♪~跨ぐ敷居が死出の山 雨垂れ落ちが三途の川
そよと吹く風無情の風 これが親分兄弟分に
一世の別れになろうとは 夢にも知らず石松が
菅の三度を傾けて 別れを惜しむ富士の山♪~
石松は行く先々でうまい酒を呑みながら、無事に讃岐の金毘羅様へ刀と奉納金を納めて大阪へ戻り、八軒屋から伏見へ渡る三十石舟に乗り込んだ。
旅情あふれる三十石船、乗り合い衆の賑やかさ、船の中では利口が馬鹿になって大きな声でしゃべっている。話に花が咲いている。世間話はいつしか靖国神社の話となる。
船客「A級戦犯が祀られているから靖国神社に参拝してはいけないなどというが、
中国も韓国も、日本のマスコミも、知識人も、政治家すらも
だ――――れもA級戦犯とは何なのがを知らない!
石松「ほう、呑みねえ、呑みねえ」
船客「さあ、いわゆるA級戦犯とされているこの人々の中で、(東条英機以下27の似顔絵を示す)あなたは何人知っているのか!?」
石松「そりゃぁ時代が違うんだから知らなくても仕方ないよ」
船客「まさか知りもしないでA級戦犯を悪者だと思い込み、差別してのではあるまいな!?」
石松「…お前さん、ばかにくわしいようだから聞くんだけれども、どうだいこの日本の中で、本当の一番悪い奴は誰だか知っているかい」
船客「そりゃ知ってらい」
石松「だれが悪い」
船客「日本の中で一番悪いのは…。」
船客は立ち上がると、
見よ~、旭日の旗の下~~♪
わしはこの旗が好きでありま~~~す!
血がたぎって、闘志がわいてくるのでありま~~~~す!
船客は朝日新聞社旗に向かって顎がはずれるばかりの大声で怒鳴り続けた。
このたび、差別ぬき、思い込みぬきで、いわゆるA級戦犯とされて人々を全員、紹介する本を描きおろしたそうである。
この本の中に石松が期待する日本で一番悪い奴の名前が出てくるかどうか…。
♪~丁度時間となりました。