炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

エキスコン(9) -メモリ中心のシステム-

2011-02-28 13:06:59 | Weblog

 このエキスコン・シリーズはExtreme–scale ComputingというIEEEComputerで掲載された特集記事に啓発され、2009.12.15から開始した。その背景にはスーパーコンピュータ、つまりスパコンのことが事業仕分けの話題になっていたこともある。

 

 最近になると、数の単位としてExa(エクサ、1018乗のことで、100万兆すなわち100京)という単位が取りざたされている。このシリーズを叙述している本人もいつの間にかエクサコンと思いこむことがある。

エクサとはとてつもない大きな数の単位である。ヒトの脳細胞は、1010乗個、つまり100億個の細胞があるといわれているから、1Eという単位の数は、日本人口1億数千万人全体を集めた脳細胞数にほぼ相当する。

 

最近手元に届いたIEEEComputer 2011年1月号にRangananthan氏が“From Microprocessors to Nanostores: Rethinking Data-Centric Systems”というタイトルで記事を書いている。

その中に、Google2002年に5Eバイトの記憶量を扱っていたが、2009年には280Eバイトの記憶容量と7年間で56倍に拡大しており、すでにエクサの単位の時代に入っていると指摘している。さらに同期間のモーアの法則による増大率は16倍と見なされるので記憶量に関しては、それより遙かに早い進展状況であるともいう。

コンピュータの発展に関してモーアの法則(Moore’s Law)がよく引用される。1965年にINTEL創始者のモーア氏が、ほぼ2年ごと(この時間間隔は発言時期よってことなるが)に半導体素子の複雑度は倍になることを示した。この法則はコンピュータの能力を左右する半導体技術の進歩状況によくあてはまることから、しばしば引用されている。

Rangananthan氏は記憶容量に関してはモーアの法則を遙かに追い越す勢いであるという。

 

しかしそれだけではない。

上記の英文表題の意味を改めて眺めてみよう。つたない訳をすると「マイクロのコンピュータからナノ規模の記憶へ:データが中心となるシステムを再考する」となろう。別の言い方をすると「コンピュータよサラバ、メモリが中心となるシステムよコンニチハ」とすればわかり易い。ここで記憶素子とか記憶機構のことを含めてメモリといいかえておく。

このテーゼに沿って、しばらくメモリ中心システムの話題を展開しよう。

 

Googleのエキサ規模のメモリはどのような効果をもたらしているか。

かって「炉端での話題」で検索のことを取り上げたことがある。その後の検索に拘わる事情はどうか。

試しに「炉端での話題」をキーワードとしてGoogleで検索すると2011年2月25日には164000件の結果が0.09秒で与えられたと示され、有難いことに、このブログが最上位に表示される。このように短時間で膨大な量のタイトルからキーワード検索するためには何かの仕掛けがあるはずである。

ここで「炉端」と「話題」を切り離したキーワードにして検索すると件数は164000とおなじであるが、時間は0.10秒とわずかながら長くなり、「炉端での話題」の表示結果は第3位に転落する。この検索をYahoo で行っても同じ結果であり、驚いたことにBing JWordでも全く同じ結果として表示される。いまやGoogleの検索エンジンが支配権を確立したといえそうである。

あくまで推量の範囲であるが、Googleの検索エンジンは、キーワードをコーディングしたアドレスを用いて膨大なメモリにアクセスするのではなかろうか。ここでアドレスとはメモリに記録されている位置を示す番地のことである。アドレスを指定することでその位置に記録された情報を読み出したり、あるいは書き換えたりできる。

Google上での検索アドレスは、それまでにその情報にアクセスが繰り返された頻度をもとにコーディング化されているであろう。

 

別の説明をしよう。辞書を引くことを想像していただきたい。

調べたい単語をキーワードとしてページを繰り、ABC順とか、アイウエオ順にアクセスすることで、目的とする単語の意味を辞書の中から見いだす。このことを辞書式検索という。

メモリの場合はアドレスを示して、その位置の情報に直ちにアクセスできる。Googleの検索エンジンは、ネットワークで結合された膨大なメモリについて辞書式検索を行うと推量する。ネットワークで結合されたメモリは、いま話題をさらっているクラウド(cloud)といいかえることもできる。

 

Rangananthan氏は、このクラウドが、これまでのマイクロのコンピュータに置き換えられる可能性を述べている。この延長線上で夢物語を述べると、いまはクラウド規模であるメモリを主体としているシステムが、やがてはメモリを中心としたシステムとしてパソコン程度におさまることになる。

 

この2月26日のNHKの放送、「追跡! AtoZ メガリークスの驚異」が放映された。放送内容を見ていると、メモリはギガバイトのデバイスが写っていたから、メガリークスのタイトルはふさわしくない、ギガリークスの方がより正確なタイトルであると内心思ったものである。やがては「エクサリークスの驚異」が起こりうるかも知れない。再度にわたるが、1エクサは日本総人口の脳の細胞数に匹敵する。

 

 さてメモリ中心のシステム実現可能性の背景について、あまりに長くなるので改めて述べることにしたい。

(納)


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2 コメント

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cloud (cloud)
2011-12-19 19:51:45
メモリ中心のシステムってデータセンターの意味と似っていますね。データセンターにネットワークを加えて、Cloudそのものですね。
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コメントについて ()
2011-12-26 10:22:47
コメント有り難うございます。
データセンターにはいかなるインテリジェンス(広い意味の解釈により)がありますでしょうか。ヒトの脳は、メモリー中心といわれていますが、すばらしいインテリジェンスを持っているように思われます。
 cloudさんは、cloudにいかなるインテリジェスを認識しておられますでしょうか。
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