寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

異次元世界からの招待(6)

2016年06月20日 10時28分09秒 | 寓話

「どうしたんだい。診察を受けたんだろう。何かあっ

たのか」

「診察は受けたし、精密検査を来週受診することにな

った。少し話しておきたいことがあるんだが時間都

合つけれるか」

「こみ入った話なら、職員食堂じゃまずいかな」


「そうだな、正門をでて右にすこし行ったところに

あるファミレスでどうだ」

「いいだろう。じゃ午後1時半頃にしょう」

 そういって電話を切った。食事時刻にしてはすこ

し遅いが我々の仕事の性質上やむをえない。それに

午後1時半過ぎという時刻は客も少なくなっている

だろう。だから込み入った話をするには都合がよい

こともある。

 佐々木は午前中を例の書類を再び開いてみること

にした。失踪者のリストを見ると職業に一定の規則

性はないことが分かった。というよりもこれだけ広

範囲の人材をどうやって選出したのだろうかと考え

た。これだけの人たちを集めれば何か一つのまとま

った国とは言わないが町くらいはできるのじゃない

か。

職業をカテゴリー分類して見てみると、

物理学者 36才男性 流体学専攻 広島県
生物学者33才女性:遺伝子専攻 京都府 
化学者34才男性:分析化学専攻 北海道
医師35才男性:外科および整形外科 千葉県
看護士29才女性 新潟県
建築工学29才男性 東京都
海洋工学35才男性 長崎県
水道工事設計管理者35才男性 大阪府
写真家30才女性 兵庫県
栄養士35才料理に詳しい主婦  沖縄県
企業の営業管理者52才女生 愛知県
廃棄物処理管理者33才男性 広島県
危険物空調管理者29才男性 東京都
電子工学関係の実務者33才男性 静岡県
中等学校教員34才女性 長野県
農業従事者28才男性  秋田県
統括業務 58才男性 京都府
企画・デザイン 43才女性 愛知県

  となっていた。

 佐々木はこれらの人たちに何らかの繋がりがある

のだろうかとジーッと見ていたがそれぞれ無関係の

ように思えた。居住地も日本中各所に散らばってい

た。これも何ら関係がないように思われた。これら

の人たちはその分野でも主導的な立場の人たちだろ

う。政府の調査期間に報告されている失踪者はこの

人たちの他にも数百人がいるという。それから謎の

失踪者は我が国だけではないだろうと言うことだ。

報道関係には漏れていないが、外国でも同じことが

起きていると考えるのが普通だ。

 佐々木は真剣に考えたがどうしても訳が分からな

かった。例えば誘拐するにしてもこれだけいろいろ

な職業人を選ぶのは大変だろう。 それが日本人だけ

でないとしたらどんな結果を導き出すことが出来る

だろうか。全く見当が付かなかった。しかしよく考

えるとこれらの失踪者は相互に関係がないように職

業、居住地をランダムにしているのかもしれないと

考えるのが妥当だろうと思った。それじゃあ何故と

いうところで思考が停止してしまった。

 佐々木は、馬場にどこまで話していいかを考える

ことにした。馬場良明は佐々木にとって最も信頼で

きる親友だから全てのことを話してもよいと思うが、

国家機密になることだからと北館主任教授に釘を刺

されているのでそうもいかない。それともし機密事

項を知ったと言うことで計り知れないことに巻き込

まれることもあるかもしれない。とにかく会って話

の成り行きで失踪者が多数いることと失踪者の出身

地が日本中に散らばっていることにとどめることに

した。

 


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