<ひが~し>
NHKニュースをNHKのサイトから以下に原文通り引用する。
東京都の石原知事は、(2012年2月)24日の会見で、憲法についての考え方と新党が結成された場合の姿勢について話し、「占領のために作られた憲法と称する法律体系を続けることは、歴史的にも例がなく正当性がない。時の政府が破棄して新しい憲法を即座に作ったらいい。改正なんて手間取る」と述べ、みずからが参加して保守勢力を結集した新党が結成された場合、憲法の破棄に取り組みたいという考えを示しました。
引用したこのニュースの笑点が、日本国憲法は「憲法と称する法律体系」にすぎないので、「時の政府が(現行憲法を)破棄して新しい憲法を即座につくったらいい」というくだりにあることは言わずもがなであろう。特別職地方公務員である石原の大いなるナンセンスである(憲法第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ)。日本国憲法の変更に関する手続きは憲法が定めている。議会の発議と国民投票である。憲法に定められた手続き以外の憲法変更の方法としては、クーデターが一つの方法だろう。
改正など手間取る、破棄だ、と叫んだ時、石原は我が身をゴルディアスの結び目を剣で断ち切ったアレクサンドロスと同一化させていたのだろうか。それとも、歳はとってもシンタローの○○破り、ということなのだろうか。石原が例のお得意芸・銭湯的「お笑い」を記者相手に演じただけと失笑してすませるには、ちょっと物騒すぎる話だ。
東京都知事には頭のゼンマイのまき直しを勧める。
<に~し>
同じくNHKサイトのニュースから以下に原文を引用する。
大阪維新の会の代表を務める橋下市長は、(2012年2月)24日夜、記者団に対し、憲法9条について、「集団的自衛権をはじめとする、ありとあらゆる安全保障の考え方の根源は、憲法9条の価値観にあり、国民がどういう方向を取るのか確定しないと、安全保障の議論はできない」と、述べました。そのうえで、「憲法9条については、一定期間を区切って大議論し、国民投票で右か左か方向性を示すことを、日本人全体で決めなければならないときにきている」と述べ、今後の日本の安全保障政策を決めるためにも、憲法9条の改正の是非を問う国民投票を実施すべきだという考えを明らかにしました。
以上引用したNHKニュースの笑点は「憲法9条の改正の是非を問う国民投票」という橋下の表現法である。
橋下は憲法改正の発議を容易にするために、アメリカ合衆国型の発議の条件3分の2の賛成から、フランス型の2分の1の賛成にする憲法改正を唱えている。国会レベルでは2011年6月、与野党の有志議員が「憲法96条改正を目指す議員連盟」を立ち上げている。
したがって、状況から推察すれば、憲法9条や96条の変更の発議と国民投票の実施を、期間を定めて行おうというのが橋下提案であろうか?
ところで、橋下はツイッターが好きらしくいろいろ書き込んでいる。例えば、
「世界では自らの命を落としてでも難題に立ち向かわなければならない事態が多数ある。しかし、日本では、震災直後にあれだけ『頑張ろう日本』「頑張ろう東北」『絆』と叫ばれていたのに、がれき処理になったら一斉に拒絶。全ては憲法9条が原因だと思っています」(注1)
「簡単に言えば、憲法9条は色々な政治公約の一つとして選挙で決めるのではなく、憲法9条だけを取り上げる国民投票で決めましょうということです。この問題はある種の白紙委任で政治家に委ねるわけにはいかないと思う」
と、橋本がツイッターに書いているので、「憲法9条の改正の是非を問う国民投票」とは、「国会で発議された憲法9条の個別具体的な改正案についての国民投票ではなく、そもそも9条を変更すること自体について是非を問う」国民投票を提案しているようにも解釈できる。
現在の国民投票法は国会が発議した憲法改正案を承認するかどうかを国民に問うための法律である。発議をうけて国民投票がおこなわれる。
「憲法9条の個別具体的な改正案ではなく、そもそも9条を変更すること自体について是非を問う」国民投票の場合、新たな「国民投票法」を制定する必要がある。同時に、その国民投票の結果の法的拘束力についても定める必要が出てくる。
仮にこの国民投票で9条の変更を「非」とする結果が出た場合、「9条は変更できない」とする憲法改正案を発議、国民投票し、反対に「是」と出た場合、具体的な改正条文を発議し、国民投票に承認を求める、という手順になるのだろうか。
橋下のアイディアがきちんと整理されていないのは、ツイッターに思いつきを書きとばし、それをそのまま記者会見でべらべらしゃべっているからだ。ツイッターはものごとを筋道立てて考えるには適当なメディアとは言えない。あなた、携帯のメールでヴィトゲンシュタインを論じることができますか?
西の方、橋下発言のいまひとつの笑点は彼がツイッターに書いた
「この問題はある種の白紙委任で政治家に委ねるわけにはいかないと思う」
というくだりである。
①この問題(憲法9条)はある種の白紙委任で政治家に委ねるわけにはいかないと思う(橋下のツイッター書き込み)
②「議論はし尽くすけれども、最後は決定しなければならない。多様な価値観を認めれば認めるほど決定する仕組みが必要になる。それが『決定できる民主主義』です。有権者が選んだ人間に決定権を与える。それが選挙だと思います」 「弁護士は委任契約書に書いてあることだけしかやってはいけないけれど、政治家はそうじゃない。すべてをマニフェストに掲げて有権者に提起するのは無理です。あんなに政策を具体的に並べて政治家の裁量の範囲を狭くしたら、政治なんかできないですよ。選挙では国民に大きな方向性を示して訴える。ある種の白紙委任なんですよ」(朝日新聞のインタビューでの橋下発言)
どっちやねん? え、市長はん、弁護士はん。
注1 余談だが、橋下のこの書き込みはツイッターの世界では大いに受けているらしい。「あたいの胸が小さいのも全ては憲法9条が原因だと思っています」「AIJが2000億円を損失したのも全ては憲法9条が原因だと思っています」「オレの頭の毛が薄いのも全ては憲法9条が原因だと思っています」などのナンセンスごっこでにぎわっている。
(2012.2.25 花崎泰雄)