Podium

news commentary

続・笑うしかないこの二人

2020-05-27 16:05:08 | 政治

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、新型コロナウイルス封じに、いまでも抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンを飲んでいるのだろうか。新型ウイルス感染症・COVID-19への効果は未確認なうえ、心臓への悪影響など副作用がありうると警告されている薬である。

新型コロナウイルス退治に消毒薬を注射してみるのもいいんじゃないか、と記者団に言って、世界を驚愕させた人物だから、抗マラリア薬などお茶の子さいさいだろう。

かたや日本の安倍晋三首相。インフルエンザ治療薬のアビガンをCOVID-19の治療薬として使えるようにするための認可を5月末までに実現したいとしていた。国会の内外で「アビガン」「アビガン」を繰り返す固執ぶりだったが、厚生労働省の慎重論に阻まれて、5月中の認可をあきらめた、と報道された。

COVID-19による死者はアメリカが世界最多で5月27日現在98,875人。日本は862人で少なく見えるが、欧米中心の比較から離れて虚心坦懐にアジア太平洋地域をながめれば、日本の死者はこの地域で多い方から4番目になる。①中国6,434人②インドネシア1,418人③フィリピン886人④日本862人。ベトナムやカンボジアでは死者ゼロ、ニュージーランド2人、台湾は7人、タイ57人、オーストラリア102人、マレーシア115人、韓国269人。

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相、台湾の蔡英文総統、韓国のムン・ジュイン大統領は水際立ったCOVID-19対策を評価されて、支持率が上昇した。アーダーン首相の支持率は6割、蔡総統の支持率7割、ムン大統領の支持率7割。

海外メディアが絶妙のエイプリルフールと評したアベノマスクを、緊急事態宣言が終わった今なお全国の世帯に配布の途中(厚労省発表)の安倍首相の支持率は、いろいろあって、2割台に急落した。

(2020.5.27 花崎泰雄)

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笑うしかないこの二人

2020-04-26 01:32:40 | 政治

注射してはいけない、飲んではいけない。医者も公務員もメーカーも、アメリカ中が大騒ぎしている。民主党の大統領選候補予定者であるバイデン氏は「どうか漂白剤を飲まないで下さい」とツイッターに書き込み、ペロシ下院議長は「共和党員の科学拒否の表れ」と批判した。

もとはと言えば、皆様ご存じのアメリカはホワイトハウスの主の無知な発言から。ホワイトハウスのブリーフィングで、国土安全保障省の科学担当次官補代理が、ウイルスはアルコールや漂白剤に弱い可能性があると説明したのをうけて、アメリカ大統領であるトランプ氏が、消毒剤を人体に注入すればウイルスをやっつけることができるかもしれない、と発言した。

こ発言に全米、全世界が驚愕した。

翌日の記者会見でトランプ氏は、記者諸君に皮肉を込めて言った冗談であると、記者からの追及をかわそうとした。会見に立ち会っていた新型コロナウイルス感染症のホワイトハウス責任者であるペンス副大統領はすぐさま記者会見を打ち切った。

“You are fake news.” 以来、むしゃくしゃすると記者たちに八つ当たりするのがトランプ氏の流儀。それがトランプ支持層に受ける。トランプ氏も彼の支持層の多くも、デモクラシーとコモン・センスを守る番犬役がジャーナリズムの使命であるとする、一部のアメリカのメディアを嫌っている。インテリのスノバクラシーで、鼻持ちならないとして。

トランプ氏に親い日本の安倍首相も、この間、記者会見で質問に立った新聞記者を揶揄した。朝日新聞の記者が不評のアベノマスクについて質問したところ「御社のネットでも布マスクを3300円で販売しておられた。つまり需要も十分ある中で配布した」と、暗にマスク不足で暴利をむさぼっているかのような発言だった。よく言った。あのお高く気取った朝日新聞に強烈なパンチを送ったと、留飲を下げた人たちもいた。

そのあとメディアが、そのマスクが繊維製品の産地である泉佐野市と商工会議所が企画して、老舗の繊維会社が造った手作りの高性能マスクであると報じた。2枚一組の定価が3300であることも明らかにした。黙っていられなくなった泉佐野市長が首相官邸を訪れる事態に発展した。

首相に代わって応対した首相補佐官に、泉佐野市長がこのマスクを使ってみてくれと2組を渡した。補佐官は代価6600円を泉佐野市長に支払った。首相本人ではないが、補佐官が6600円を支払ったということは、それだけの値打ちがあると首相官邸が認めたということである。

ものにはピンとキリがある。酒もそうだし、マスクもそうだし、政治家もまた。

(2020.4.26  花崎泰雄)

 

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10万円

2020-04-20 23:59:48 | 政治

菅義偉官房長官が4月20日の記者会見で、国民1人当たり10万円の一律給付金について、自身が受け取るかどうかを問われ、「常識的には(申請は)しないと思う」と給付金は受け取らないとの意向を示した。(4月20日付朝日新聞夕刊)

ブッキラボーで芸のない返答だねえ。

――10万円の一律給付金はその趣旨を尊重してありがたくいただく。使い道はあらまし決まっている。その4割は新型コロナ感染症で生活が追い込まれている方々の救援に駆け回っている組織に寄付する。次の4割は危機に瀕している医療体制を支えようと奮闘している支援団体に寄付したい。その半分は日本国内の組織に、残り半分は途上国の組織に。私は政治家の端くれで議員でもあるので、公職選挙法で寄付行為は禁じられている。しかし、それは選挙区内でのことで、選挙区外では許されるようだ。この点は選挙管理委員会で確認を取りたい。最後の2割を使って、市場で肉、魚、野菜、豆腐など買って家族と寄せ鍋でも食べて消費喚起のお手伝いをしようかと思っている。秘書や事務所の職員、それに記者の皆さんもお招きしたいところだが、もっかのところ、家族以外の者との大勢の会食は避けなければならいので……。

この程度のことも言えなかったのかねえ。10万円の給付がなくても生活が維持できる層に対して、その10万円を生活困難者への支援、医療支援、生産者・小売業者支援の消費活性化へ向けようと、支援と連帯を呼び掛ける。それが政治家ってもんだろうに。Cool head, but warm heart――Alfred Marshall.

(2020.4.20  花崎泰雄)

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それぞれのリーダーシップ

2020-03-15 23:18:04 | 国際

朝日新聞の記者が「あっという間に世界中を席巻し、戦争でもないのに超大国の大統領が恐れ慄(おのの)く。新コロナウイルスは、ある意味で痛快な存在かもしれない」とツイッターに投稿して批判を浴びた。勤め先の朝日新聞社は、「痛快」という表現は不適切であったとし、「ツイッターは記者個人の責任で発信していますが、こうした事態を招いたことについて、あらためておわびいたします。記者研修の強化などを通じ、ソーシャルメディアの適切な利用を進めます」とお詫びの記事を掲載した(3月15日朝刊)。新聞記事は出稿部門や紙面編集部門で各ゲートキーパーのチェックを経て印刷される。ゲートキーパーのいないツイッターの記事(ツイッターの文章が記事といえるかどうか、これまた議論のあるところではあるが)は筆者の個人的思い入れ・偏見・用語選択の稚拙などなどがチェックされることもなく世の中に出て行く。

それはともあれ、各国の指導者が新型コロナウイルス対策に苦心しているのは事実である。沈着な指導者、科学者としての冷静な判断を見せた指導者、慌てふためきつつも災いをもって我が福としようとているように見える指導者などなど、興味深い寸劇を見ることができる。

比較的評判の良かった指導者は、シンガポールのリー・シェンロン首相だった。彼は2月8日、国民に次のようなメッセージを送った

シンガポール国民は17年前にSARSを体験した。あの当時に比べると新コロナウイルスへの備えははるかに良く整っている。マスクや防具は十分にあり、新しい国立感染症センターをはじめとする洗練された医療態勢がある。ウイルス研究能力も進歩している。訓練を受けた医師や看護師がいる。心理的な面での備えも十分だ。備えは十分できている――とシンガポール首相はまず国民に安心を与えることを優先した。

ドイツのメルケル首相はヨーロッパに感染者と死者が急上昇し始めた3月11日の記者会見で、専門家の意見ではドイツ国民の60-70パーセントが感染する恐れがあるが、当面、我々にできるのは、治療薬や予防ワクチンが開発されるまでの時間稼ぎだけだ、と冷厳な事実を国民に突きつけ、だからこそ一致団結してできる限りのことをやってみようではないかと訴えた。こうしたメルケル氏の科学的かつあけすけな物言いは、それまでコロナウイルスの脅威を矮小化し続けてきたトランプ大統領の下の米国の記者にとっては新鮮さがあったらしい。ニューヨーク・タイムズの記者は他国の指導者にはない歯切れの良さと書いた

米国の場合、トランプ大統領は早々と中国からの入国拒否を打ち出したものの、その後、米国内のウイルス検査態勢の不備を指摘する声を無視し続けた。米国で感染者と死者が爆発的に増えた3月13日、トランプ大統領は非常事態宣言を出した。コロナウイルス対策費500億ドルの支出と、欧州のシェンゲン協定加盟国からの米国への入国を拒否することを決めた。その宣言をめぐる記者会見で、トランプ大統領は検査態勢の不備についての記者からの質問に対して次のように答えた――私に責任はない。私は古い態勢を引き継いでいた。

   “I don’t take responsibility at all because we were given a set of circumstances and we were given rules, regulations, and specifications from a different time.”

このトランプ大統領のあきれた発言と、その嘘についてはニューヨーク・タイムズ紙が詳しい

日本では安倍首相が2月27日に専門家の意見も聞かず全国的な休校とイベントの中止を要請し、29日に記者会見をした。この模様は官邸サイトで見ることができる

約36分の会見時間の中で、首相が19-20分発言し、記者との問答は16-7分間だったという。質問できたのは、朝日新聞、テレビ朝日、NHK、読売新聞、AP通信の5記者だけ。「まだ質問があります」の声を振り切って、記者会見をおしまいにした首相のやり方については国会で野党が問題にした。会見終了の後20分ほどして首相が帰宅したことに触れ「そんなにいそいで帰りたかったのか」と蓮舫議員が参院予算委で首相に詰め寄った。

安倍首相には休校要請やイベント中止、新型コロナウイルス対策全般について、国民に何を訴えようとしているのか、記者と肉声でやり取りする気概も能力もなかった。官邸サイトの動画を見て、文字による記録をきちんと読めばおのずと明らかになるだろう。

森友・加計・桜を見る会とその前夜祭・黒川検事長定年延長の手口とその尻ぬぐいで珍妙な答弁を重ねた森法相の哀れな姿――安倍首相への信頼は崩壊し続けている。新型コロナ対策で安倍首相が何を言おうと、国民はそれを信頼しかねている。

ところで、フィリピンのドゥテルテ大統領はマニラ首都圏を封鎖すると3月12日に発表した。その時点での感染者は53人(うち死者5人)。大半がマニラ首都圏の人だが、数字を見る限り、首都圏封鎖は大げさなように見える。封鎖が公衆衛生上不可欠なのか、大統領の個性が反映されたものなのか判断しにくいところがあるが、これもまた新型コロナウイルスがあぶりだした世界のリーダーの思考と行動の興味深いサンプルの1つといえるだろう。ちなみに東京都内の感染者数は3月14日現在87人。

 

(2020.3.15 花崎泰雄)

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どすこい、どすこい

2020-03-09 21:54:52 | 政治

3月9日、NKHテレビで国会中継(参議院予算委員会)を見ていたら、この日の質問者のしんがりを務めた共産党の田村智子氏が、これから私はコロナウイルスと桜を見る会の2点について質問をするが、質問の途中でこの中継が切れるので、切れた部分は夜の録画放送で見ていただきたい、と発言した。田村議員の質問は午後4時半を回ったあたりで始まり、午後5時には予定通り中継が打ち切られた。

NHKの国会中継ではいつものことである。

野党と政府の言論バトルである国会中継が午後5時で打ち切られ、短いニュースの時間をはさんで放送されたのは観衆のいない大阪府立体育会館からの肉弾相打つ大相撲春場所中継だった。人の気配がないがらんとした会場では土俵にあがる力士も力が入らないだろう。

こんなことになったのも、安倍首相のイベント自粛・学校休校の「お願い」が出たためだ。そのお願いの根拠は疫学専門家のお勧めというよりは、安倍氏とその周辺の政局易学専門家の判断だと、いくつかの新聞が報じている。

青森・岩手・山形・富山・福井・島根・鳥取・香川・香川・徳島・長崎・佐賀・鹿児島では感染者の報告がゼロである(3月9日、厚生労働省)。

森友・加計・桜を見る会とその前夜祭・黒川検事長定年延長と、一連の疑わしいふるまいで剣が峰に立たされた安倍政権へのカンフル剤として、イベント自粛・学校休校の事実上の号令を演出したのだろう。

この日本国首相とその周辺はとっさのヒラメキで物事を決めてしまう癖がある。黒川検事長の定年延長も関連する法令や過去の国会審議の検討を抜きにして「ためらうことなく」決断したフシがある。そのせいで、3月6日の参院予算員会では黒川氏定年延長の法的根拠・手続きの正当性を追求されて、森まさこ法相は個別の案件についてはコメントを避けると36回も(朝日新聞)繰り返さざるを得なかった。桜を見る会も桜を見る会前夜祭の問題でも安倍首相本人が、反証を示さないで逃げ回った。

NHKが3月9日に伝えた世論調査では、安倍内閣の支持率は43パーセント、不支持率が41パーセント。統計の有意差を考えると、支持と不支持が40パーセント台前半で拮抗したと考えるのが妥当だろう。支持不支持がどっこいどっこいの、その調査で、内閣を支持する理由を聞くとトップが「ほかの内閣よりよさそうだから」、不支持の理由のトップは「首相の人柄が信用できない」だった。

   (2020.3.9 花崎泰雄)

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疑惑の連鎖

2020-02-27 23:59:13 | 政治

医師が患者を診断してコロナウイルスの検査が必要であると判断したのだが、保健所から検査を断られたというケースが報道されている。国会の審議でも問題になった。

中国以外では日本・韓国・イタリアでコロナウイルスが拡散している。日本で学校の閉鎖やラグビー、サッカー、大規模な催しの中止などに躍起になっているさなか、気になる日韓比較をメディアが報じている。

韓国は3万人近い人のPCR検査を済ませたが、日本ではまだ2千人に届かないという。日本の医療体制の緊急対応能力の低さに唖然とする。

一方で、PCR検査で陽性と判断できても治療法が確立されておらず、対症療法しかないのだから、PCR検査に大きな意味があるわけではない。よく手を洗い、人ごみをさけ、熱が出たらしばらくの間は自宅で安静にして様子をみるしかない、という意見も流れてくる。

日本政府が25日に発表した新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の骨子は、国民に対して生活指導はするが、政府がいつまでに①PCR検査を韓国並みの能力に引き上げるのか②簡易検査キット開発発のメド③特効薬開発の時期④重症者用のベッド増床の目標など、政府のやるべきことについては、具体的な説明を避けている。

日本政府はコロナウイルス陽性者の数を巣やしたくないのであろう。オリンピック開催に影響が出るのを避けようとしている。政府は1日のPCR検査能力は3600人であるとしているが、実際に検査したのは1日900人に過ぎない。やればできるはずの検査態勢の強化に取り組んでいないのは、陽性者の数を増やしたくないからだ――と海外のメディアに書きたてられている。

たとえば、2月26日付の韓国『東亜日報』――。

「日本政府が新型コロナウイルス感染症の診断検査を制限的に実施し、感染者数が実際より大幅に縮小されているという指摘が出ている。医師であり医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは25日、東亜日報の電話取材に対して、『日本は大病院だけが重症患者に対する新型コロナの検査を行っている』とし、『医療保険で診療を受けることができる病院全てが検査を実施しなければならない』と強調した。また、『日本政府が開催を控えた東京五輪を意識して、日本国内で感染は蔓延していないと主張している』と指摘した」

いくら安倍政権だとはいえ、そこまではやるまい、と思うのだが、2013年9月、安倍首相にはオリンピック招致にあたって、フクシマは「アンダーコントロール」とブエノスアイレスで演説した過去がある。まだタンクからもれた汚染水が地下水にまじって海に流れている時期だった。

オリンピック開催のために二度目の「アンダーコントロール」のメッセージをなんとしても世界に伝えた気分なのだろうと、森友・加計・桜・検事長問題で増幅している安倍首相の人柄への疑いの目が、政権のコロナウイルス対策に対しても向けられている。

(2020.2.27 花崎泰雄)

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某大学法学部卒業試験問題

2020-02-24 00:51:43 | 政治

<報道にもとづく背景>

日本国政府は2020年1月31日の閣議で、黒川・東京高検検事長の定年延長を決定した。検察庁法には定年延長の規定がないので、国家公務員法の規定を適用した。ながらく政府は検察官には国家公務員法に基づく定年延長は適用しないと解釈してきた。2月12日の衆院予算員会で人事院は「現在も同じ解釈を引き継いでいる」と述べた。翌13日になると安倍首相が、検察官の勤務延長については国家公務員法の規定が適用されると、今般解釈することとした、と衆院本会議で解釈の変更を明言した。すると人事院は2月19日の予算委員会で、「現在」という言葉の使い方が不正確だったとして、2月12日の答弁を撤回した。野党は政府の恣意的な解釈次第で、制度の運用が変わるのは問題だと、激しく追及している。

<関係する条文>

  1. [検察庁法第22条] 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。
  2. [国家公務員法第81条の3] 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。

<問題>

  1. 国家公務員法と検察庁法の関係は、前者は対象範囲が広い一般法、後者は対象範囲の狭い特別法にあたる。特別法である検察庁が退職年齢のみを定め勤務延長について言及していないのは、勤務延長を認めていないからであると解することが妥当であるという見解と、検察庁法は退職年齢に言及したのみであり、勤務延長については国家公務員法が適用される、という二つの意見について、特別法と一般法の優先という考え方を念頭に、どちらの考え方が妥当か、論じなさい。
  2. 検事長は任命権者が内閣であることから、黒川検事長の定年延長については閣議で決定した。安倍首相は国家公務員法の規定が適用されると解釈変更したと明らかにしたが、その解釈変更のプロセスについてはまだ完全に明らかになっていない。人事院や法務省のレベルでの解釈変更で十分なのか、閣議決定が必要な人事案件なので解釈変更も閣議決定が必要なのか、国家公務員法あるいは検察庁法の該当条文の変更が必要であるのか、論じなさい。

      ◇

<余談>このところつれづれなるままに、衆議院サイトの国会審議中継をみている。これがめっぽう面白い。野党議員が声を荒げて激怒して見せたり、妙に冷静な声で答弁する側を油断させようとしたり、答弁する側は意味不明の弁舌を繰り返したり、議事録に残る国会での答弁なので嘘は言っていないと言わんばかりの答えをしたり、閣僚によっては事務方の書いた答弁書を棒読みして、質問者の野党議員に「よく読めました」と褒められたり……。「森友」「加計」「桜」「検事長」と、大量の嘘を重ねてきた安倍政権――という感触は多くの人が抱いているのだが、国政調査権を持つ野党にしても、政府と与党と官僚の壁に阻まれ、その嘘を白日の下にさらすことができないでいる。見ている側にも切歯扼腕の方が多いことだろう。かつて発展途上国の政治過程を研究課題にしてきた私にとっては、今の日本の政治過程が、過去フィールドワークで足しげく訪れたどこかの国と似ていて、郷愁のような既視感がある。

 (2020.2.24  花崎泰雄)

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Maiden name

2020-02-09 21:56:56 | 社会

24日の衆院予算委員会で茂木外相が、日本のパスポートの別名併記の仕組みは外国の入国管理で分かりにくいので、2020年の後半以降に新しい方式に切り替える意向を示した。

このことを伝える新聞記事を読んでいて興味深かったことがある。別名併記の一例として女性の結婚前の旧姓をとりあげて、次のように外相は説明した。

「見ただけでは旧姓だと分からない……maiden nameなどと書くことではっきりと分かるような形を取っていきたい」

Maiden name は結婚前の女性の旧姓だ。Maidenという言い方がいかにも古臭く、男中心の家父長制のにおいが漂うので、英語圏ではbirth name が中立的な用語として使われている。

日本では9割以上の女性が結婚のさい夫の姓に改姓する。9割以上ということは、逆に、何パーセントかの男性が妻の姓に改姓することを示している。

ところで、改姓した男性の旧姓をmaiden nameと英文表記するとまた別の混乱を招くことになる。

外務省のホームページを見ると、現行の別姓併記方法は旧姓を括弧の中に入れるだけの方法である。日本のパスポートに不慣れな入国管理官がいる空港もあろうから、添付写真の括弧内の名を説明する赤字のような「旧姓=former surname」 という書き方もあろう。Maiden nameよりformer surnameの方が穏当である。

こうした煩わしさが付きまとうのも日本政府が日本国民に夫婦同姓を強制しているからである。「調べた限りでは、夫婦同姓を義務付けている国は日本だけである」という文面を閣議決定したと、かつて新聞が伝えたことがあった。国連女性差別撤廃委員会は日本が夫婦同姓の強制をやめて選択的夫婦別姓制度を導入するよう日本政府に対して再三に勧告している。

茂木外相が “maiden name”という語を用いたのは、結婚に際して妻になる人は夫になる人の姓に改姓するのが大勢であるという認識が背後にあるからだ。「通称使用」や「別姓併記」など、なんだかんだと弥縫策を弄して、自民党の政治家は夫婦同姓の義務を永続化させようとする。彼らの選挙区の頭の固いオジサンやオジサン的考え方に何の疑問を抱かないオバサンたち――岩盤的支持層――の意向を無視できないからだ。

2020.2.8 花崎泰雄)

 

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おもしろうてやがて悲しき……

2020-02-04 01:09:23 | 政治

桜を見る会の安倍晋三後援会の案内文について、首相は「幅広く募っているという認識でございまして、募集しているという認識ではなかった」と国会答弁をした。この答弁は「頭は痛いが頭痛ではないと言っているに同じ」と野党議員に揶揄され、予算委員会の笑いをさそった。この手の珍妙な言い回しは、それまで憲法に抵触するとしてきた集団的自衛権を外部環境の変化に合わせて、憲法上問題ない集団的自衛権もある、とした論法以来おなじみの修辞法である。

ひきつづき「桜を見る会」とその「前夜蔡」である安倍晋三後援会の夕食会をめぐる国会問答は、下手な漫才よりよほど面白い笑いを提供し続けている。野党の質問者が「つっこみ」で日本国首相が「ぼけ」の役割を分担して、国会中継の視聴者を笑わせてくれる。

2月3日もついNHKの国会中継を見てしまった。衆院野党会派の辻元清美氏がこの日のトリをつとめ、えいえいやっと切り込んでいく。

辻元氏は2013年からニューオータニや全日空ホテルで催されてきた「前夜祭」は、会費五千円、参加者各自がホテルと契約し、ホテルが参加者それぞれに領収書をわたす「安倍方式」でやったのか、と質問した。

安倍首相は、いずれの年の夕食会もホテル側との合意のもと、一人五千円という価格設定だった。会場入り口の受付で安倍事務所の職員が会費を収集し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡す、という形で参加者からホテル側への支払いがなされた。領収書にホテルの担当者が金額などを手書きし、宛名は空欄だったと説明した。

すると辻元氏が、「安倍方式」でやれば政治資金収支報告書に不記載でも違法ではないということを、日本中の自治体議員や国会議員に対して太鼓判を押してほしい、といなおってみせた。

すると首相が安倍晋三後援会としての収入支出は一切ないから、収支報告書への記載は必要ない、と答弁。同じ形式であれば問題ないと考えている、とも答えた。高市早苗総務相が政治団体の収入・支出でない場合は記載の義務はないと念を押した。首相も総務省も衆院予算委員会の場で「安倍方式」にあっけらかんと太鼓判を押すわけにもいかないが、この答弁で認印ぐらいは押した感じである。

首相が地元でやる新春の会では後援会が会費をとり、収支報告書に載せていると弁明すると、すぐさま辻元氏に、じゃあ、なぜなぜ「前夜祭」にかぎって参加者が直接ホテルへ支払ったのか、とつめよられた。

これに対して首相は、後援会の人たちが集まり、食堂なりレストランで割り勘で会費を払った場合は収支報告書には載せない、と「前夜祭」を割り勘の催しであるかの如く説明した。そこで辻元氏が、ホテルの会場を借り切った八百人の会合で、そんな話、聞いたことはない、とあきれてみせる。さらに、辻元氏が、前夜祭の参加者が安倍さんのおかげで、高級ホテルで五千円で飲食できたとなれば買収。ホテルがだいぶディスカウントしてくれたとなったら、寄付を受けているのではないか、という疑いを持たれる。収支報告書を訂正し、追加記載することを求めた。

首相の事務所が「前夜」に参加した人からホテル発行の領収書を集めて開示すれば、疑惑を払拭する一助になるだろう、と辻元氏がつめよると、首相は、領収書は間違いなくニューオータニ側が出しており、違法性はない。あえて後援者から集める必要はないと考えている、と日本国首相の国会答弁が信用できないのかといった態度である。

一般会計総額が過去最大の102兆6580億円に達した2020年度予算案を論じる国会の議論としては金額的にはちまちまとした事柄に見えるのか、桜より予算本体の議論をという声もあるのだが、予算を編成した政権の体質批判を抜きにして、カネの使い道だけを議論するのもむなしい。だって、森友、加計、桜を見る会……仏の顔も三度とやら……。

くわえて、安倍政権は2月7日で定年退官する予定だった東京高検検事長の黒川弘務氏について、半年後の8月7日まで勤務を延長させることを閣議決定している。

報道によると、検察庁法では検事総長の定年は65歳、その他の検察官は63歳と定めている。しかし、国家公務員法では、職務の特殊性や特別の事情から、退職により公務に支障がある場合、1年未満なら引き続き勤務させることができると定めているので、この規定を適用して、東京高検検事長の勤務を延長することにしたと政府は説明している。

検察庁法の定めを国家公務員法の定めでオーバールールしたのだが、野党は黒川氏を次の検事総長に据えるための工作だとして、国会の内外で批判を始めている。野党党首は安倍政権の意に沿い、法務行政を牛耳ってきたと言われていると発言、週刊誌などは安倍政権の番犬を温存したのではないかと伝えている。何のため。黒川氏の定年延長が決まったのは1月31日。定年退官予定日の1週間前だった。その時、政権が心配していた事件はIR汚職事件である。

(2020.2.3)

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春節驚騒

2020-01-26 15:05:25 | 国際

WHO(世界保健機関)は1月24日現在、コロナウイルスによる武漢の新型肺炎について、世界的な緊急事態であるとの宣言を出していない。一方、中国政府は武漢市一帯の交通を遮断し、町を事実上封鎖する措置をえらんだ。

日本ではインフルエンザの流行期に学校閉鎖をすることがある。これは学校保健安全法に基づく措置である。エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病及びラッサ熱発生にあたっては、緊急の場合都道府県知事が特定地域の交通を72時間を限度に遮断することができると法律で定めている。

武漢は人口1000万を超える大都市である。新型肺炎を理由に、1000万人の移動の自由を制限し、一定地域にとどめ置くことができる法律が中国にあったのだろうか。

驚騒は世界に広がっている。フィリピンは到着した中国人団体旅行者の入国を認めなかった。台湾は武漢からやってきたことを隠した旅行者に100万円の罰金を科した。加えて、アメリカが米国人救出のために武漢へチャーター機を飛ばすことを中国政府と交渉しているというニュースが流れた。日本政府をはじめ各国政府が自国民救出のために中国政府と交渉している。中国政府は自国民が団体旅行で海外へ出かけることを禁止した。

逃げ出せる機会のある人はまだしも、武漢に閉じ込められた中国国籍の人はどうなるのだろうか。救援のための人員と物資を大量に送りこまないと、武漢は非衛生な1000万都市となり、新型肺炎だけでなく、その他の感染症も広がる危険性がある。

春節の武漢がカミュの小説『ペスト』のオランのようになり、後に武漢市を舞台にしたカミュをしのぐ小説が書かれることになるのか。それよりも、武漢の肺炎と1000万都市封鎖が、習近平指導部の英断と評価されるのか、失態と批判されることになるのか、世界の中のチャイナ・ウォッチャーが武漢の新型コロナウイルスを見つめている。

(2020.1.26  花崎泰雄)

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