炉端での話題

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エントロピーとは(12) -完全微分の壁

2015-05-18 09:57:07 | Weblog
エントロピーのことを学習していると、エントロピーの積分にあたり、完全微分という数学による壁にぶつかる。
筆者もこの壁にぶち当たって困惑した。

エントロピーは状態を表すものと定義している。別の言い方をすればポテンシァルである。あまり適切な例ではないが、ポテンシァルとして位置エネルギーを扱って見ることにする。
ある高さhにある質量mのポテンシアル・エネルギーは、重力加速度をgとして mgh である。
いま富士山山頂にある物体の質量10Kgの位置エネルギーを考える。この物体は3776メートルの高さにある位置エネルギーであるが、この高さにまで10Kgの物体を運ぶ方法は問わないことにする。その時の運搬にかかる運動エネルギーは、運搬の手段でことなる。人力で運び上げるにしても須走口登山道、河口湖登山道、吉田口登山道、富士宮口登山道の4ルートがあり、これに関わるエネルギー量は、それぞれことなるであろう。またブルドーザ、あるいはヘリコプターで運び上げたとしても位置エネルギーは等しいが、この運び上げに関わる動力エネルギーの量は異なる。

完全微分による積分とは、経路によらないで積分の結果だけに注目する。完全微分にならない場合でも、経路を余分に付け足せば完全微分になることも数学的に明らかになっている。
熱学でのエントロピーは状態を示すのであるから、このようにいかなる経路を辿ろうとも、結果だけに注目する。どのような経路を辿ろうとも、またいかに時間がかかろうともそのことは問わない。エントロピーの値を定めるため、そのための熱エネルギーは、積分経路によって異なっていることには関わらない。
お茶を入れるためにお湯にしたカップ一杯分のエントロピーは、ガスコンロを用いようと、電気ポットを使うか、あるいは古式ゆかしく炭火によろうと、加わった熱エネルギーの過程にはよらない。当然ながら加熱手段によっては無駄なエネルギー消費があるが、そのことには無視する。
それが熱学のエントロピーの定義である。
(応)

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