日本国の2024年度予算案を審議する通常国会が1月26日に召集された。
26日は開会式だけ。27・28日の土・日を挟んで29日から実質的な論議が始まった。これまでの通常国会は開会式のあと、首相の施政方針演説、各党の代表質問、そののちに予算委員会での審議が始まるのが通例だった。
こんどの国会では、施政方針演説に先立って、特別に予算委員会の議論があった。テーマは自民党派閥のパーティー券をめぐる裏金問題だ。この問題では何人かの議員が逮捕されたり起訴されたりしている。メディアが好きなスキャンダル報道もあって、自民党の派閥の多くが派閥解散を宣言した。うちは何もうしろぐらいことをしていない、解散する理由はないと突っぱねたのは麻生派だけだ。麻生太郎氏はその政治的発言のS//N比(政治的なシグナルであるSと政治的な雑音であるノイズ)が雑音の方に大きくずれていることで有名な議員である。メディアは彼の政治的シグナルは小さく、ノイズを大きく伝える。このようないきさつから、自民党執行部は首相の施政方針演説にさきがけて、派閥と裏金の問題を質す予算委員会を開くことに反対するだけの力は残っていなかった。
29日に開かれた衆議院と参議院の予算委員会で、岸田首相は①連座制の導入について自民党としての考えをまとめたい②政治活動費の効果については自民党としても真摯に対応したい、などのぬらりくらりの瓢箪鯰的答弁を重ねるだけだった。
30日は岸田首相が施政方針演説を行った。岸田首相の演説は、一言で評すなら、先送りできない課題のリストアップだった。課題のリストアップは担当省庁が行い、それを官邸のスタッフが取捨し、さいごに首相がメリハリをつけるのだが、この日の岸田演説は一覧表の朗読に終わった。どちらの方向へ、どのような手法で、問題の可決をはかるのかを示すのが、施政方針だ。それをベースにして政党が議論を尽くすのが国会の仕事なのに、岸田演説には、よろずのことについて真摯に対応したいという心構えの表明しかなかった。
家業として職を継いだけの自民党国会議員と、野心につき動かされて散り散りになった野党が演じる不毛な国会劇をすでに長い間見続けてきた。
(2024.1.30 花崎泰雄)