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news commentary

小粒になった朝日新聞の素粒子

2018-05-20 01:11:22 | Weblog

朝日新聞夕刊1面学下の「素粒子」の筆者が交代したらしく、このところ筆先がなまっている。読んでいてちっとも面白くない。「素粒子」は一読、ヒッ、ヒッ、ヒッヒと乾いた笑いを誘うのが売りだった。

それがいまではオピニオンのページの「かたえくぼ」や「川柳」のアマチュア・レベルの風刺技術しか見られない。素粒子が「かたえくぼ」「川柳」に負けていることもある。

たとえば5月19日夕刊の「素粒子」はこんな風だった。

                      

 説明し過ぎてかったるい。

 

一方で、同じ19日の朝刊「かたえくぼ」はシャープで笑えた。

                     

  

 

素粒子のようにいまさら麻生氏のパフォーマンスをあげつらっても笑いはよべない。麻生氏は政治家としての見識がこれといってない人だ。一時期、この国の首相を務めたこともあるが、「麻生政治」とラベルを張れるような政治理念や政策展開はこれといって見られなかった。記憶に残っているのは、麻生氏は漢字を読むことが苦手であるという些末な事だけである。財務大臣として海外の重要会議に出席するが、その会議で際立った発言をしたという記事は新聞で読んだ記憶がない。記憶に残っているのは、例の似合わない帽子姿だけである。日本の新聞ですらそうなのだから、海外のメディアではニュースになることが稀である。

麻生氏の語りから失言と暴言を引き去ると、たいしたものは残らない。麻生氏に限らず、自民党の議員の中には、支持者の集り、業界団体でのスピーチ、派閥の会合で、政論はさておき、くすぐりとしてリスキーな発言をしてサービスに努めるものがいる。

5月19日の朝日新聞朝刊「朝日川柳」に「麻生節などとおだてりゃ木に登る」(真庭誠)と副総理・財務大臣を「猿」が「豚」扱いする句があった。その程度の麻生太郎氏が永田町でとぐろをまいて居られるのは、その家系ゆえである。

失言・暴言・放言居士の麻生太郎氏の父の顔は新聞で見たことがある。麻生多賀吉氏。祖父の顔はよく覚えている。吉田茂氏。麻生多賀吉氏は吉田茂氏の娘と結婚し、吉田首相の金庫番を務め、国会議員もやった。木登りをするとからかわれた麻生太郎氏は、経済資本と文化資本を合わせた揺るぎない政治資本を受け継いでいる。いずれ勲1等をもらうことになるのだろう。

 

(2018.5.20  花崎泰雄)

 

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マレーシア・ディレンマ

2018-05-13 21:53:19 | Weblog

マレーシアの首相だったマハティール氏が思いがけず同国の首相に返り咲いた。辞任した首相が再び首相の座に就くことは稀有なことではない。日本の安倍晋三氏は2006年に日本国首相を任期途中で辞した。後でわかったことだが、病気だったという。病気から回復して2012年にふたたび首相に就任した。

しかし、マハティール氏の返り咲きは稀有な事である。安倍氏が最初の首相のポストを辞したのは53歳のときで、2度目の首相職に就いたのが58歳の時である。マハティールが20余年にわたってマレーシア首相を務めたのち首相のポストを明け渡したのは、日本風にいえば間もなく「傘寿」というすでに後期高齢者だった。今回、野党連合「パカタン・ハラパン(希望の連盟)」を率いて、独立以来マレーシアの連邦政府を独占してきたUMNO(統一マレー国民組織)を中心とした与党連合「国民戦線」に総選挙で勝利し、首相のポストについたとき、彼はすでに「卒寿」を過ぎていた。

セピア色になったフィルム写真の人物が突然色鮮やかなデジタル写真の人物に変貌した。驚愕に値する稀有な出来事である。それほどまでにUMNOによる政治にマレーシア国民は飽きていたのである。

と、同時に、マハティール氏の首相返り咲きは、マレーシアという国のディレンマも示している。マレーシアの政権党であるUMNOで頭角を現していたころ、マハティール氏は『マレー・ディレンマ』という本を書いたことがある。マレーシアのマレー系人口が社会的ステータスにおいて中国系マレーシア人に後れを取っていることを問題し、マレー系市民が中国系市民と肩を並べる社会的ステータスを獲得できるように、マレー系市民に対して優遇措置をとらねばならないと訴えた。いまように言えば「マレー・ファースト」の政策である。この本は政府によって発禁となり、マハティール氏はUMNOから追放された。

だが、マハティール氏はまもなくUMNOに復帰して、やげて首相となった。『マレー・ディレンマ』は発禁の書からマレーシア国民の必読書に代わった。首相時代のマハティール氏の強権的手法によるマレーシアの近代化路線や、UMNO内での主導権争いの数々や、首相の座に肉薄してきたアンワル・イブラヒム氏の追放劇など、長くなるのでここでは書かない。筆者が13年前に書いたマハティール氏の政治的評伝「誇りと偏見――マハティール 1981-2003」を読んで往時をふり返っていただきたい。

マレーシアの有権者の多くが、このところの経済の不調とUMNO政権の腐敗を嫌って、剛腕マハティール氏を呼び戻した。あるいは、マハティールを神輿に担げば、UMNOを倒せると野党連合の人々は考えたのであろう。つまりは、マハティールという名がまとっている名望が票になると考えたのである。これはアジアにおいては不思議なことではなく、マレーシアのナジブ・ラザク前首相はアブドゥラ・ラザク元首相の子で、シンガポールのリー・シェンロン首相はリー・クアンユー元首相の子、パク・クネ前韓国大統領はパク・チョンヒ元大統領の子だ。インドネシアのメガワティ元大統領はスカルノ初代大統領の子である。日本国の首相も、岸信介―安倍晋三、鳩山一郎―鳩山由紀夫、吉田茂―麻生太郎、福田赳夫―福田康夫と首相の座が親から子や孫にバトンタッチされてきた。

生活が以前より豊かになり、教育が普及し、勤労者に成果主義が押し付けられる時代になっても、能力の有無より名望によって政治権力者を選ぶというならいが変わらない不思議な社会がある。

今回、UMNOを主体にした政権連合「国民戦線」に対して、野党が終結して「希望の連盟」を組織し、マハティール氏を担いだ。だが、希望の連盟の有力なメンバーの人民正義党の党首ワン・アジサ氏はマハティールによって政治から追放されたため前面に出ることができないアンワル・イブラヒム氏の妻である。アンワルも隠れた人民正義党の指導者である。

アンワル氏は同性愛行為で有罪判決を受けて収監されているが、アンワル氏の支持者たちの間では、アンワル氏を政治から遠ざけるためのマハティール氏とナジブ前首相の陰謀との考え方が強い。マハティール氏はアンワル氏が恩赦を受ける日は遠くなく、恩赦によって政治に復帰できるようになれば、首相の座をアンワル氏に禅譲すると言って総選挙を戦った。

新たに政権を担う「希望の連盟」は人民正義党と、華人系人口に支持者が多い民主社会主義寄りの民主行動党やイスラム系の諸政党の多様なイデオロギーの集まりで、政権の先行きに金融市場は不安がっているが、政治は市場のためにやっているわけではない。

 (2018.5.13 花崎泰雄)

 

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その手口に既視感

2018-05-10 01:12:36 | Weblog

トランプ大統領が日本時間で5月9日夜、北朝鮮に捕らわれていた米国人3人が解放されて帰国する、とツイートした。その1週間ほど前には、間もなく解放される見込みがある、とツイートしていた。

同時に、3米国人の解放の発表にあわせて、米朝首脳会談の日程と開催場所が決まったとツイートした。米朝首脳会談の開催地についても、間もなく発表できるとか、軍事境界線も悪くないとか、あれこれ間断なくツイートしてきた。

大統領報道官に発表させるより先に、自らツイートすることで、アメリカ国民とメディの注目を、その内容よりもトランプ大統領自身に向けさせようとする手法だ。

このような情報を小出しにして、自らの存在をメディアと国民に売り込む手法は、今から60年以上も前の1950年代にジョー・マッカーシー上院議員が使った手である。

記者たちに、国務省に巣食っている共産党員とその支持者のリストが間もなく手に入る、明後日には発表できるだろう語り、中身のない予告記事を書かせて世間の関心をあおった。次の発表の日が来ると、ちょっとした支障が生じて、完璧なリストがそろっていないので、発表はあと数日後になるだろう、記者たちに語って関心を継続させ、増幅させた。マッカーシーはこのままではアメリカが共産主義者の思うままになると国民の恐怖を煽った。

記者たちはマッカーシーの言っていることを疑っていたが、世間が強い関心を持っていると思われることがらについて、上院議員が嘘をついていると書くことはできなかった。

トランプはアメリカの領土と安全をイスラム教徒やメキシコ人などから守らねばならない、アメリカの経済を慾深い中国や日本やEUから守らなくては明日のアメリカはない、と煽って大統領になった。

1950年代のアメリカのジャーナリズムはマッカーシーの全盛時代に、マッカーシーは嘘つきたと書かなかった。2017-18年のアメリカの新聞のかなりが、特にニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストが、大統領トランプは嘘つきだ、とオピニオン欄に書いている。大統領は嘘つきだと書きながらも、大統領のツイートは報道しなければならない。真偽に関わらず、大統領が語ったことはメディアで伝えられねばならない。

どこかの国の首相が、膿を出し切る、と語れば、そう語る本人がウミの親、という深刻なジョークのあることを知りつつも、それが活字なって伝えられ、音声がテレビで流されることになる。報道の中立性・客観性、ニュースとオピニオンの分離という枠組みがあるからだ。対抗手段としては、読者・視聴者がメディア・リテラシーを磨くしかない。

それはさておき、1950年代のマッカーシーの「赤狩り」で、国務省は東南アジア関係の、特にベトナムの専門家を失った。豊かな現地体験と知見、それにもとずいた将来展望を政治家に伝えることができるスぺシャリストをマッカーシーが追い払ったことが、アメリカのベトナム介入とその後の悲惨な泥沼の一因であるとする歴史家もいる。

トランプ大統領はTPPから離脱した。地球温暖化対策のパリ協定からも離脱した。イラン核合意から離脱した。中国と貿易戦争も辞せずの構えをみせている。米国大使館をイェルサレムに移すことで中東和平のプロセスを複雑にしている。彼のイスラエル寄りの姿勢がサウジアラビアをのぞく中東諸国とイランの反感を高めている。

マッカーシーが招いた混乱はアメリカのジャーナリズムと政治の陰鬱な研究材料になった。リチャード・ロービアは著書『マッカーシズム』(岩波文庫)に、マッカーシーを「アメリカが生んだもっとも天分豊かなデマゴーグ」であり「アメリカ人の心の深部にかれくらい的確、敏速に入りこむ道を心得ている政治家はいなかった」と書いている。

トランプの時代のアメリカが何を失い、何を得たか。いずれ誰かが『トランピズム』という本を書くだろう。それを楽しみに待っている。

(2018.5.10  花崎泰雄)

 

 

 

 

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テレビ朝日もアウト

2018-04-19 22:27:28 | Weblog

年配の方ならご記憶がおありだろう。かつて「キャッチ-22」という言葉が流行したことがあった。

米国の小説家ジョゼフ・ヘラーが1960年代初頭に発表した作品『Catch-22』から来ている。第2次大戦中のイタリア戦線で戦う米空軍爆撃隊のパイロットがおかれた不条理な状況――毎回命がけの操縦を迫られているパイロットが、その職務から解放されるのは死者になるか、狂気に陥るしかない。司令官は狂気の者に操縦はさせないと明言する一方で、自分が狂気であると申告すると、そういった申告ができるということは、正気であると証拠であるとして、申告を却下する――から生まれた言葉で、米国はもちろん、日本など翻訳が出版された国々で、流行語になった。

福田財務事務次官の辞任表明を受けてテレビ朝日は4月19日未明に記者会見を開き、同社職員の女性が福田氏からセクハラを受けたことを明らかにした。

その記者会見の中で、テレビ朝日の報道局長は取材の際の情報を『週刊新潮』に提供したことは問題がある、と会社の見解を示した。ということは、福田氏からセクハラをうけた社員は、同社の業務の一環として、飲食店で福田氏に密着取材していたことを認めているわけだ。

それでいて、社員が業務遂行中に取材先の高級官僚からセクハラをうけたことを上司に伝え、その事実を報道すべきだと相談したさい、上司から「報道は難しい」といわれたという。テレビ朝日は取材先の財務省に抗議さえせず、社員の女性のために何の行動もとらなかった。

テレビ朝日社員はまさにキャッチ-22的状況に置かれたのである。

だが、この社員はこの不条理を耐え忍ぶのではなく、財務省の事務方のトップが取材で顔見知りになったテレビ局の社員の女性にセクハラ発言をしたという情報を、最も効果的なメディアである週刊誌に通報した。安倍政権と財務省がスキャンダルでガタガタになっている時期なので、週刊誌にとっては棚ボタ情報だった。

「倍返し」という言葉が流行してまだそんなに時間はたっていない。テレビ朝日の社員は不快極まるセクハラ発言をした財務事務次官に一矢を報い、業務遂行中に受けたセクハラを受けた社員の人権問題に関して冷淡であった勤め先にも一矢を報い、その人権感覚の希薄さを猛省させるきっかけを作った。さらに、セクハラを受けた数多くの人々を、黙っていないで口を開きないと、呼びかけたのである。

 (2018.4.19  花崎泰雄)

 

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セクハラからパワハラへ

2018-04-17 22:25:37 | Weblog

 「浮気しようね」

「おっぱい触っていい?」

「抱きしめていい?」

週刊新潮が上記のような報道をした財務省の福田淳一事務次官のセクハラ発言は、まずは福田事務次官と発行元の新潮社との問題である。名誉棄損で新潮社を訴える準備をし、裁判に先立って福田氏が新潮社の責任者に抗議し、書かれた側と書いた側の間で、報道された事実の真偽について議論すればよい。多分それでは決着がつかないだろうから、裁判開始を急ぎ、必要とあれば法廷で被害者に証言を求めればよい。

法廷で証言する被害者の記者については、雇用先のメディアが十分なプロテクトをする必要がある。セクハラ被害者を守ると同時に、ことは報道の自由と公正の問題へと発展すること必定だからだ。報道対象となる政治家・官僚と取材するメディアとの適正な距離について、日本のジャーナリズムは無関心である。いまだに苔むした夜討ち朝駆けの手法に頼っているようだし、常時取材される政治家などはその夜討ち朝駆けを、逆に、自分に有利な状況づくりに利用している。

さて、裁判で決着を見るまでの間、福田氏を現職の事務次官にとどめ置くか、ポストから外すかは、財務大臣の判断になる。といっても、昨今は高級官僚の人事権は内閣人事局の手にあるのだが。いずれにせよ、福田氏の去就は政治判断にかかることになる。

財務大臣の麻生太郎氏は「状況がわかるように(被害者の女性が)でてこないといけない。申し出てこないとどうしようもない」と話し、女性が名乗り出ない限りセクハラを事実と認定できないという考えを示した――4月17日の毎日新聞(電子版)が伝えた。

財務省は財務省の記者クラブ加盟社に対して「福田事務次官との間で週刊誌報道に示されたようなやりとりをした女性記者の方がいらっしゃれば、調査への協力をおねがいしたい」と文書で要請している。

財務省内のセクハラ問題であれば、省内のセクハラ問題処理機関が解決することになるが、加害者と疑われている省内の人と、被害者とされる外部の人の間の調査を、加害者と疑われている人の勤め先が行なうのは尋常ではない。

たとえば、被害者と思われている記者が勤務するメディアのセクハラ問題処理機関が、財務事務次官である福田淳一氏に、週刊誌で報道されたセクハラ問題について、被害を受けたという記者の訴えだけでは不十分なので、加害者と報道されているあなたから直接お話をお伺いしたいので、一度、当方にお越し願い、できませんでしょうか、と要請したと仮定した場合、福田氏あるいはその上にいる財務大臣・麻生太郎氏はどんな返事をするだろうか?

財務省の聞き取りに協力せよという依頼は、今すぐ福田氏を更迭すれば政治的ダメージが大きすぎるという理由から、「女性が名乗り出ない限りセクハラを事実と認定できない」(毎日新聞)という時間稼ぎの茶番であり、被害者とされる人にとっては、財務大臣と財務省のパワハラである。

 

アメリカのトランプ大統領は嫌いなメディに対しては大統領会見で質問を許さなかった。同様に、記者クラブ制度をたよりに取材をしているメディアとそこの記者にとっては、名乗り出たが最後、取材上の便宜をうやうやしく拒否するという財務省の報復行為が予想されるからである。

 (2018.4.17  花崎泰雄)

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ヒラメの忖度

2018-03-27 22:14:38 | Weblog

3月27日の参議院予算委員会での丸川珠代委員と佐川宣寿証人との問答が興味深かった。

文書改ざんについて指示をめぐる問答である(産経ニュース デジタル版から)。

丸川委員「佐川さん、あるいは理財局に対して安倍総理からの指示はありませんでしたね」

佐川氏「ございませんでした」

丸川氏「安倍総理夫人からの指示もありませんでしたね」

佐川氏「ございませんでした」

丸川氏「官房長官、官房副長官、総理秘書官からの指示はありましたか」

佐川氏「ございませんでした」

丸川氏「安倍総理の秘書官からの指示はありましたか」

佐川氏「ございませんでした」

丸川氏「ここまでの証言踏まえますと、まず官邸からの指示はなかったということになります。間違いありませんか」

佐川氏「間違いございません」

佐川証人が歯切れよく答えたのはこの部分だけで、その他肝心の部分は、刑事訴追の恐れを理由に、証言を拒否した。

自民党幹部はこの日の佐川証言で、森友問題に関する安倍政権への疑惑はすっかり晴れたと言っている。野党は反対に、疑惑はますます深まったと言っている。国会前では市民が安倍政権への抗議集会を開いている。政治はこうでなくては面白くない。

27日午前の参議院、午後の衆議院の証人喚問中継を見ていて、佐川氏が自らを悪者にして政治の中枢部にいる人たちを守った、と感じた人は多かっただろう。上ばかり見ているヒラメ官僚の悲哀をひしひしと感じた現職の公務員もいたことだろう。

だが、ヒラメは官僚だけではない。

指示があったかどうか問うにあたっての、国会議員の丸川珠代氏の言葉遣いをよく見ていただきたい。

安倍首相や首相夫人の支持については「ありませんでしたね」と尋ねた。

一方で、官房長官・官房副長官・総理秘書官からの支持については「ありましたか」と尋ねている。

丸川珠代氏は安倍晋三氏と同じ自民党の派閥に属し、安倍首相に引きたてられて大臣のポストを与えられたこともある。

そういうことで、丸川氏の「ありませんでしたね」「ございませんでした」という問答に、ヒラメ官僚とヒラメ議員の面影を見て、なんだかなあ、と思った人が多かったのではないかと推察する。

 

(2018.3.27 花崎泰雄)

 

 

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大叔父と又甥

2018-03-10 20:56:36 | Weblog

カール・マルクスは『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』の冒頭で、世界史上の大事件と大人物は2度現れると、ヘーゲルを引いて言った。さらに、マルクスは皮肉っぽく「最初は悲劇として2度目は茶番として」とヘーゲルは付け加えるのを忘れた、と書いた。悲劇と茶番の一例に「伯父のかわりに甥」(ナポレオン1世とその甥のルイ・ボナパルト)をあげた。

今の日本だと、さしずめ「大叔父と又甥」ということになろうか。大叔父こと佐藤栄作首相(当時)は1971年のニクソン訪中が、日本に対する事前の打診抜きの頭越しで決定されたことに驚いて腰をぬかした。キッシンジャーが密かに中国にわたり事前準備をしていることを日本政府は知らなかった。日本政府だけでなく各国政府も米国のメディアも気付かなかった。

ニクソンが大統領を辞任した1974年、筆者はワシントンD.C.で米国の通信社のホワイトハウス担当記者から、「そのころキッシンジャーがしきりにジョージタウンのチャイニーズ・レストランに通っているという話を聞いていた。そのときその理由を追いかけていたら、大スクープにたどりつけたかも知れなかった」という話を聞いたことがある。

イヴァンカ・トランプ補佐官はピョンチャン・オリンピックの式典に出たが、その前後に彼女が韓国やワシントンD.C.郊外の冷麺ショップに出入りしたという話も聞かないし、大統領の側近が密かにピョンヤンに入ったという噂も聞かなかった。

にもかかわらず、あれだけ米国に尽してきた安倍政権の頭越しに、アメリカの大統領は北朝鮮の最高指導者と会うと声明をだした。大叔父も又甥も、アメリカの対外姿勢のドライさに傷ついたことだろう。ビックリ仰天、佐藤栄作の又甥こと安倍晋三首相もあわてて、4月にホワイトハウスを訪れると発表した。

ほんの最近まで「ロケットマン」、「気のふれたアメリカの老いぼれ」といがみあっていた同士が突如「会いましょう」「いいですよ」という間柄になるとは、安倍政権の誰もが想像が出来なかったことだろう。「アメリカ・ファースト」の男は、どうもADHD(注意欠如多動性障害)の傾向がみられるので、ゴルフコースで会った時のように、4月も安倍首相に注意を払ってくれるかどうか。

米国のメディアは米朝首脳会談について賛否両論を伝えている。アメリカ大統領としての利点は、北朝鮮から長距離ミサイルを米国に向けて飛ばさないと確約をとれば、今年の中間選挙に向けてのポイント稼ぎになり、北朝鮮と面と向かって対話する初めての米国大統領という強力なイメージがつくれることだ。そうすればロシア疑惑やポルノ女優との交友関係問題を煙に巻くことができるかもしれないとトランプ大統領は踏んでいるのかもしれない。

北朝鮮は米国大統領と直々に対話することが大きなポイントになる。北朝鮮の目標は、北朝鮮を国家としてアメリカに認めさせ、さらに米国と平和条約を結び、現体制存続の保証を求めることにある。国民の多くを飢餓線上におきながら核とミサイルの製造に励んだのも、アメリカを直接対話に引っ張り出すためだった。

米国大統領は北朝鮮に対する圧力が奏功して、キム・ジョンウンが耐えかねて対話路線に転じたという風に説明し、北朝鮮は核とミサイルがアメリカを会談の場に呼び出したと説明するだろう。

さて、会談で何を語り合い、どんな取引をするのか。誰にもわからない。ドナルド・トランプとキム・ジョンウン。世界の国家指導者で最もその言動が予言しがたい2人の会談だから、やってみてからのお楽しみ、だろう。

今回の米朝首脳会談のおぜん立ては韓国と北朝鮮とアメリカで、日本は蚊帳の外だった。北朝鮮が韓国とアメリカに向けてミサイルを発射しないと約束するようなことになった場合、そこに「日本」を入れてもらえるかどうか。その件については日本が北朝鮮と話し合ってくれ――こんな非情な結果にはよもやなるまいが。

(2018.3.10  花崎泰雄)

 

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任期というもの

2018-03-05 22:50:43 | Weblog

3月5日、中国の全国人民代表大会が始まった。国家主席の2期10年の任期の制限を廃止するための憲法の改正案が提出された。

習近平国家主席は中国共産党中央委員会総書記であり、中国共産党中央軍事委員会主席でもある。党のポジションについては任期に制限はない。国家主席と党総書記と党中央軍事委員会主席は通常同一人物が兼務する。

中国国家主席の任期制限は毛沢東の個人支配による失政を反省して設けられたが、支配者というものは死ぬまで支配者でいたいものらしい。古代アテネ政治家ソロンの名が高いのも、やるべきことをやったあと、さっさと職を退いたからだ。この賢人にあやかって米国では連邦議会の議員を「ソロン」と呼んでいるが、呼ばれるほどの賢人は、さて、どのくらいいるのだろうか。

米国のトランプ大統領は自身が所有するフロリダのリゾートでのスピーチで「中国は偉大だ。習氏は偉大な紳士だ。彼は今や終身国家主席だ。素晴らしい。いつか我々も挑戦してみるか」と語った、とCNNが伝えた。100パーセントの冗談でもなさそうだ。

日本国の首相の任期については制限がない。自民党が党総裁の任期をそれまでの連続2期6年から、連続3期9年にする党則改正を、昨年行った。2018年に自民党総裁連続2期6年の満期が来る安倍晋三氏に内閣総理大臣を続けさせるのが目的である。

自民党も中国全人代と似た上意下達組織なのだろう、冗談抜きで。

 

(2018.3.5  花崎泰雄)

 

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鞭に代えて銃

2018-02-22 22:44:55 | Weblog

1990年代のことだったと記憶している。シンガポールで駐車中の車にスプレーで落書きをしたアメリカ人の男子高校生が、シンガポールの裁判所で鞭うちの刑を言い渡されたことがあった。当時のビル・クリントン米大統領が野蛮な鞭うち刑をやめるようシンガポールに要請した。だが、シンガポールは、野蛮な刑というがこの刑は植民地時代に宗主国だったイギリスが持ちこんだものだと反論。鞭声粛々と18歳をむち打った。むかしはイギリスだけでなく、日本にも「笞杖徒流死」の五刑があった。

英国では学校でも鞭打ちが行われた。公立・私立を問わず、お行儀の悪い生徒(主として男子)を校長や教師が鞭打っていた時代があった。いまでは法律によって禁じられている。

学校での銃乱射による悲劇が絶えない今の米国では、教師に鞭の代わりに銃を持たせようという気分が広がっている。新聞によると、最近乱射事件があったフロリダの高校の犠牲者の家族らがホワイトハウスを訪れてトランプ大統領と懇談。その席で、教師や学校職員に銃を持たせてはどうかという提案が出席者からあった。提案に対してトランプ大統領が賛意を表明したという。

米国の教師が銃を携行して教壇に立つようになるかどうか、まだ不明だ。銃をもった教師が教壇に立てば、銃を持つ教師の横暴から身を守るという理由で、生徒が銃を教室に持ち込むようになるかもしれない。そういえば1950年代に『暴力教室』(blackboard Jungle)というアメリカ映画がヒットしたことがあった。

(2018.2.22 花崎泰雄)

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メルケル政権の脱原発政策の理念

2018-02-08 21:21:21 | Weblog

[ドイツ=小野フェラー雅美 2018.2.8]

日本版ウィキペディアは東日本大震災を次のように説明している。「2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害およびこれに伴う福島第一発電所事故による災害である」。福島第一原発の事故は、大規模な地震災害がもたらした併発事故という括りがされている。ドイツでは一般に「フクシマにおける原子力大災」と呼ばれ、地震という自然災害より人災である原発災害に焦点が当てられた表現となっている。

2011年3月11日に福島で起った原発災害の直後に行われたドイツの州議会選挙の結果は、福島の事故の影響を大きく受けた。3月11日の災禍の前に選挙があったハンブルクでは前回の結果と比べて大きな変化は見られなかったが、ザクセン・アンハルト(3月20日)、ラインランド・プファルツとバーデン・ヴュルテンベルク(3月27日)、ブレーメン(5月22日)では、以前から脱原発を謳っていた緑の党が過去最高の票を集めた。

その結果、バイエルン州と共にドイツ経済を牽引しているバーデン・ヴュルテンベルク州(ダイムラー、ポルシェ、アウディなど自動車産業で潤う)では州政府の政権交代に発展した。緑の党と社民党(SDP)との連立政権が成立し、キリスト教民主同盟(CDU)とドイツ自民党(FDP)は与党から野党に回った。

International Journal for Nuclear Powerの統計(2016年12月31日現在)では、ドイツは世界で8番目の8基の発電用原子炉を持っていた。粉塵や二酸化炭素排出の問題を持つ火力発電に比べて「きれいなエネルギー」といわれていた原子力発電に対し、ドイツでは1970年代から懐疑的なグループによる反原発運動が起こっていた。それに拍車をかけたのが1986年のチェルノブイリ原発事故だ。中南部ドイツも汚染され、子どもを砂場で遊ばせないよう指導があり、雨の日の外出を控えるよう警報が出された。その年最初の子が生れた筆者を含め母乳の自主的検査も行われた。ドイツでは1kgにつき600ベクレル以上のセシウム137を持つ食品の流通が禁じられている。南ドイツでは30年以上を経た今でも茸や根菜類を食す猪肉のセシウム汚染調査が続けられ、現在も破棄される猟獣がある。

実は、ドイツでの脱原発の動きは2011年から始まったわけではない。1998年に成立した緑の党とドイツ社民党(SPD)との連立政権下、シュレーダー首相(SPD)が選挙で公約していた「脱原発」を実行に移し、2000年には各電力供給会社と政府が徐々に電力の原発依存率を落とすことに合意。原発停止の段取りは時期と量とで一応法制化された。

2003年と2005年に大手の原発2基が停止された。その後、2005年のCDUとCSU(キリスト教社会同盟)とSPDによる第1次メルケル大連立政権と2009年の第2次メルケル連立政権(CDU/CSU+FDP)は、脱原発の方向は堅持するも、2010年に既存の原発の稼動延長を決定した。この決定をめぐって国中で議論が白熱化した。その只中にフクシマ原発事故が起った。

2011年の福島における原子力大災は、第2次メルケル政権の原子力発電政策を180度転換させた。2011年3月のフクシマの惨事以来一時休止されていたドイツの8基は、同年夏には完全停止された。残る8基の原発も2017年(1基)、2019年(1基)、2021年(3基)、2022年(3基)と、原子炉が0基となるまでの原発停止年が「原子力基本法」第7条第1項で法的に定められた。同時に、各地方自治体に対して、輸入電力も含め、ドイツで使用される電力を原発由来でない「再生可能」エネルギーへ移行させることが指示された。

ライプチヒ大学で物理学博士号を取得しているアンゲラ・メルケル氏が2011年6月9日に行った施政演説は、本題に入る前に、3ヵ月前に起こった福島大災を詳細に語り、日本の被災者への心からの見舞いの言葉で始まった。その演説でメルケル氏は脱原発の理念を明確に示した。

「日本のような工業大国でさえ、原子力の持つリスクを完全に制御できない……無に等しかった確率の『残存リスク』が起きてしまった、という事実を認める者は、政策決定の前提である評価を新たにやり直すべきであり……リスク予想、確率分析の信頼性が根底から崩れた今、政府は何世代にも亘る大きな災いをもたらすリスクを宿す原発に将来の国民の運命を委ねられない」

「先秋、エネルギー協議の際、原発稼動延長に力を入れた私自身が、議会ではっきり言えることは、フクシマが私の原発への態度を根底から変えた、ということです」とメルケル氏は強調し、段階的脱原発詳細への決議の経緯、電力供給網の近代化を含めた代替エネルギーへの移行過程とそれに必要な監査システムの設置や、並行した(個人家屋も含めた)建築分野での省エネ建築への移行などを詳しく述べた。その一部は以下の通り。

①政府は原子炉安全委員会に全原発について詳細な安全試験を委託し、安全なエネルギー供給のための倫理委員会を発足させ、両委員会の結果報告書を基に、8件の法案と条例を議決した。

②原子力基本法の変更。ドイツでの原子力発電利用は2022年に終わる。

③8基の稼動停止直後のエネルギー供給の保障、電力の安定した供給のため発電拠点に十分な化石エネルギーを予備。

④当座2回の冬季期間のみ、停止された8基の内の1基を予備として稼動可能な態勢に置く。これもフクシマ大災後の反応から学んだことであり、人間が判断して起こりえない事態が想定されるとしても、万一の事態に備える態勢は敷いておかなければならない。

⑤将来のエネルギー供給の中心は再生可能エネルギーであるべきだ。2050年までに再生可能エネルギーの割合を60%、電力では80%を目標とする。2020年までに消費電力の最低35%を、風力、太陽、水その他の再生可能なエネルギー源から賄う。

⑥野心的な再生可能エネルギーの増設やそれに必要な供給網の拡充とともに、国内全体のエネルギー効率を上げなければならない。その中心にあるのが、個人家屋を含めた建物の分野だ。ドイツのエネルギーの40%がそこで消費され、それは全CO2排出の3分の1を占める。2020年までにこの分野の電力消費を10%落とすことを目標とする。


ドイツ政府による脱原発は、その環境保護目標と切っても切れない縁をもつ。それは、2020年までにドイツの地球温暖化ガス排気量を1990年の値の40%まで落とす、という目標だ。8基の原発が停止された2011年末以降、化石エネルギーなどを用いた火力発電による代替エネルギーの顕著な拡大は見られなかった。これは、再生可能エネルギー(風力や太陽光を用いた電力)を代替とする政策が今の所功を奏している結果といえる。

また、2011年、2012年にフランスなどからの輸入電力が増加した形跡もない。2011年末の8基停止の直後、すなわち2012年の初めは、ふつう暖房に電力が必要となる冬場で、前年、前々年の同時期比の再生可能エネルギー生産は42%増となった。これは、再生可能エネルギーへの切り替えがスムーズに行われた結果と見てよい。

ちなみにドイツの電力は自国消費量を大きく上回って生産され、2016年には51テラワット/時を輸出した。輸出先はオランダ、オーストリア、スイスなど。再生エネルギーと言いつつフランスから原発電力を買っているではないか、ということをよく聞く。このデータは輸入量のプラス・マイナスの結果なので、無論買っている部分もあるのだが、全体像を見ると原発電力で車を生産している、ということにはならないようだ。

筆者は2006年にEUの電力事情を視察に来た東京電力幹部と仕事をしたのだが、EU各国間の電力の売買には既に長い歴史があり、各国は夏時間などのメリットを使って、より安価な電力を売り買いし工業生産に必要な電力などを賄っている。

2010年と2017年の統計を比較すると、エコ電力(風力、水力、太陽光、バイオマス)の割合は予定通り増え、これからの大勢を一応示唆している。

 

                                                                   2010年                               2017年

  電力生産総量(テラワット/時)              605                                     654

  内再生可能エネルギー                                  17 %                                 31.1 %

  原子力発電                                                 22%                                  11.6 %

  火力発電石炭                                               19 %                                 14.4 %

  火力発電褐炭                                               23 %                                  22.6 %

  火力発電天然ガス                                         13 %                                  13.1 %

 

(細かいことだが、天然ガスについてはメルケル政権前の時代にパイプラインを引いた際のロシアとの買い付け協定があり、早急に需要を落とせない背景がある)

 

メルケル氏が繰り返し強調している点は、2050年までに、輸入電力をふくめ80%の使用電力の由来を上記エコ電力で賄う国にもってゆくことだ。

停止と同時に原発の解体撤去作業が始まる。これがなかなかな問題だ。GE特許により建てられたドイツ最古のカール原発の解体撤去には稼動年数25年を大きく上回る34年を要し、建設費を大幅に上回る1.5億ユーロを費やした。ドイツの「原子力基本法」は、廃棄証明なしの原発運営を許さない。「廃棄証明」とは、稼動停止後最低30年かかる燃料棒の冷却と温度管理や除染を含めた完全廃棄と最終保管までの運営への州管轄当局の許可を指す。電力会社には「完全停止後の」廃棄手順の詳細な遂行と報告が義務付けられている。

作業は汚染建屋の破砕と破砕物質の除染と埋立だが、問題は大きく3つある。①小型ショベルカーの「遠隔操作」(人は乗っていない)による解体では遠隔操作作業員や周辺住民の健康への配慮、汚染チェックは必須②複雑で時間の掛る除染作業、外界を汚染物質の影響から遮断するため、停止された建屋をコンクリートなどのドーム状の建物で覆い、その中で行われることが多い③除染済み建設廃棄物の最終保管地がない。誘致した自治体での仮保管管理が長期化する。燃料棒は完全停止後も冷却されねばならず、その温度制御を含め生物の健康に害を与える放射性物質は厳密に管理され続けられねばならない。セシウム137の場合は半減期である30余年間、テクネチウム99は21万年、ネプツニウム237は210万年かかる。

低価格な選択肢が別にある。建物全体をコンクリートで封じ込める、チェルノブイリで採られた選択だ。この選択によると、セシウム137に関しては30年以上に亘る漏れなどの厳密な点検を必要とし、半減までの状態の注視もあり、最低一世代分の期間、居住不可能な地域ができる。

さきにふれたカール原発の解体撤去では、180万トンの除染済み建設廃棄物がグライフスヴァルト原発の敷地内に一時保管された。これは東西ドイツ合併前の東独が持っていた旧式な原発で、1989年の合併直後のチェックの結果停止されたもの。旧西独の原発操業電力会社はこの解体撤去費用を稼働中に蓄えることを義務付けられていたが、国で運営していた旧東独にはその蓄えがなかった。日本はどうなのだろう?

2017年停止のバイエルン州の一基は、34年稼動後、去年12月末に完全停止され、電力網から外された。操業電力会社は州の管轄当局に停止後の核燃料棒の冷却、温度制御方法、除染・廃棄手順など、放射性物質汚染在庫品目録を含めた詳細にわたる「停止コンセプト」を提出し、登録された外部第三業者による汚染検査も含め、許可管轄局下に後始末をしなければならない。

2011年6月のメルケル演説後、筆者は、南ドイツの原発拠点に隣接する市で、市長による2012年の新年の施政演説を聞いた。1万人弱の小さな市ながら、40%あった隣接市原発由来の電力を半年で0にできた、と市長は言った。筆者は、その40%の電力の1/3を、耕地に太陽光発電パネルを立てることで賄った農場主を知っている。電力消費量の多い重工業を抱える都市には同様な時期内の移行は難しいだろうが、各地方自治体に自治体が必要とする電力の由来変更を課する、という政策は成功していると思う。

一方で、大手電力会社は政府を相手取って何億ユーロにも上る訴訟を起した。2010年に政府が決定した原発運転延期路線をもとに各電力会社は稼動続行の方向で投資を進めていた。それが2011年の脱原発への方向転換により覆され、見込まれていた売上の達成も、撤去のための費用積立もしえなかった、という。これには理がある。この訴訟の決着はまだついていない。

2017年以降、ドイツ発のディーゼル・スキャンダルを通し、自動車産業全体が電気自動車への移行を目指し始めた。限られた化石エネルギーはいつか代替を必要としていたが、電力供給容量が今までの計算では合わなくなる可能性が出てきた。それを踏まえ、電力供給達成目標のハードルはより高くなりそうだ。

国際的な工業立国として脱原発を目指すドイツは政治的にも経済的にも先駆的役割を果たしており、その先行きは各国の注視の的となっている。ドイツの選択のあと、ヨーロッパで同じ選択で続いたのはベルギー(2025年完全停止)とスイス(2034年)のみ。原発大国フランスはその路線を堅持しているが、75%あった原発由来の電力供給量を2025年までに50%まで落とすことを2014年の10月に決定している。

現在、主要工業国のひとつと看做されているドイツが、その生産性と気候環境保護を維持しつつ、原発依存エネルギーをゼロにもっていけるかどうか、世界から注目されている。

 

 <参考文献>

http://www.sueddeutsche.de/politik/regierungserklaerung-zur-energiewende-merkel-erklaert-den-atomausstieg-zur-herkulesaufgabe-1.1106773

https://www.bundesregierung.de/ContentArchiv/DE/Archiv17/Regierungserklaerung/2011/2011-06-09-merkel-energie-zukunft.html

https://de.statista.com/statistik/daten/studie/153533/umfrage/stromimportsaldo-von-deutschland-seit-1990/

http://www.kas.de/wf/doc/kas_30751-544-1-30.pdf?151210102433

https://www.financescout24.de/wissen/ratgeber/atomausstieg

https://www.bfs.de/DE/themen/ion/umwelt/lebensmittel/pilze-wildbret/pilze-wildbret.html

https://www.bundesregierung.de/Content/DE/Artikel/2017/12/2017-12-29-akw-gundremmingen.html

http://www.klimapark-rietberg.de/?p=1076

https://www.heise.de/newsticker/meldung/Deutlich-mehr-Strom-kam-2017-aus-erneuerbaren-Energien-3924755.html

 

 

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