炉端での話題

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原野商法のこと

2013-07-22 10:50:51 | Weblog
 原野商法とは、ほとんど無価値に近い北海道の原野を紙上で適当に線引きし、その分筆された土地を高値で売りさばく、1970年代に発生した詐欺的な商法である。
 すでに高齢の域に達し、旅立ちの支度を始めているある知人から、その原野商法に巻き込まれて購入した土地の相談を持ちかけられた。
 当時の広告は、女性刊行誌に掲載され、将来は新幹線が施設される等の誇大広告が行われたらしい。残された文書には、「これが最後の物件です」との添え書きもある。知人は、物件を見ないまま、細分化された原野の一部を購入したという。

 最近北海道を訪れる機会があり、知人から依頼された物件を現地で確かめるために訪れた。その土地は図面上では数百坪はあるはずであるが、境界標も設置されていない。このあたりであろうと思われる場所は10メートル程の標高差がある不整地である。その近くには平坦なジャガイモ畑が拡がり美しく花を咲き競う景観が広がる。
 開拓に当たり不整地を避けて開墾した残りの場所を悪徳業者が安く買い取り、これを紙上で分筆して、数百倍以上の価格で販売し、大儲けをしたのに違いない。明らかに詐欺商法である。しかし、そのことで訴訟を起こすことは、多分不可能であろう。

 さて、高齢の知人にどのように説明すればよいか。
この原野商法に巻き込まれた方々は残された書類から類推すると多数ある。いまこれらの土地を再販売するとなれば、購入価格にみあう金額にしたいと持ち主は考えるに違いない。すでに40年以上経過しているが、現在の価値は当時とほとんど変わらないから、購入価格の数百分の一になる。すでに他界された持ち主もあろうが、存命の持ち主はいまの価格で手放すことは考えられない。
つまりは放置されたままになる。数百年後もそのままであろう。

 考えあぐんでいたとき、この説明を聞き終わった家人の一人は「大自然は残るよ」という。
 確かにそうだ。
北海道の土地を外国人が買いあさっているとも聞く。原野商法で販売された土地を外国人が買いあさることはできないであろうから、自然原野のまま末代まで残るであろう。
悪徳商法が残した功徳であると依頼された知人にはその顛末を語り、多額の資本を投下して自然を残す貢献をしたと諭すことにしたい。
(納)

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