ムバラク大統領の退陣と民主的な政治改革を求めているエジプトの民衆デモで、その中核となっている「4月6日青年運動」が、2月1日の火曜日、首都カイロで100万人規模のデモを計画している、と『アルジャジーラ』が1月31日伝えた。
1月31日、オバマ米大統領がトルコ、イスラエル、サウジアラビア、英国の各首脳と電話で会談し、エジプト国民の願望に応じる新政府への秩序ある移行を支持する考えを伝え、協力を求めた、と伝えた。
同じ日の『ワシントン・ポスト』によると、「移行(transition)」と言う言葉は、クリントン国務長官が米テレビのインタビューでも使った用語で、9月に予定されている大統領選挙までエジプトの国政を預かる民意を代表する暫定政府樹立への期待を示したものだ、と米政府高官が説明した。
ムバラク大統が領辞任すれば、大統領に昇格することになるオマル・スレーマン現副大統領による後継暫定政権でアメリカとエジプトの政権同士の交渉がまとまった可能性がある。アメリカにしてみれば中東の要であるエジプトで権力の真空という事態は避けねばならない。その意味で、アメリカは、ムバラク大統領からスレイマン副大統領への権力の移行がorderly transit=秩序ある移行であると考える。
一方で、抗議行動を繰り広げている反ムバラク側は、ムスリム同胞団を含めて、エルバラダイ前IAEA事務局長を軸に、野党勢力を結集した暫定政権の樹立を模索している、と『ニューヨーク・タイムズ』や『朝日新聞』をはじめとする各メディアがカイロから伝えている。アメリカの意向をうけた後継政権を受け入れるつもりはない。
もし、2月1日の百万人デモが実現すれば、それは、後継の暫定政権の主導権をめぐる、スレイマンとエルバラダイの綱引きの場になるだろう。
そのあと、暫定政権の構成をめぐって、現政府側のエリートと反政府側エリートとのイスのとりあいになる。
いずれにせよ、もはや、誰かがムバラク大統領に辞任を求め、引導をわたすだけの段階になってきているようだ。1998年5月、インドネシアのスハルト大統領が、反スハルトの民衆デモのなかで30余年にわたった大統領の座から滑り落ちたのは、当時のオルブライト米国務長官から辞任を勧める電話が入って数時間後のことだった。今回も同じような電話を、クリントン米国務長官がムバラク大統領にかけることになるのだろうか。
(2011.1.31 花崎泰雄)
1月31日、オバマ米大統領がトルコ、イスラエル、サウジアラビア、英国の各首脳と電話で会談し、エジプト国民の願望に応じる新政府への秩序ある移行を支持する考えを伝え、協力を求めた、と伝えた。
同じ日の『ワシントン・ポスト』によると、「移行(transition)」と言う言葉は、クリントン国務長官が米テレビのインタビューでも使った用語で、9月に予定されている大統領選挙までエジプトの国政を預かる民意を代表する暫定政府樹立への期待を示したものだ、と米政府高官が説明した。
ムバラク大統が領辞任すれば、大統領に昇格することになるオマル・スレーマン現副大統領による後継暫定政権でアメリカとエジプトの政権同士の交渉がまとまった可能性がある。アメリカにしてみれば中東の要であるエジプトで権力の真空という事態は避けねばならない。その意味で、アメリカは、ムバラク大統領からスレイマン副大統領への権力の移行がorderly transit=秩序ある移行であると考える。
一方で、抗議行動を繰り広げている反ムバラク側は、ムスリム同胞団を含めて、エルバラダイ前IAEA事務局長を軸に、野党勢力を結集した暫定政権の樹立を模索している、と『ニューヨーク・タイムズ』や『朝日新聞』をはじめとする各メディアがカイロから伝えている。アメリカの意向をうけた後継政権を受け入れるつもりはない。
もし、2月1日の百万人デモが実現すれば、それは、後継の暫定政権の主導権をめぐる、スレイマンとエルバラダイの綱引きの場になるだろう。
そのあと、暫定政権の構成をめぐって、現政府側のエリートと反政府側エリートとのイスのとりあいになる。
いずれにせよ、もはや、誰かがムバラク大統領に辞任を求め、引導をわたすだけの段階になってきているようだ。1998年5月、インドネシアのスハルト大統領が、反スハルトの民衆デモのなかで30余年にわたった大統領の座から滑り落ちたのは、当時のオルブライト米国務長官から辞任を勧める電話が入って数時間後のことだった。今回も同じような電話を、クリントン米国務長官がムバラク大統領にかけることになるのだろうか。
(2011.1.31 花崎泰雄)