて人気を博すと、1990年代にスタイルを変え、いわゆる筆と墨を使ったドローイングのスタイルを完成させました。



こうした一連のドローイングやモデル・クロッキー、また松屋銀座のためのポスターやCDジャケット、それにジェニー人形とのコラボなどど幅広い作品が展示されていて、森本のマルチな才能と仕事の軌跡を追うことができました。



2000年代に描かれた墨とカラーによるアートワークも魅惑的ではないでしょうか。シンプルながらも即興的でかつ躍動感のある線によるイラストに見惚れました。



「描きたい世界を無駄のないシンプルな線で表現するスタイルを追求しながら、さらにリファインされた普遍的な絵を目指してきました。」 *「森本美由紀 ファッションイラストレーションの描き方」より。会場内パネルから引用。



会期中、カラー作品の展示替えが行われます。



『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展』
前期:4月1日~5月14日  後期:5月16日~6月25日


会場内の撮影も可能でした。6月25日まで開催されています。*写真はすべて『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展』展示作品。

『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展』 弥生美術館@yayoi_yumeji
会期:2023年4月1日(土)~6月25日(日)
休館:月曜日。ただし5月1日(月・祝)は開館。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般1000円、高校・大学生900円、小学・中学生500円。
 *竹久夢二美術館も観覧可。
住所:文京区弥生2-4-3
交通:東京メトロ千代田線根津駅1番出口、または東京メトロ南北線東大前駅1番出口より徒歩7分。
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『OKETA COLLECTION: TIME MIXED』 スパイラル

スパイラル
『OKETA COLLECTION: TIME MIXED』
2023/4/8〜4/23



2000年代から桶⽥俊⼆・聖⼦夫妻が収集したコレクションが、東京・南青山のスパイラルにて公開されています。

それが『OKETA COLLECTION: TIME MIXED』で、会場には室町時代の骨董品から現代アート、さらには気鋭のデジタルアート作品など50点が展示されていました。



ファッションビジネスに携わってきた桶田夫妻が最初に収集したのは骨董品で、その後、草間彌生の作品との出会いをきっかけに、2010年頃から現代アートの本格的な収集をはじめました。



そして2019年よりコレクションを広く紹介するべく展覧会を開いていて、今年で一般に公開してから5年目の節目を迎えました。



今回の特徴は時代を超えた作品が公開されていることで、「李朝白磁壺」をはじめとする近代骨董作品や盆栽、さらには2018年頃から現在までに注目のアーティストの作品がないまぜになるようにして並んでいました。



7月から鳥取の米子市美術館、そして9月より京都市京セラ美術館にて個展が開かれる井田幸昌の作品なども注目したいところかもしれません。



近未来的な都市風景をデジタルアートで表現した作品を背景に、骨董から盆栽、さらに現代アートなどを並べた吹き抜けの空間の展示も見応えがありました。



入場は無料です。撮影もできました。*写真はすべて『OKETA COLLECTION: TIME MIXED』展示作品


4月23日まで開催されています。

『OKETA COLLECTION: TIME MIXED』 スパイラル@SPIRAL_jp
会期:2023年4月8日(土)〜4月23日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
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『大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101』 泉屋博古館東京

泉屋博古館東京
『特別展 大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101』 
2023/3/18~5/21



東洋陶磁の名品を数多く所蔵する大阪市立東洋陶磁美術館のコレクションが、東京・六本木の泉屋博古館東京へとやってきました。


『法花 花鳥文 壺』 明時代・15世紀

それが『大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101』で、会場には国宝2点、重文11点を含む101点の中国と朝鮮の陶磁が並んでいました。


『青花 枇杷鳥文 盤』 明時代・永楽(1403〜1424)

まず目を引くのは「珠玉の名品」と題し、中国・北宋時代の白磁や明時代の盤、はたまた朝鮮・高麗時代の青磁などで、中でもともに明時代の『青花 枇杷鳥文 盤』や『法花 花鳥文 壺』といった色彩や文様の鮮やかな作品に惹かれました。


『青磁 水仙盆』 北宋時代・11世紀末〜12世紀初

安宅産業株式会社の会長であった安宅英一が、会社の事業の一環として陶磁器の収集をはじめたのは1951年のことで、以来4半世紀をかけて961点もの膨大なコレクションが築き上げました。

安宅が美術品の収集に際し、最も重要視していたのが古美術商との関係で、「壺中居』の創業者であり、日本を代表する古美術商だった廣田松繁からは、『白磁刻花 蓮花文 洗』をはじめとするいわゆる「三種の神器」を入手しました。


『油滴天目 茶碗』 南宋時代・12〜13世紀

一連のコレクションは安宅産業の経営破綻に伴って散逸の危機を迎えるもの、大阪を本拠とする住友グループによって大阪市に寄贈され、大阪市立東洋陶磁美術館が建てられると、広く一般にも公開されて現在へと至りました。


『青花 宝相華唐草文 盤』 元時代・14世紀

大阪市立東洋陶磁美術館は、現在、2023年秋の再開館を目処に改修工事のため休館中で、その経緯もあって今回のコレクションの東京での展示も実現しました。


『鉄砂虎鷺文壺』 朝鮮時代・17世紀後半

安宅コレクションの形成プロセスを紹介する展示も面白いかもしれません。右も左も極上の東洋陶磁ばかりが並んでいて、まさに「名品選」とするのに相応しい展覧会でした。


『五彩 牡丹文 盤(「大明萬曆年製」銘)』 明時代・万暦(1573〜1620年)

会場内の撮影も可能でした。


5月21日まで開催されています。おすすめします。

『特別展 大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101』 泉屋博古館東京@SenOkuTokyo
会期:2023年3月18日(土)~5月21日(日)
休館:月曜日
時間:11:00~18:00
 *金曜日は19時まで開館
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般1200(1000)円、高校・大学生800(700)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。
住所:港区六本木1-5-1
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅北改札1-2出口より直通エスカレーターにて徒歩5分。
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『重要文化財の秘密』 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
『東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密』
2023/3/17〜5/14



東京国立近代美術館にて『東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密』が開かれています。

これは明治以降の絵画、彫刻、工芸の重要文化財68件のうち、51件を公開するもので、作品の魅力とともに、重要文化財に指定された経緯や評価の変遷などを紹介していました。


今村紫紅『熱国之巻(朝之巻)』 1914年 東京国立博物館

まず冒頭にて並ぶのは日本画の重要文化財で、明治以降の美術作品において最も早く重要文化財に指定された狩野芳崖の『不動明王図』をはじめ、制作されてから最も速く指定されたのは横山大観の『生々流転』を見ることができました。


横山大観『瀟湘八景』 1912年 東京国立博物館

今回の展覧会で面白いのは、一部に「ひみつ+α」と題し、作品の知られざる経緯などをキャプションにて説明していることで、例えば『生々流転』では関東大震災に見舞われた時のエピソードなどを紹介していました。


原田直次郎『騎龍観音』 1890年 護國寺(東京国立近代美術館寄託)

これに続くのが洋画で、高橋由一の『鮭』や藤島武二『天平の面影』、また青木繁『わだつみのいろこの宮』や萬鉄五郎『裸体美人』などが並んでいました。


左:藤島武二『天平の面影』 1902年 右:青木繁『わだつみのいろこの宮』 1907年 ともに石橋財団アーティゾン美術館

明治以降の絵画、彫刻、工芸の重要文化財の指定をたどると、最初に日本画によって指定がはじまり、明治100年記念の1968年頃に指定が集中していて、その後、洋画と彫刻の指定がスタートしました。


高村光雲『老猿』 1893年 東京国立博物館

しかし1982年にて一度指定が途切れると、1999年にようやく指定が再開し、2001年になって工芸がはじめて指定されました。


「重要文化財指定年順年表」

こうした一連の経緯は会場内の「重要文化財指定年順年表」でも示されていて、どのような順番にて作品が重要文化財に指定されたのかを知ることができました。

小出楢重の『Nの家族』(大原美術館)や山本芳翠の『裸婦』(岐阜県美術館)、それに荻原守衛の『北條虎吉像』(碌山美術館)といった、東京国立近代美術館以外の所蔵先の重要文化財も見応えがあったかもしれません。


朝倉文夫『墓守』 1910年 台東区立朝倉彫塑館

とりわけ墓守の男性を写実的に表しつつも、モデルの内省的な表情までが滲み出ているような朝倉文夫の『墓守』(朝倉彫塑館)の佇まいに心を引かれました。


安田靱彦『黄瀬川陣』 1940/1941年 東京国立近代美術館

『重要文化財の秘密』展の見どころは? | イロハニアート


会期中、日本画を中心に作品の入れ替えがあります。詳しくは出品目録をご参照ください。

『東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密』出品目録(PDF)


初代宮川香山『黄釉銹絵梅樹図大瓶』 1892年 東京国立博物館

一部作品を除いて撮影も可能でした。5月14日まで開催されています。

『東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密』@jubun_2023) 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2023年3月17日(金)~5月14日(日)
時間:9:30~17:00。
 *金・土曜は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。ただし3月27日、5月1日、8日は開館。
料金:一般1800(1600)円、大学生1200(1000)円、高校生700(500)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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『The Original』 21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHT
『The Original』
2023/3/3〜6/25



世の中に深く影響を与えるデザインを「The Original」と定義して紹介する展覧会が、21_21 DESIGN SIGHTにて開かれています。

この「The Original」を定義したのは、展覧会ディレクターの土田貴宏と企画原案の深澤直人、それに企画協力の田代かおるの3名で、会場にはそれぞれが議論を重ねて選んだ150点のプロダクトが展示されていました。



今回の展覧会でまず興味深いのは、19世紀から現在までの家具や食器、またテキスタイルや玩具などの幅広いジャンルのプロダクトが並んでいることで、まず冒頭では生活を営む上で重要な家に関するプロダクトの再現展示が行われていました。



これに続くのが19世紀から現代までの100点のプロダクトを並べた展示で、古くは1859年のオーストリアのウィーンで作られた曲木椅子から、2020年に発表された日本製の木の椅子までを時代ごとに分けて紹介していました。なお展示品は数点を除き、現在製造されている量産品で占められていました。



ここではシャルロット・ペリアンやヨーゼフ・ホフマン、インゴ・マウラーをはじめ、日本の剣持勇や吉岡徳仁などのプロダクトなどが並んでいて、いわば名作として評価された作品を楽しむことができました。


株式会社大塚製薬(プランニング)、細谷巌(パッケージデザイン)『カロリーメイト』 1983年 大塚製薬(日本)

そうした一方で、思いがけないほど身近ともいえるプロダクトも紹介されていて、食卓にてお馴染みのペッパーミルやカロリーメイトのパッケージなども展示されていました。


クララ・フォン・ツヴァイベルク『ペーパー ペーパー ビン』 2020年 ヘイ(デンマーク)

またクララ・フォン・ツヴァイベルクによる『ペーパー ペーパー ビン』と名付けられたゴミ箱も興味深いかもしれません。一見、プラスチックで作られているように思えながら、実はリサイクル紙でできていて、さらなる再生も可能とのことでした。スタイリッシュなデザインとともに実用性も兼ね備えつつ、環境にも配慮した、まさに「The Original」に相応しいプロダクトだったのではないでしょうか。


木村譲三郎『スーパーカブ』 1958年 ホンダ(日本)

何をもって「The Original」とするのは人それぞれかもしれませんが、お気に入りのプロダクトを探しながら見ていくのも面白いかもしれません。



『The Original』にお気に入りのデザインを探しに行こう!@21_21 DESIGN SIGHT | イロハニアート


6月25日まで開催されています。

『The Original』 21_21 DESIGN SIGHT@2121DESIGNSIGHT
会期:2023年3月3日(金)〜6月25日(日)
休館:火曜日(3月21日は開館)。
時間:10:00~19:00
 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1400円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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『第26回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』 川崎市岡本太郎美術館

川崎市岡本太郎美術館
『第26回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』
2023/2/18~4/16



川崎市岡本太郎美術館で開催中の『第26回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』を見てきました。

岡本太郎の精神を継承し、現代社会に鋭いメッセージを突きつける作家を顕彰する『岡本太郎現代芸術賞』(通称TARO賞)も、今年で第26回を数えるに至りました。


池田はなえ『森のハーモニー』

今回は595点の応募があり、専門家諸氏の審査の結果、23名(組)が入選を果たしました。なお例年、最高賞として授与されてきた岡本太郎賞と次点の岡本敏子賞は、17年ぶりに選ばれませんでした。


足立篤史『OHKA』

それに続く特別賞を受賞したのが、足立篤史、澤井昌平、関本幸治、レモコ-レイコの4名で、そのうちあだちは第二次世界大戦中に特攻専用として開発された航空機「桜花」をモチーフとした立体を展示していました。


足立篤史『OHKA』

ここでは桜花を昭和19〜20年当時の新聞紙によって実寸大に再現していて、端的なオブジェではなく当時の気球爆弾を意識したという空気で膨らませていました。


関本幸治『1980年のアイドルのノーバン始球式』

同じく特別賞の関本幸治の『1980年のアイドルのノーバン始球式』とは、3分の2スケールで造った架空の写真館と「小さな死」と題した写真からなるインスタレーションで、さまざまな写真や人形をアンティークな空間へと配置し、シュールでかつ幻想的な世界を生み出していました。


レモコ-レイコ『君の待つところへ』

レモコ-レイコの『君の待つところへ』も目立っていたかもしれません。黄色や赤を基調とした明るい色彩によって描かれたのは、動物たちと暮らしたアパートを出て旅に出るという物語で、のびやかで自由なタッチとともにコラージュ風の細部の表現にも引かれました。


空箱二郎『アドレナリン症候群』

このほか、アメリカのNBAの試合風景を革という意外な素材にて描いた空箱二郎の『アドレナリン症候群』や、少年ジャンプの古紙を立体曼荼羅に表現した西除闇の『MANgaDARA』なども面白い作品だったかもしれません。


西除闇『MANgaDARA』

いつもながらのTARO賞ならではのフレッシュでかつエネルギッシュな作品を楽しむことが出来ました。


恒例の来場者による「お気に入りを選ぼう」の投票イベントはすでに終了し、オーディエンス賞として西除闇の『MANgaDARA』が選ばれました。


なかざわたかひろ『愛の肖像画』

撮影も可能です。4月16日まで開催されています。

『第26回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』 川崎市岡本太郎美術館@taromuseum
会期:2023年2月18日(土)~4月16日(日)
休館:月曜日。2月24日、3月22日。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
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『特別展「恐竜博 2023」』 国立科学博物館

国立科学博物館
『特別展「恐竜博 2023」』
2023/3/14~6/18



国立科学博物館で開催中の『特別展「恐竜博 2023」』を見てきました。

鎧竜の進化を解明する大きな手かがりとなるズール・クルリヴァスタトルの実物化石が、カナダのロイヤルオンタリオ博物館より日本へ初めてやって来ました。


ズール・クルリヴァスタトル 頭骨

そのズールを中心にした装盾類の「守り」と、生態系の頂点に位置した肉食恐竜の「攻め」に焦点を当てて紹介するのが『特別展「恐竜博 2023」』で、会場ではズールの実物化石をはじめとする貴重な資料にて、恐竜の多様な進化のプロセスをたどっていました。


ズール・クルリヴァスタトル 展示風景

まずズール・クルリヴァスタトルとは後期白亜紀に生息したアンキロサウルス科の鎧竜で、身を守るためのトゲトゲした骨質のウロコのある装甲、または肉食恐竜の骨を破壊するような強力な棍棒を持つ尾を特徴としていました。


ズール・クルリヴァスタトル 展示風景

一般的に鎧竜は、皮膚の一部である皮骨に覆われているため、腐敗して体の化石の周りにバラバラになってしまうものの、ズールは多くの皮骨が生きている時のようにつながって発見されました。


ズール・クルリヴァスタトル 展示風景

また体骨格の皮骨の表面の一部には通常残らないケラチン質も保存され、尾には全体を包むような腱の束も残されるなど、おおよそ7600万年前の化石とは思えないほどに生々しいすがたを見せていました。


ズールVSゴルゴサウルス 全身復元骨格

恐竜における「守り」と「攻め」の関係を紹介するのがズールとゴルゴサウルスの全身復元骨格の展示で、ちょうどゴルゴサウルスがズールに噛みつき、一方でズールが尾の棍棒を振り回して反撃する光景を再現していました。


ティラノサウルスの全身骨格 展示風景

2体のティラノサウルスの全身骨格による展示も迫力があったかもしれません。そのうちのタイソンとは全身の59%に当たる177個もの実物化石が発見された全身組立骨格で、今回一般に向けては世界で初めて公開されました。


このほかには、2022年に新種と発表され、白亜紀最末期の南半球の肉食恐竜の頂点にいたマイプ・マクロソラックスの実物標本なども見どころかもしれません。


ヘスペロサウルス 展示風景

オンラインによる日時指定予約が導入されました。当日券での入場枠も若干数設けられていますが、入場枠が完売した際は入場できません。あらかじめチケットを用意して出かけることをおすすめします。

恐竜たちの戦いと絶滅の真相とは?見どころ満載の『特別展「恐竜博 2023」』|Pen Online

6月18日まで開催されています。

『特別展「恐竜博 2023」』@dinoexpo2023) 国立科学博物館@museum_kahaku
会期:2023年3月14日(火)~ 6月18日(日)
休館:月曜日(祝日の場合は翌火曜日休館)
 *3月27日、4月3日、5月1日、6月12日は開館。
時間:9:00~17:00。
 *土曜、4月30日(日)~5月7日(日)は19:00まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生2200円、小・中・高校生600円。
 *オンラインによる日時指定予約制
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
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