寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

想い出話 「見落とし」(20140110)

2014年01月10日 19時24分04秒 | 日記・エッセイ・コラム

 若い頃、四国の南側を巡る旅をした。徳島から列車とバスを乗り継いで室戸岬へ行き岬近くの民宿に泊まった。民宿の周辺を散歩した。海岸へ出て太平洋を見ると水平線が見えた。しばらくぼーっと海を見ていると世の中が変わってくるようだった。民宿の部屋は全体がそれと解るほど海側へ傾斜していた。食卓の足を見ると片側が少し切って短くしてあった。夕食が済んで布団に入ると、少し大げさだが頭を海に向けると頭に血が上ってきたのを覚えている。翌日はまたバスに乗り高知市まで行った。市からさほど遠くない所に国指定史跡天然記念物になっている龍河洞と言う鍾乳洞があると言うことで行って見た。1934年に国の史跡に指定されたと言うことで内部はかなり煤で汚れていた。昔は照明設備がないので松明やローソクの火を明かりとして洞窟内を探検したからその煤で薄黒くなったしまったのであろう。
 その後、高知焼きの窯元を探し当て焼き物を買って高知市へ戻った。ちなみに高知県は焼き物生産があまり盛んでは無いそうである。夜は高知名物のカツオタタキ、鯨の尾の身の刺身をたべ、高知流の酒の飲み方を体験した。土佐の猪口はそこがとがっていておけないようになっている。したがって猪口を手に持っているとまだのめると言うことで次々に酒を注がれてしまう。

 翌朝は高知城脇の堀端で朝市をやっているというので見に行った。おばあさんにこれをのむと私のようにいつまでも元気でいられると言われて黄色い枸杞(くこ)の粉を買わされてしまった。
  高知市内を見物して1日を過ごし、翌日は土佐清水市へ行き鰹節工場を見せてもらった。そして足摺岬ヘ足を伸ばした。旅館に入ると数人のお遍路さんがちょうど宿へ着いたところだった。その人達は部屋に通されると直ぐにお経を読み始めた。私は夕食に特別にカツオの刺身を頼んで足摺岬へ出かけた。ここは崖になっておりその先に太平洋が広がっていた。水平線近くの雲が夕日に染まっていた。これで以前に本で読んで一度いってみたかった高知の2つの岬を観ることが出来た。
 カツオの刺身はすばらしく美味しかった。土佐作りよりもやはり生の方が私は好きである。
 翌日、海岸伝いにバスで西へ向かった。特に予定があるわけではなかったのでゆっくり宿毛市まで足を伸ばしすことにした。途中山道をバスがゆっくり進んだ。海中水族館があるというのでバスを下車して見に行った。海中に建てられたガラス張りのホールから沢山の魚を観ることが出来た。水族館を出て、他に面白いところがないかと尋ねると”見残し海岸”というところがあるという。指を指して南東の方角にあるという。行ってみたいというと今からでは時間的に無理だと言うことで、その名の通り見残してしまった。最近はネットで写真などを見ることが出来るので見てみると、やはり無理をしてもいって見るべきだったと思う。
 前置きが長くなったが、最近身体の屈折が不十分になってきたためと整理が行き届いていないために、机の下に入ってしまったものや何かの陰になっているものを探すのが困難になってきた。これは見残しと言うよりも見落としと言うべきかも知れないが、そのために家の中でも見落とすことが多くなったというつまらない話でした。


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