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129cut:標茶町の朝

2018-07-27 | ビリーの挑戦第2部・伝説のSSTプロジェクトに挑む
129cut:標茶町の朝
――Scene19:終りの始まり
影野小枝 昨日は遅くまで、Rファミリーの集いが続きました。山崎さん家族は早朝にホテルを出ています。漆原さんと新谷さんは、磯貝さんの運転する車で、ドライブしています。私も助手席に乗せてもらっています。
漆原 空気がおいしいな。
磯貝 ホテルの女将さんに、地図を書いてもらいました。まっすぐに釧路空港に向かうのはもったいないということで、まずは標茶高校へ向かいます。
新谷 女将さんに聞いたけど、日本一敷地面積が広い高校らしい。
影野小枝 筆者の山本藤光さんの出身高校です。
磯貝 ほら牛がいます。サイロもあるし、牛舎もある。
漆原 ここが高校だなって信じられない。こんなところで学んだら、のんびりした人間が育つ。
磯貝 ではこれから標茶町塘路へ向かいます。ここは釧路湿原のど真ん中です。
影野小枝 標茶町の観光ガイドばかりでは、退屈すると思います。漆原さんと新谷さんの会話を中心に、お伝えすることにしますね。
新谷 以前きみが「12321」理論を教えてくれたよな。独身、結婚、出産、そして子どもが独立し、夫婦だけになり、やがて伴侶を失う。おれたちはまだ中間点の「3」だけど。やがて「2」になり「1」になる。老後に楽しく続けられる何かを、早く発見するべきだな。
漆原 同感だね。いつまでも仕事、仕事では、下りの2と1が貧相なものになってしまう。
新谷 実はね、実家を継いでいる兄が癌なんだ。それでおれが戻って、百姓を継がなければならないかもしれない、
漆原 きみの実家はたくさんの人を雇った大きな農家だよな。
新谷 株式会社にしているんで、兄貴がいないと手が回らない。
漆原 会社を辞めるのか?
新谷 三枝さんにはまだ話していない。でもそうなると思う。
漆原 奥さんや子どもたちは、賛成しているのか?
新谷 これも運命だと、納得している。
漆原 そうか。おれも藤花の温泉に浸かって、標茶町へ移住しようと考えていた。小さな書店でも経営して、あとは文筆活動をしたい。
新谷 ここはビリー誕生の聖地だからな。温泉もあるし、牛もいるし、釧路湿原もある。そして何より空気がうまい。
漆原 下りの2と1を、真剣に設計しなければならないな。
磯貝 あ、丹頂鶴です。ほら湿原のところ。親子ですよ。
影野小枝 飛び立ちました。美しいですね。

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