今村聡・海堂尊『医療防衛』(角川oneテーマ21新書)
情報操作から医療を守れ! 医療の敗北は「市民社会」の敗北だ。海堂尊のベストセラー医療小説『螺鈿迷宮』主人公の医学生・天馬大吉らが日本医師会に乗り込んだ! そこでわかった本当の真実とは……?(内容案内より)
◎今村聡先生とお会いして
私が顧問を務める株式会社コラボプランには、『医療関連図書リスト』(非売品)という冊子があります。古今東西の本のなかから、医師、看護師、薬剤師、病院、薬剤、入院、外来などをテーマにしたものをリストアップしています。そのなかの1冊が、今村聡・海堂尊『医療防衛』(角川oneテーマ21新書)でした。
ある日、新聞で「第1回日本医療小説大賞」の記事を読みました。知らない賞でした。主催・公益社団法人日本医師会、後援・厚労省、協力・新潮社となっており、受賞作として帚木蓬生『蠅の帝国・軍医たちの黙示録』『蛍の航跡・軍医たちの黙示録』(ともに新潮文庫)が選ばれていました。
「医療図書リスト」を作成していることから、日本医療小説大賞の新設はうれしい英断でした。さっそく『医療防衛』の著者である今村聡先生に賛同の手紙を書きました。今村先生は副会長でした。手紙の末尾には、できればお会いしたいと、メールアドレスをそえておきました。
すぐに今村先生からメールがありました。日本医師会館に伺いました。玄関を入ると、いきなり巨大なシロクマのはく製に迎えられました。今村聡先生はスラッとした、予想通りの紳士でした。
日本医療小説大賞の審査にあたった渡辺淳一、今村先生の同級生の作家・南木佳士、共著者・海堂尊など、遠くにいた作家が身近に感じる話のてんこもりでした。
◎主人公たちが日本医師会に乗り込む
もちろん著作『医療防衛』の話もしました。今村聡先生は何度も「日本医師会は開業医の利益団体ではない」と強調しました。そのことは、本書のなかでも語られています。「まえがき」の海堂尊の文章を紹介させていただきます。
――この本が出たら、メディアはこの本の存在を徹底的に無視するか、海堂が日本医師会のヨイショ本を作った、などと揶揄されてしまうかもしれない。(本著「はじめに」より)
ご存知の通り海堂尊は現役の医師でもあります。しかし海堂は医師会に加入していません。今村聡は海堂尊の『チーム・バチスタの栄光』(上下巻、宝島社文庫、「山本藤光の文庫で読む500+α」推薦作)を読んで共鳴し、「お会いしたい」と手紙を書いています。構造的には私が今村先生に「お会いしたい」と送ったのと同じです。
今村・海堂の初面談では、海堂が書いた「Ai」(死亡時画像診断)の推進を熱く話し合ったようです。今村聡は小説の世界を、現実の世界にすべく力を注ぎました。日本医師会はそれまで微動だにしなかった、国を動かしました。
『医療防衛』を読んで、日本医師会を悪役にする国やメディアの腹の中が見えました。日本医師会は、患者の立場で活動している組織である点も理解できました。海堂尊『螺鈿(らでん)迷宮』(角川文庫)の主人公たちが日本医師会に乗りこむ、という設定もユニークでした。そのあたりについて、今村聡は次のように書いています。
――海堂先生は医師会員ではない立場で、医師会員と議論を交わしたうえでお書きになっているので説得力があります。(『本の旅人』角川書店、2012年4月号)
私は若いころに製薬企業のMRとして、病院や開業医を仕事場にしていました。もっと早くに本書と巡り合っていたなら、「医療の敗北は市民の敗北である」とする日本医師会の立ち位置を、仕事の中核にすえられたことと思います。
(山本藤光:2014.02.28初稿、2018.03.08改稿)
情報操作から医療を守れ! 医療の敗北は「市民社会」の敗北だ。海堂尊のベストセラー医療小説『螺鈿迷宮』主人公の医学生・天馬大吉らが日本医師会に乗り込んだ! そこでわかった本当の真実とは……?(内容案内より)
◎今村聡先生とお会いして
私が顧問を務める株式会社コラボプランには、『医療関連図書リスト』(非売品)という冊子があります。古今東西の本のなかから、医師、看護師、薬剤師、病院、薬剤、入院、外来などをテーマにしたものをリストアップしています。そのなかの1冊が、今村聡・海堂尊『医療防衛』(角川oneテーマ21新書)でした。
ある日、新聞で「第1回日本医療小説大賞」の記事を読みました。知らない賞でした。主催・公益社団法人日本医師会、後援・厚労省、協力・新潮社となっており、受賞作として帚木蓬生『蠅の帝国・軍医たちの黙示録』『蛍の航跡・軍医たちの黙示録』(ともに新潮文庫)が選ばれていました。
「医療図書リスト」を作成していることから、日本医療小説大賞の新設はうれしい英断でした。さっそく『医療防衛』の著者である今村聡先生に賛同の手紙を書きました。今村先生は副会長でした。手紙の末尾には、できればお会いしたいと、メールアドレスをそえておきました。
すぐに今村先生からメールがありました。日本医師会館に伺いました。玄関を入ると、いきなり巨大なシロクマのはく製に迎えられました。今村聡先生はスラッとした、予想通りの紳士でした。
日本医療小説大賞の審査にあたった渡辺淳一、今村先生の同級生の作家・南木佳士、共著者・海堂尊など、遠くにいた作家が身近に感じる話のてんこもりでした。
◎主人公たちが日本医師会に乗り込む
もちろん著作『医療防衛』の話もしました。今村聡先生は何度も「日本医師会は開業医の利益団体ではない」と強調しました。そのことは、本書のなかでも語られています。「まえがき」の海堂尊の文章を紹介させていただきます。
――この本が出たら、メディアはこの本の存在を徹底的に無視するか、海堂が日本医師会のヨイショ本を作った、などと揶揄されてしまうかもしれない。(本著「はじめに」より)
ご存知の通り海堂尊は現役の医師でもあります。しかし海堂は医師会に加入していません。今村聡は海堂尊の『チーム・バチスタの栄光』(上下巻、宝島社文庫、「山本藤光の文庫で読む500+α」推薦作)を読んで共鳴し、「お会いしたい」と手紙を書いています。構造的には私が今村先生に「お会いしたい」と送ったのと同じです。
今村・海堂の初面談では、海堂が書いた「Ai」(死亡時画像診断)の推進を熱く話し合ったようです。今村聡は小説の世界を、現実の世界にすべく力を注ぎました。日本医師会はそれまで微動だにしなかった、国を動かしました。
『医療防衛』を読んで、日本医師会を悪役にする国やメディアの腹の中が見えました。日本医師会は、患者の立場で活動している組織である点も理解できました。海堂尊『螺鈿(らでん)迷宮』(角川文庫)の主人公たちが日本医師会に乗りこむ、という設定もユニークでした。そのあたりについて、今村聡は次のように書いています。
――海堂先生は医師会員ではない立場で、医師会員と議論を交わしたうえでお書きになっているので説得力があります。(『本の旅人』角川書店、2012年4月号)
私は若いころに製薬企業のMRとして、病院や開業医を仕事場にしていました。もっと早くに本書と巡り合っていたなら、「医療の敗北は市民の敗北である」とする日本医師会の立ち位置を、仕事の中核にすえられたことと思います。
(山本藤光:2014.02.28初稿、2018.03.08改稿)
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