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news commentary

あちー

2009-07-31 23:17:02 | Weblog
ペンシル・ストライプの紺のスーツを着て、浅緑色のリュックを背負い、何かを詰め込んだプラスチック・バッグと新聞を左手にぶら下げた30代らしい男性がエレベータにーかけこんできた。

行き先階のボタンを押しながら、ため息のような低い声で、やりきれない思いを込めたようにつぶやいた。

「あちー」

そりゃそうだよ。そんな我慢大会のような格好しているんだから。

東京の7-8月の最高気温は平均で30度前後、最低気温は24度前後だ。背広発祥の地ロンドンのそれは、最高が25度、最低が15度ほど。夏に背広を着るのなら、ロンドンが南限だ。

兼好法師の昔から「家の造りようは夏をむねとすべし、暑いころ悪い家は耐え難いことだ」といわれてきたのに、いまでは多くの住まいがコンクリートの箱になってしまった。昼間たっぷり夏の熱を蓄積し、夜になっても箱の中は暑い。

考えてみると日本の気候は、正直なところ、よくない。日本の大部分が春雨、梅雨、夕立、秋雨、時雨と、雨ばかり降る湿潤なところで、夏はその湿潤に暑さが加わる。夏はシンガポールのほうが涼しい。

  夏炉日本冬扇こそは恋しけれ火焔山消すかの芭蕉扇
                        閑散人

(2009.8.1 花崎泰雄)
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国替

2009-07-28 22:12:12 | Weblog
横浜市の市長が辞職すると言い出した。どうも本気らしい。市議会議長に辞表を出したそうです。44歳、俗に言う働き盛りの男性だ。市長の任期は2010年4月まであと半年以上残っていた。

唐突な辞職表明なので、一瞬、汚職や破廉恥行為がばれそうになったので早めに辞職するのかと、よくあるケースを想像したのだが、そうではないようです。

それでは、宮崎の知事の担ぎ出しに失敗した自民党が、宮崎県知事よりは少しばかり国政参画の経験のある横浜市長を「総裁候補として自民党から総選挙に出馬願いたい」と誘ったのかともかんぐったのですが、それも違うらしい。

市長ご本人が記者会見で8月の総選挙には出ないと断言なさった。

では、市長の職責を放り出して唐突に辞職する理由はなんだろう。家庭に介護を必要とする老人や病人がいて、その世話に専念するための辞職なのだろうか。それも違うらしいのですね。

いまのところ、市長の辞任の真意はよくわかりません。

アメリカでは、先の大統領選挙で共和党の副大統領候補だったペイリン・アラスカ州知事が辞任したばかりだ。ペイリンの辞任は2012年のアメリカ大統領選挙出馬へむけての準備に専念するためだと観測されている。日米で公職投げ出しが流行っています。

横浜市長の辞任も何か似たような大役をねらってのことでしょうか? 総理大臣?

でも、総理大臣の仕事なんて、それほど面白いものではないかもしれませんよ。それが証拠に、安倍、福田の2人が連続して国家行政の長の職務を放り出しています。

今度は地方自治拡大を叫ぶ首長さんの職務放り出しですか。横浜市長の記者会見の一部をNHKニュースで見ていたら、このままでは日本はダメになるので、出来ることは何でもやらなければならない、というようなことをのたもうた。そうか、日本を救うために横浜市長を辞めるのですか。

宮崎県の知事も総理大臣になって日本を救いたいという大望をいだいて、笑いを提供したが、その話も立ち消えになり、いまでは「地方分権を訴えるのが主眼だったが、一連の行動や発言で多大の迷惑や心配をおかけし、深くおわびする」とあやまっているそうだ。だが、ときすでに遅し。コケにされた宮崎の有権者の腹の虫はおさまらないでしょうな。

ところで、衆院の東京12区で立候補を検討していた民主党の小沢一郎も、「私自身が出馬を検討したが、諸般の状況があり、私に代わり必ず勝利できる候補者を探した。全国の選挙情勢を考えた結果だ」と、元秘書だった参議院議員の女性を同選挙区から立候補させることにした、と記者会見で語った。鼻っ柱のオザワさんにしては意気地のない話ですワ。

そのときの記者会見の模様を伝えた新聞の多くが、立候補する選挙区を変更することを「国替え」と書いた。「司々(つかさつかさ)で責任を持って粛々(しゅくしゅく)と進めて欲しい」だとか「選挙で禊(みそぎ)」などという政治表現におけるアナクロニズムがまかり通る永田町で仕事しているうちに、政治記者自身の感覚もそうとう狂ってしまのですね。

「国替」を平凡社世界大百科事典で調べると「江戸時代に行われた大名の配置替えのこと。転封(てんぽう)または移封ともいう。豊臣秀吉のときに始まるが,江戸幕府の初期3代の将軍によって強行された」と書いてありました。現代の民主主義国家における選挙区とは何の関係もない言葉です。

政治家は選挙区を領地だと思っているのだろうね。だから、世襲でもいっこうにおかしくないわけですよ。でも、ジャーナリズムがそんな表現を使ってはいけませんよね。政治をやっている連中も、その動きを伝えている連中も、こんな程度のセンスなんですわ。こまったもんです。

  解散をすれど選挙は先の先まのび欠伸の前座あれこれ
                     大歩危閑散人

(2009.7.28 花崎泰雄)




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そのみぎり障子破りし逸物ぞ

2009-07-13 22:58:05 | Weblog
   そのみぎり障子破りし逸物ぞ
      マッチョ妄想萎びてもなお
                      閑散人


都議選から一夜明けた7月13日、東京都知事の石原慎太郎が、総選挙を前にして都議選が番付外の力士が取る前相撲のようになってしまい、おおいに迷惑していると語ったと、13日の朝日新聞夕刊が伝えていた。

「(告示)2週間前から始めた候補が自民党のエースを破る現象は異常。非常に浮薄な選挙になった」と語ったそうである。

選挙を浮薄なものにする原因は、①候補者が浮薄である②選挙民が浮薄である③選挙民も候補者もともに浮薄である、と考えられる。「2週間前から始めた候補が自民党のエースを破る現象は異常」と石原はコメントしているので、彼は東京都の選挙民は浮薄で、つまらん人を都議に選んだと言っているのだろう。その浮薄な選挙民によって石原は知事に選ばれている。かつて青島を東京都知事に選んだ選挙民は浮薄で、石原を知事に選んだときの選挙民は浮薄でなかったとでも、石原は思っているのだろうか。

青島も石原も東京都の浮薄な選挙民によって知事に選ばれた。他の自治体でも変ったキャラクターやキャリアの人が首長に選ばれている。総裁候補にしてくれるのなら自民党から選挙に出てやってもいいと、芸能界出身の知事が豪語する背景には、選挙が浮薄な人気投票になっている現実がある。そうした日本の国会や地方自治の様子を見ていると、いっそ裁判員を選ぶようなやりかたで議員や首長を選ぶ方法もあるように思える。

選挙民のことを浮薄と言った石原だが、彼自身も相当に浮薄だ。

この間、オリンピックの開催予定地視察のために東京にやってきたIOC視察団のナワル・ムータワキル(女性)の写真を都の広報誌の臨時号に載せたことについて、石原は「よほど若くて美人ならわかるけど……」と、いつもながらの女性蔑視の発言で、浮薄な選挙民の受けをねらった。高い金を出して視察団を案内し、接待し、広報誌に写真を載せてゴマをする一方で、つまらん強がり発言ですべてをぶち壊しにしてしまいかねない知恵のなさだ。石原の暴言はすでにムータワキルの耳に届いているだろう。イシハラは男っぽくていい奴だ、とムータワキルが感じているとは、とても思えない。

以下、東京都のサイトに掲載されている2009年6月5日の石原知事定例記者会見録から。
 
【記者】先ほどの都議会でですね、副知事人事同意を得たわけですけれども、ここに来て五輪担当の副知事さんがかわることがですね、招致に何か影響が出たら困るなという声があったりするんですけれども、今回の人事の知事のお考え、知事の専管事項なんであれですけれども、お考え…。
【知事】オリンピックはね、佐藤(広)新副知事に担当してもらおうと思ってます。さっきも言いましたがね、息子からも電話かかってきてね、やっぱりいろんな問題があるんでね、人間の引き継ぎっていうのは必要だから、国との交渉のね、人脈というのをきちっとできるだけ早くつないでおいてくれって佐藤君に言いました。まだ辞令渡してないんだよ。
【記者】招致活動においてですね、谷川(健次)副知事のプレゼンスも(存在)あったかとは思うんですけれども、ここでやっぱりあえてかえるに踏み切った…。
【知事】それは人によっていろんな評価があるでしょう。ただね、さっきもね、ああいう言葉だと、僕も物書きだからね、言葉にこだわるし、何か胸に刺さるんだけどね、かいた汗が報われなかったという言葉はね、人によってとり方ある。私は一番汗かいてきたと思いますよ。その汗をだれがぬぐってきたかとなるとね、わりと何と言うのかな、そういう機能がね、有効に働いたとは思わないね。
 これはだれの責任ということじゃなくて、結局私の責任かもしらんけども、この間もね、理事会(東京オリンピック・パラリンピック招致委員会理事会)でね、これはやっぱりさすがに森喜朗(元首相)ね、森君がね、私の古い友人だけどね、こんなもの(広報東京都臨時号)だれがつくったって言うの。それはね、そうするととくとくとね、いや、これは谷川副知事じゃなしに、担当の局長がだな、これは何十万部刷っててね、都の広報紙でありましてどうのこうのと言うからね、調査委員会(IOC評価委員会)の女性のですね、モロッコの委員長(ナワル・ムータワキル委員長)の大きなクローズアップがあるわけですよ。よほど若くて超美人ならわかるけど、あの人、元美人ではあるけどね、あれ見て、だれが、これはだれだかわからないんだよ。そんなものがばーんと出てきてね、だれが興味持ちますか。それはね、森だって、おれだってね、人の1枚のポスターでもみんな苦労してるんでね。
 やっぱり森君らしいね、指摘がありましたよ。こんなもの、だれがわかるかって。どうせやるならね、石原とね、委員会の委員長が対談してみたら、2人の写真だったらわかるけどね、こんな見も知らない女の顔、ばかっと出してね、だれがこれアトラクトする(人を引きつける)かって。そういう工夫はまあないしね、だから、もう言ってもしようがないんだけど、今、そこらじゅうに立ってる、張ってあるポスターにしたって、勝手に決めてくるからだめだと。全部見せなきゃ。あれ、僕は5回、とにかくね、直させて、最後は電通の社長呼んでね、こんなことだったらって、嶋君(嶋達佳 電通代表取締役社長)が来て、昔から友人で、あ、石原さんの言うとおり、これは恥ずかしいと、直しましたよ。そういう、まあね、緻密(ちみつ)なネットワークは、残念ながらまだできてないね、都庁でも、JOC(日本オリンピック委員会)とのかかわりの中でも。
 だから、ここでね、やっぱりちょっとね、人心一新してやろうと思ったんです。これは谷川君一人の責任じゃありませんよ。うん。全部の責任だけど、やっぱり担当の副知事で、この辺ちょっとということで、大体一段落しました。だから、これからやっぱり、その資料を提げてね、ローザンヌに行きですね、それからね、コペンハーゲンの決戦に行くわけですからね、やっぱり、サッカーで言うとね、ハーフタイムが来たんでね、ミッドフィルダーかフォワードかは知らんけれどもね、とにかくかえるものはかえて進もうと思っております。
【記者】はい。ありがとうございました

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名にしおう霞が関の木下闇

2009-07-11 14:55:19 | Weblog
今日(2009年7月11日)は東京都議会議員選挙の選挙運動最終日なので、選挙カーがいれかわりたちかわりやってきて、言っていることがよく聞きとれないほどの騒音状態になっている。イスラム教徒が多い国では、アザーンを拡声器で流さず肉声でやろうという申し合わせがあるが、ほとんど守られていない。ちょうどラマダンあけの日のジャカルタの払暁といった騒がしさだ。

都議選で自民党が負け、そのあとの総選挙でも自民党が負けて、民主党が政権を握ることになるだろうと、自民党議員の多くが懸念しているようだ。杞憂ではなく、妥当な予想といえるだろう。

民主党政権になると当面はギクシャクした政治が続くことになるのだろう。民主党議員の多くが元自民党議員で、人間のメンタリティーは、それも年寄りとなると、なかなか変わらないから、はみ出しの元自民党議員と破綻した元社会党議員らが寄り集まって成立している民主党政権に、日本政治のコペルニクス的転回を期待するのは、ないものねだりだ。

しかし、政権担当政党が交代することはそれなりの意味がある。今話題の核持ち込みに関する日米密約文書破棄についての徹底調査など、やれば面白い展開になるのではないかと思う。

新聞報道によると、1960年の日米安全保障条約改定のとき、核を搭載した米艦船の一時寄港などは核持ち込みとは解釈しないという了解が日米間にあり、それを裏付ける文書もあったが、すでに廃棄されている、と元外務事務次官が語った。密約は存在しないと言い張ってきた日本国政府の公式的な立場と食い違う。とはいうものの、アメリカの方では、ライシャワー元大使の証言、ラロック元提督証言、それに密約に関する文書そのものが公開されているので、日本政府の言明がまっかな嘘であることはすでにみんなが知っている。

先月(2009年6月)下旬に成立した公文書管理法は、公文書は国民共有の知的資源であり、歴史資料として貴重な公文書は国立公文書館などに移管することを定めている。遅かりし由良之助。遺憾ながら、核持ち込みに関する日本側密約文書の文書はすでに破棄されている。朝日新聞の報道によると、「遠い昔の文書であり、表向きないと言ってきたものを後生大事に持っている意味がどこにあるのか」と、ある元政府高官が言ったそうだ。これなど公文書はお役所のもので、国民の共有財産などとはとんでもない、と思っている政府高官の信念をよく表している。

それで、誰が廃棄の決断を下したのか。みんなで書類にハンコをおして責任のありかをあいまいにする生き方に慣れているお役人が、素人がみても重要な歴史文書とわかる書類の廃棄を自発的に決断できるだろうか。おそらくは廃棄処分については、当時の政治家―政府首脳首相も関与していたのではなかろうか。こういった疑惑が生じてくるのであるが、麻生内閣の中曽根外相は調査しないと言ったそうだ。

もっとも、新聞報道によると、廃棄したというのは嘘で「極秘に保管されている可能性は残っていると思う」ともいわれている。捨てたということにしておけば、公開要求を拒否する格好の理由になる。

沖縄返還をめぐるいわゆる「外務省機密漏洩事件」では、日本政府は取材した毎日新聞の記者と資料を提供した外務省の事務官の情事を暴露し、2人を逮捕して裁判にかけ、深刻な政治問題を性事スキャンダルにすりかえて難を逃れた。やがて、沖縄返還をめぐる吉野―スナイダー密約が表ざたになり、メディアも国民もまんまといっぱい食わされたことを知ってホゾをかんだ。遅かりし由良之助。

民主党政権になったら、そのあたりのこともひっくるめて調査してもらいたいものだ。

   名にしおう霞が関の木下闇
     人目をしのぶ文をひそかに
                  大歩危閑散人



(2009.7.11 花崎泰雄)





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