老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『ソウル市民』

2011-11-14 23:23:04 | 演劇


週末にニッポンに行ってコレを見た。コノほかにあと4本。市民シリーズ5部作一挙見!! 
ハッキリ言って数年前までワタシは平田オリザというヒトが好きではなかった。TBSの土曜の夜のニュースショーに出てきて、日テレあがりの、スポーツは巨人しか興味がないというようなアナウンサーが司会で、平田さんはいつもニタニタしてアタリ障りのないことを言うだけのつまらぬインチキブンカ人に見えた。その後駒場東大前のアゴラ劇場に何回も行くようになって、平田さんがオーナー兼ゲイジツ監督兼プロデューサー兼宣伝係だということがわかって、ああいうテレビに出て劇場運営の資金を集めていたんだろうと思うようになって、リッパなヒトに見えてきた。その後イロイロ読んだら演劇の世界でケッコウ新しいコトをやってるんだということがわかって、しかも自転車で世界一周までしたと言うんだからかなり普通じゃないヒトだということもわかってきた。でも芝居を見たのは今回が初めて。

で、順番通り一番古いコレを最初に見たのだが、、エッ、みたいな終わり方。なんだったのコレ、みたいな。何か事件が起きたり、ニンゲン関係がもつれにもつれたり、はたまた最後には大盛り上がりでこっちも思わずコーフンしちゃったり、ってなコトは一切ない。
1909年の、ニッポンが侵略中の朝鮮の、今のソウルで文房具問屋みたいな商売をしている篠崎さんちの一家が、翌年のチョーセン併合とか、同じ年の伊藤博文暗殺とかが起きる前の、世の中が静かに動き始めようとしている中で、カレラにとって平和な時間が過ぎていくサマを淡々と描いている、そんな芝居。

コノ芝居はバブル真っ只中の1989年に書かれた。世界ではベルリンの壁が崩壊し、テンアン門事件が起きた頃。ニッポン人はそういうセカイの流れから遠く離れてバブルの中で遊びまくっていた。ソレと同じように篠崎さんちもチョーセンはいいねえ―、みたいにして、ムスコがチョーセン人の女中と駆け落ちしたりして、あいつはバカだねーみたいなコトを言って毎日が過ぎていく。

見終わった時は若干がっかりしたのはジジツ。でも、芝居っていうのは見終わってからジブンの中で発酵していく。意味が出てくるっていうか、意味がないと思って見ていたことの意味がわかってくるような、そんな感じで、この後連チャンで2本目を見たら、平田さんってヒトはやっぱタイシタもんだと思った。
空気みたいなものを舞台の上に作り出しているような。平和ボケしてマ抜けた感じとか、わけのわからない苛立ちとか、ナニが起きているのかわからないことの怖さとか、善意の顔をした悪とか。それをコトバだけで作ってしまうんだからやっぱタイシタもんで、侵略には相手にいいコトをしてあげているというキモチが欠かせないってコトもよくわかった。

2011.11.12 吉祥寺シアター

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