炉端での話題

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200年住宅とは

2011-10-05 10:57:52 | Weblog
 最近配布された新築住宅のチラシ広告に200年住宅があった。200年は保つという住宅の宣伝である。まずはそのような住宅はありうるかと疑問に思う。

 私は建築後50年ほど経過した住宅をDIYにより改装を行っている。古い木材を撤去するときに、気がついたことをまず述べる。
 この木造家屋は決して高級ではないので杉材が多く使用されている。この杉材を外すときに鉄釘が錆びていないことに驚かされた。なんと鉄釘の大部分は、金属の光沢が残っていて錆びていない。湿気が木材の内部にまで浸透していないことを物語っている。ところがラワン材に打ち込まれた鉄釘はボロボロに錆び、釘の強度もなくなっている。特に台所の造作に使われたラワン材は簡単に取り外せた。しかし釘そのものは中までさび付いているために除去できない。ラワン材は湿気が浸透することがわかった。
 一般に木材と釘などの鉄器は熱伝導度が異なるから、温度が低くなると鉄の部分が冷却されて鉄の部分に結露する。このとき結露した水分が木材に浸透する。このことは、長持ちさせる住宅には木材を金属で保持する構造にしてはならないということを教えてくれる。最近になって地震が頻発することから耐震構造のために材木の内側に鉄骨を入れる工法があるが、鉄は水分を呼び、その水分は木材に吸収されて微生物の繁殖をもたらし、木材を腐らせる。さらに保持された水分のために鉄材も酸化して強度を失う。工法にもよるが、数十年程度の耐久性しかないと思われる。テレビの番組を見ていると鉄骨材を木造建築に使用しているのをみかけるが、耐久性があるのか疑問に思う。
 木造住宅は湿気対策をおこなうことで耐久性が向上する。シロアリなどに侵害された部分は、雨漏りなどで水分がたまるところに発生していた。水分が浸透しないように、また仮に暴風雨などで雨水が浸入してもすぐに乾燥するような構造にすれば、木造住宅は鉄筋コンクリートの建造物よりも長持ちする。
 50年近く経過した住宅の木造構造物は、さらに50年は保ちそうであることから、DIYにより改装することにした。この住宅と同時期に建造された近所の公団の鉄筋コンクリート住宅はすべて建て替えられている。

 つい最近になって、木造物置を作成した。間伐杉材を多用し、空気の対流をよくするために壁には隙間をあけて木材が常に乾燥するように工夫した。また雨漏りが少ないように屋根は広くして片流れ構造にした。いかなる棚も80キロの体重の人が乗ってもびくともしない構造とし、構造的にも頑丈にできるから地震対策にもなる。本宅が地震倒壊しても、この物置は倒壊せず、100年は保つと私は豪語している。
 もとより保守をしなければ、いかに耐久性を考慮したといえ100年も保つわけはない。その保守を容易にするために釘はステンレスねじ釘を使用した。湿気を呼んで腐った木材は交換できる。ちなみに木材の内側塗装はすべて柿渋にしてある。いまこの物置に入ると柿渋の異臭は消えて、果物の持つ香気に包まれている。

 さて200年の住宅の話題に戻ろう。一言でいえば誇大広告である。200年も保つ住宅とすれば、一切の金属類は排除した構造物にしなければならない。さらに木材を接合するための接着剤も近代の化学製品を使用してはならない。200年前には存在しなかった製品を使用して、これから200年も耐えられるという保証があるだろうか。保守なくして200年も保つ住宅はあり得ないはずである。このようなことは広告に一切記載されていない。ガラス・コーティングするから200年は保つ住宅とあり、ローラーハケでコーティングする様子の写真が掲載されている。このガラスは福島原子力発電所の事故で漏水防止に使った水ガラスではないかと想像している。それだけで200年は保つ住宅にできるだろうか。
 単に200年は保つ住宅との願望がチラシ広告に掲載してあるとしか思えない。
(農)