参議院で自民党とみんなの党が出した仙谷由人官房長官の問責決議が可決された。産経新聞が電子版に掲載した問責決議案の理由の全文を読んで、失笑を禁じえなかった。
問責の理由は5つだ。
その1――尖閣諸島沖中国漁船衝突事件の不適切な対応という理由。中国人船長の釈放と証拠ビデオの非公開と流出。しかしこの問題で問責するのであれば、内閣の責任者菅直人首相が対象だろうし、問責ですむ話ではなく、衆議院に内閣不信任案を出すのが筋だろう。
その2――国権の最高機関たる国会を愚弄する、暴言、失言の数々という理由。たとえば、報道に基づいて質問した議員に、自らも過去に何度もの質問をしていたことを棚に上げて「最も拙劣な質問」だと侮辱した。あの場面、この稿の筆者も見ていたが、工夫に乏しい拙劣な質問の仕方だった。
その3――メディアの取材を「盗撮」よばわりし、自衛隊の施設内での民間人の発言を規制することを認めるなどの日本国憲法に抵触する発言を繰り返したという理由。さらに自衛隊を「暴力装置」と発言した。自衛隊を「暴力装置」と表現することは、憲法9条をはじめとする日本国憲法の精神を全く理解していないということである。自民党とみんなの党はそういっているのだが、歴代自民党政権は、①自衛のための必要最小限を超えない実力を保持することを憲法第9条第2項は禁じていない②したがってこの限界の範囲内にとどまるものである限り、核兵器であれ通常兵器であれ、これを保有することは同項の禁ずるところではないと解釈してきた。ちなみに、国家による正当な暴力の独占(英語でmonopoly on legitimate violence、ドイツ語でGewaltmonopol des Staates)という概念は世界で共有されている
その4――国会同意人事案件に対する怠慢。
その5――北朝鮮による 韓国・延坪島砲撃事件のさいの危機管理能力の欠如。北朝鮮の砲撃開始が午後2時34分、菅総理は砲撃を3時半ごろ報道で知り、官房長官もほぼ同時刻に第一報を東京都内の私邸で受け取っている。総理が官邸に入ったのは午後4時45分、仙谷官房長官は同50分。総理、官房長官ともに、砲撃から2時間以上、一報を受け取ってから1時間20分経過してから官邸に入っている。このことが問責の理由になるのであれば、なぜ菅首相は問責されなかったのだろうか?
問責理由の最後がふるっている。「菅内閣発足以来、国難ともいうべき事態が続いており、内閣の要であり、実質的に内閣を取り仕切っているといわれる仙谷大臣の官房長官としての責任は極めて重大である。菅内閣では、仙谷官房長官が実質的に重要事項の決定を主導しており……仙谷官房長官が内閣の中枢に居座ったままでは、現状の打開は望むべくもない」
菅直人もずいぶんと馬鹿にされたものだ。
(2010.11.27 花崎泰雄)
問責の理由は5つだ。
その1――尖閣諸島沖中国漁船衝突事件の不適切な対応という理由。中国人船長の釈放と証拠ビデオの非公開と流出。しかしこの問題で問責するのであれば、内閣の責任者菅直人首相が対象だろうし、問責ですむ話ではなく、衆議院に内閣不信任案を出すのが筋だろう。
その2――国権の最高機関たる国会を愚弄する、暴言、失言の数々という理由。たとえば、報道に基づいて質問した議員に、自らも過去に何度もの質問をしていたことを棚に上げて「最も拙劣な質問」だと侮辱した。あの場面、この稿の筆者も見ていたが、工夫に乏しい拙劣な質問の仕方だった。
その3――メディアの取材を「盗撮」よばわりし、自衛隊の施設内での民間人の発言を規制することを認めるなどの日本国憲法に抵触する発言を繰り返したという理由。さらに自衛隊を「暴力装置」と発言した。自衛隊を「暴力装置」と表現することは、憲法9条をはじめとする日本国憲法の精神を全く理解していないということである。自民党とみんなの党はそういっているのだが、歴代自民党政権は、①自衛のための必要最小限を超えない実力を保持することを憲法第9条第2項は禁じていない②したがってこの限界の範囲内にとどまるものである限り、核兵器であれ通常兵器であれ、これを保有することは同項の禁ずるところではないと解釈してきた。ちなみに、国家による正当な暴力の独占(英語でmonopoly on legitimate violence、ドイツ語でGewaltmonopol des Staates)という概念は世界で共有されている
その4――国会同意人事案件に対する怠慢。
その5――北朝鮮による 韓国・延坪島砲撃事件のさいの危機管理能力の欠如。北朝鮮の砲撃開始が午後2時34分、菅総理は砲撃を3時半ごろ報道で知り、官房長官もほぼ同時刻に第一報を東京都内の私邸で受け取っている。総理が官邸に入ったのは午後4時45分、仙谷官房長官は同50分。総理、官房長官ともに、砲撃から2時間以上、一報を受け取ってから1時間20分経過してから官邸に入っている。このことが問責の理由になるのであれば、なぜ菅首相は問責されなかったのだろうか?
問責理由の最後がふるっている。「菅内閣発足以来、国難ともいうべき事態が続いており、内閣の要であり、実質的に内閣を取り仕切っているといわれる仙谷大臣の官房長官としての責任は極めて重大である。菅内閣では、仙谷官房長官が実質的に重要事項の決定を主導しており……仙谷官房長官が内閣の中枢に居座ったままでは、現状の打開は望むべくもない」
菅直人もずいぶんと馬鹿にされたものだ。
(2010.11.27 花崎泰雄)