10月29日の新聞に、国連が27日に総会を開き、イスラエルとハマスの軍事衝突について「人道的休戦」を求める決議案を採択した、という記事が載っていた。ただし、総会決議には拘束力がない。イスラエルとハマスは戦闘を継続している。
イスラエルの空爆でガザの建物は破壊され、死者が増えている。あちこちのメディアがガザ地区の死者は1万人に迫ろうとしている、と伝えている。断片的に紹介される瓦礫だらけになったガザの様子を見ると、やがてイスラエル軍が地上進攻を始めれば、そこは死者を万単位で数える修羅場になるだろう。「集団墓地、身元不明の遺体、満杯の墓場――戦争がガザの人びとから葬礼を奪った」というAP通信の記者のレポートをインターネットで読んだ。
書いたのはIsabel Debre と Wafaa Shurfaの2人。Shurfaはガザ地区内から、Debreはエルサレムからの報告である。
記事のあらましは次のようだ。10月7日の戦闘開始以降、ガザ保健当局によると7700人以上のパレスチナ人が空爆で死んだ。うち300人が身元不明だ。1700人が瓦礫の下に埋まったままだ。来る日もくる日も、毎日何百人もが死んでいる、とパレスチナ難民担当の国連職員が言う。墓地に埋葬のための空間がなくなったため、古い墓を掘り起こして過去の遺骨を出して、そのあと墓穴をさらに深く掘り下げて埋葬のためのスペースを作っている。ガザの行政当局も、集団墓地を掘っている。空爆で死者が続出して、病院の霊安室が死体で一杯になる。病院は次の姿態の安置のために、前の死体を身元確認ができないまま、埋葬に回す。ガザの人たちは万一の時の身元確認のために、ブレスレットをつけたり、手に名前を書いたりしている。「何かをしようとしても、ここには時間も空間もない。できるのは大きな墓穴を掘り遺体をうめることだけだ……埋葬前に遺体を洗い、着替えをさせる事も出来ないし、弔問客にしきたり通りのコーヒーやデーツをふるまうこともできない。イスラムでは葬儀に3日かけるが、ここではそれも守れない。弔いが終わる前に人々は死んでしまうからだ」と難民キャンプの人が言う。
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かつてプラハを訪ねた時、旧ユダヤ人地区の旧ユダヤ人墓地を見学したことがある。プラハの市街地の狭い一画にある歴史遺跡で15世紀から400年ほどユダヤ人の墓地だった。狭い墓地だったので、古い遺体の上に新しい遺体を埋め、その上にもっと新しい遺体を埋葬した。墓は10層以上に重なっている。それに似た埋葬がいま、狭いガザの中で行われている。
(2023.10.29 花崎泰雄)