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news commentary

国会が始まった

2024-01-30 18:40:11 | 政治

日本国の2024年度予算案を審議する通常国会が1月26日に召集された。

26日は開会式だけ。27・28日の土・日を挟んで29日から実質的な論議が始まった。これまでの通常国会は開会式のあと、首相の施政方針演説、各党の代表質問、そののちに予算委員会での審議が始まるのが通例だった。

こんどの国会では、施政方針演説に先立って、特別に予算委員会の議論があった。テーマは自民党派閥のパーティー券をめぐる裏金問題だ。この問題では何人かの議員が逮捕されたり起訴されたりしている。メディアが好きなスキャンダル報道もあって、自民党の派閥の多くが派閥解散を宣言した。うちは何もうしろぐらいことをしていない、解散する理由はないと突っぱねたのは麻生派だけだ。麻生太郎氏はその政治的発言のS//N比(政治的なシグナルであるSと政治的な雑音であるノイズ)が雑音の方に大きくずれていることで有名な議員である。メディアは彼の政治的シグナルは小さく、ノイズを大きく伝える。このようないきさつから、自民党執行部は首相の施政方針演説にさきがけて、派閥と裏金の問題を質す予算委員会を開くことに反対するだけの力は残っていなかった。

29日に開かれた衆議院と参議院の予算委員会で、岸田首相は①連座制の導入について自民党としての考えをまとめたい②政治活動費の効果については自民党としても真摯に対応したい、などのぬらりくらりの瓢箪鯰的答弁を重ねるだけだった。

30日は岸田首相が施政方針演説を行った。岸田首相の演説は、一言で評すなら、先送りできない課題のリストアップだった。課題のリストアップは担当省庁が行い、それを官邸のスタッフが取捨し、さいごに首相がメリハリをつけるのだが、この日の岸田演説は一覧表の朗読に終わった。どちらの方向へ、どのような手法で、問題の可決をはかるのかを示すのが、施政方針だ。それをベースにして政党が議論を尽くすのが国会の仕事なのに、岸田演説には、よろずのことについて真摯に対応したいという心構えの表明しかなかった。

家業として職を継いだけの自民党国会議員と、野心につき動かされて散り散りになった野党が演じる不毛な国会劇をすでに長い間見続けてきた。

(2024.1.30 花崎泰雄)

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さて、これからだ

2024-01-20 22:36:50 | 政治

通常国会が1月26日に召集される。

26日は金曜日で開会式だけ。29日の月曜日には自民党派閥の政治資金パーティーに関わるスキャンダルについて――品良く言うと政治とカネをめぐる問題で――予算委員会が集中審議をする予定になっている。その審議が終わったあと、30日に施政方針演説が行われる。前例がない、異様な国会の幕開けになる。

自民党が長期にわたって政権を握り続けた。その間に、日本の生産性は落ちた。賃金が下がり続けた。高等教育の予算が削られた。たまったのは国債残高と企業の内部留保だけである。過去の遺産を食いつぶすような経済になった。GDPでドイツに抜かれた。

たまらず岸田首相が「新しい資本主義」の構築を叫んだ。しかし、彼が言った新しい資本主義とはいかなるものか説明できる人はいない。おそらく岸田氏本人もご存じないのだろう。サッチャリズム、レーガノミックス、アベノミックス、と同じような中身のないネーミングで世間をけむに巻こうとしたのだ。日本は資本主義デモクラシーを標榜する国だ。新しい資本主義は新しいデモクラシーを生むのだろうか。

伝えられる自民党派閥のパーティー券売上の還流や中抜きは、日本の保守政治家の下劣な金銭感覚――品のない言い方をすると日本の前近代のまつりごとの恥部を世界にさらけだした。このまま放置すると、少なからぬ政治家たちがまたまた同じことを繰り返すだろう。何時まで恥の上塗りを続けるのだろうか。

パーティー券売りは祝い事ではなく政治献金集めだからこれを禁止する。政治献金は個人だけに認める。現金手渡しはやめさせる。銀行振り込みに限定する。政党や政治家が使った政治資金の報告書には領収書の添付を義務付ける。報告書は議員の名義で提出を求め、これを特別の監査機関で検討する。違反した議員は裁判にかける。公民権停止によって一定期間、そのような人物を政治から遠ざける。せめてその程度の制度整備はやってもらいたい。

自民党は還流に溺れ、いまや政治的に漂流している。与党としての責任上、来年度予算は成立させなければならない。自民党のオウンゴールで生まれた好機である。これを機会に政権交代に向かって攻めきれないような野党なら、政党としての存在理由がない。そもそもあれだけのスキャンダルを暴露された政党は、政治の常識からいえば、自ら下野するのがせめても良識なのだから。

今月末からの国会中継が楽しみだ。

(2024.1.20 花崎泰雄)

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台湾の選挙結果

2024-01-15 23:29:15 | 国際

2023年の暮れ、北朝鮮のキム・ジョンウン労働党総書記が、韓国は統一の対象から敵対的な交戦国になった、との認識を公にした。朝鮮戦争で戦った敵同士で、現在は長い休戦ラインをはさんでにらみ合う仲だ。再び砲火を交え、相手を屈服させて統一する以外に見通しが立たない現在、統一の対象と交戦の相手という認識には大きな食い違はない。ただ、北朝鮮にとって韓国は戦争の対象国であるという言い方には、矢継ぎ早にミサイルを打ち上げ、ロシアに兵器を融通している北朝鮮の血気盛んぶりが滲んでいる。あるいは、こういう言い方で国民を緊張させる必要があるほど、民の生活の困窮が切羽詰まっている可能性もある。

中国は、台湾は中国の不可分な一部であり、台湾問題は中国の内政問題であるという。諸外国が台湾問題に口をはさむことに神経質になっている。台湾問題で譲歩の姿勢を見せれば、チベット族やウイグル族を元気づけることになり、それが中国共産党指導部のヒエラルキーを揺るがすことになり、ひいては最高指導者の権力の陰りにつながりかねないと心配している。

現在の中国の富は、一党制による強引な指導と、安い労働力を求めて中国に進出した外国資本・技術の合作である。権威主義政権下で人民を抑え込んで達成した豊かさだった。したがって一足先に豊かになっていた香港に対する仕打ちは、西欧風の政治プロセスになれていた香港市民にとっては、迷惑なことでしかなかった。それをちょっと離れた台湾から見ていた台湾市民は、香港の悪夢が台湾で繰り返されることを恐れた。

イギリス下院の外務委員会が2023年8月に公にした報告書の中で、台湾は独立国としての要件のほぼすべてを持っている、と見解を述べた。報告書は次のように述べていた。①台湾はすでに独立国家である②領土と領民を持ち、政府を持ち、諸外国と外交関係を結ぶ能力を持っている③台湾に欠けるものはより広範な国際的認知だけである。何をいまさら、という感じの認識である。台湾は中国を代表して国連の常任理事国だった。中国が台湾にとって代わって代表権を獲得、常任理事国になったのは1971年の事である。

国共内戦で敗北した蒋介石と国民党軍が台湾に逃げ込んできた。1949年の事である。蒋介石の抑圧に耐え、台湾の人たちは民主的な政治制度を築きあげた。そのような民主化のモデルが権威主義的な中国に飲み込まれるのはもったいない気がする。

中国の指導部は中国と台湾の統一は歴史的必然であるというが、現在の台湾人にとって、歴史的必然よりも、豊かな経済生活と個人の自由を踏みにじらない社会の存続が優先する。

中国に対して距離を置こうとする頼清徳氏の総統選勝利と、立法院選挙での民進党の過半数割れが興味深い。中国とは距離を置き、同時に蔡英文政権下の内政への不満が現れた選挙となった。

(2024.1.15 花崎泰雄)

 

 

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台湾総統選挙

2024-01-08 18:44:51 | 国際

今週末の1月13日土曜日は台湾総統選挙の投開票日である。民進党の頼清徳氏が、一歩リード、国民党の侯友宜氏と民衆党の柯文哲氏が追っている。世評ではそういう観測が流れている。

朝日新聞の1月8日付朝刊が総統選挙の特集を組み、状況を伝えている。これといって息をのむような驚きはないが、小さく添えられた「有権者の関心事は?」という豆データが面白かった。昨年12月6日に発表された台湾メディア『鋒燦』の調査データである。①調査対象者の74パーセントが「経済」に関心があると答え、②42パーセントが「内政」、③中台問題と答えた人は39パーセントだった。

2023年は中国がいつ台湾に武力侵攻するかで米国発(主として米軍筋)の情報が世界を駆け回った。そらきたとばかりに、日本の防衛筋は自衛隊を南西にシフトさせ、アメリカから兵器を買うための予算増を発表した。朝鮮戦争を機に日本の戦後復興が軌道に乗り、ベトナム戦争が韓国経済を加速させたという朧げな記憶をたよりに、台湾危機でひと儲けし、それが右肩下がりの日本経済のためのカンフル注射になればなあ、と淡い期待を持つ資本とそのとりまきの政治家が「台湾有事は日本の有事」と騒ぎ出した。「ドナルド・トランプはアメリカの民主主義の破壊者だ。アメリカの民主主義が壊れると、日本の民主主義も崩壊する」などとうわごとを言う政治家は日本といえども少ないだろう。票も寄付もふえないから。

それを思うと、「まず経済、次に内政、それから台中問題」とする台湾市民のさめた感覚が新鮮に感じられる。習近平の時代はやがて終わる。それまでは大陸の情勢を注視し、めったなことでは妄動せず、彼が去るのをしばし待て、という気分なのだろう。

去年から中国ロケット軍の汚職騒ぎが伝えられてきた。直近のニュースでは(アメリカ発の情報だが)ロケット軍はロケットに燃料ではなく水を注入し、軍費を私していた疑いがもたれているとのこと。水鉄砲では台湾に攻め込めない。

(2024.1.8 花崎泰雄)

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