ビリーの挑戦2-098cut:山本藤光と漆原清明
――Scene16:それぞれの新たな道
影野小枝 指定された帝国ホテルの喫茶店で、2人の話は続いています。
山本 なぜ長所短所ではなく、強み弱みを書いてもらったか、わかりますか?
漆原 先生がお書きになった本のなかに、西堀栄三郎さんの「個性は変えられないが、能力は変えられる」という引用がありました。長所短所は変えられない個性で、強み弱みは変えられる能力だと思います。
山本 しっかりと勉強していますね。
漆原 恥ずかしいのですが、強みは実行力だと思っています。そして弱みは朝令暮改してしまうことです。
山本 朝令暮改は、弱みではないかもしれません。鈴木敏文さんの著書に『朝令暮改の発想』(新潮文庫)というものがあります。一度読んでごらんなさい。ところで無形資産のリストは持ってきましたか。
漆原 何を書いたらよいのかが、わからなかったものですから、とりあえずリストアップしてみました。
山本 SSTプロジェクトの体験がありますね。これは「経験資産」といいます。9時就寝3時起床の毎日とありますが、これはどんなイメージで資産にあげましたか?
漆原 あまりにも書き出せる資産が少なかったので、ムリにリストに入れてみました。
山本 これも立派な資産です。実は私たちには4つの無形資産があります。「経験資産」は漆原さんがリストアップしたイメージのものです、今あるのはあの経験のお陰だと思えるもののことです。次に「技能資産」というものがあります。この技能や習慣があったから、今があるのだと思えるもののことです。漆原さんが書いている早寝早起きは、紛れもない技能資産に入ります。3つ目は「知識資産」です。この知識を修得しているから今がある、というものは何でも含めます。そして最後が「人財資産」ですね。この人のお陰で、今があるという人を列挙します。一度も会ったことがない、本の著者でも構いません。漆原さんがさっきあげた南極探検の西堀栄三郎さんを、人財資産にするのも自由です。
漆原 私たちには4つの資産があるんですね。「経験資産」「技能資産」「知識資産」そして「人財資産」ですか。
山本 漆原さんは退職なさって、自分の会社を立ち上げたわけですね。まずは4つの資産を虫干しすることから、始めなくてはなりません。私に連絡をくださったのも、私を「人財資産」として意識下にあったからでしょう。山本みたいな仕事をしてみたい。そうじゃないですか? おやりなさい。私にできる支援はさせていただきます。