明日は成人の日ですが、毎年この日になると自分が二十歳だったときのことを思い出します。と言っても、私は早生まれなので、成人の日にはまだ二十歳にはなっていませんでしたが・・・。当時、私は県外の大学に進学して、賄い付きの下宿の六畳一間に住んでいました。役所から成人式の招待状が届きましたが、私ははなから出席するつもりではありませんでした。
地元を離れたので、成人式に出ても見知らぬ人ばかりですし、何より成人式って何の意味があるのかよく理解できていなかったのと、どうせ出ても県会議員あたりが話す祝辞を、我慢して聞くだけだろうと考えていたからです。そもそも、成人式は、女性が晴れ着を着て記念撮影する日だ、くらいにしか考えていませんでした。
しかし、届いた招待状に、「この招待状が記念品の引換券を兼ねるので、当日は持参するように」と書かれていたのが目に入り、何だか分からないけど、記念品だけもらいに行こうかと、当日になって気が変わり、寝癖のつい頭もそのままで、ジーパンに下駄を履いて、式場に出かけました。
式場となる下宿近くの中学校に着くと、講堂を探しました。それらしき建物を見つけて近づいていくと、礼服を着たお役人らしき人が、私を呼び止めて、「あのぉ~、成人の方ですかぁ?」と、小声で聞いてきました。「はいそうです。」と言って、私がジーパンのポケットから招待状の葉書きを取り出すと、彼はそれをチラッと見て確認し、「あっ、式はじき始まりますから、後ろの入り口からお入りください。」とその場所を手で示してくれました。
私は、「式には出席しないので、記念品だけ欲しいのですが。」と、はっきり告げると、なぜか彼はホッとしたような表情になり、「ああ、そうですか。少々お待ちください。」と言って、記念品をひとつ取りに小走りに走っていきました。招待状と引き換えに手にした記念品は、ずしりと重い一辺が40cmくらいの四角形で厚さが3cmくらいの箱でした。何か得した気分で、私は軽く会釈をしてその場を後にしたのです。
それにしても、なぜあのお役人らしき人は、私が式に参列しないと言ったら、ホッとしたような表情になったのだろうか。私は、それが少し気になっていたので、隣室の大学院生の先輩に話すと、彼の分析はこうでした。私が中学から高校生の頃、全国では大学紛争が最盛期でしたが、当時はすっかり落ち着きを取り戻し、ほとんどの大学では紛争は沈静化していました。しかし、私が入学した大学は、その例外であるセクトが相変わらず活動を続けていたのです。実際キャンパスのあちこちに、独特の文字で書かれた立て看板が置かれていて、朝の登校時には、正門近くでヘルメットを被って、タオルで顔を隠した学生運動家たちがビラ配りをしていたりしました。
先輩は、「多分、そのお役人は、お前が学生運動家じゃないかと疑ったんじゃないかなあ。そうだよきっと。ジーパンに下駄で成人式に出る奴なんて、まともな成人じゃないと思うだろ。」と言って、高笑いしました。まったくのノンポリだった私は、学生運動より只でもらえる成人式の記念品の方に興味がありました。もらったフエルアルバムを眺めながら、やっぱりちょっと得した気分に浸った私でした。
地元を離れたので、成人式に出ても見知らぬ人ばかりですし、何より成人式って何の意味があるのかよく理解できていなかったのと、どうせ出ても県会議員あたりが話す祝辞を、我慢して聞くだけだろうと考えていたからです。そもそも、成人式は、女性が晴れ着を着て記念撮影する日だ、くらいにしか考えていませんでした。
しかし、届いた招待状に、「この招待状が記念品の引換券を兼ねるので、当日は持参するように」と書かれていたのが目に入り、何だか分からないけど、記念品だけもらいに行こうかと、当日になって気が変わり、寝癖のつい頭もそのままで、ジーパンに下駄を履いて、式場に出かけました。
式場となる下宿近くの中学校に着くと、講堂を探しました。それらしき建物を見つけて近づいていくと、礼服を着たお役人らしき人が、私を呼び止めて、「あのぉ~、成人の方ですかぁ?」と、小声で聞いてきました。「はいそうです。」と言って、私がジーパンのポケットから招待状の葉書きを取り出すと、彼はそれをチラッと見て確認し、「あっ、式はじき始まりますから、後ろの入り口からお入りください。」とその場所を手で示してくれました。
私は、「式には出席しないので、記念品だけ欲しいのですが。」と、はっきり告げると、なぜか彼はホッとしたような表情になり、「ああ、そうですか。少々お待ちください。」と言って、記念品をひとつ取りに小走りに走っていきました。招待状と引き換えに手にした記念品は、ずしりと重い一辺が40cmくらいの四角形で厚さが3cmくらいの箱でした。何か得した気分で、私は軽く会釈をしてその場を後にしたのです。
それにしても、なぜあのお役人らしき人は、私が式に参列しないと言ったら、ホッとしたような表情になったのだろうか。私は、それが少し気になっていたので、隣室の大学院生の先輩に話すと、彼の分析はこうでした。私が中学から高校生の頃、全国では大学紛争が最盛期でしたが、当時はすっかり落ち着きを取り戻し、ほとんどの大学では紛争は沈静化していました。しかし、私が入学した大学は、その例外であるセクトが相変わらず活動を続けていたのです。実際キャンパスのあちこちに、独特の文字で書かれた立て看板が置かれていて、朝の登校時には、正門近くでヘルメットを被って、タオルで顔を隠した学生運動家たちがビラ配りをしていたりしました。
先輩は、「多分、そのお役人は、お前が学生運動家じゃないかと疑ったんじゃないかなあ。そうだよきっと。ジーパンに下駄で成人式に出る奴なんて、まともな成人じゃないと思うだろ。」と言って、高笑いしました。まったくのノンポリだった私は、学生運動より只でもらえる成人式の記念品の方に興味がありました。もらったフエルアルバムを眺めながら、やっぱりちょっと得した気分に浸った私でした。
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