劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

トッパンホールのオープニング・コンサート

2024-10-08 11:08:04 | 音楽
10月7日(月)の夜に、トッパンホールのオープニング・コンサートを聴く。シーズンの開幕コンサートという命名だろうか。今回はベートヴェンの作品を、チェロ・ソナタ、ヴァイオリンソナタ、歌曲という形でいろいろと聞く。チケットは完売ということで、満席だった。7時に始まり、20分の休憩を挟み、終演は9時20分頃だった。

出演者はヴァイオリンが山根一仁、チェロは笹沼樹、声楽はバリトンの大西宇宙。今シーズンに登場する主要な人が一堂に揃うわけだから、いわば「顔見世」興行といった雰囲気。ベートーヴェンをいろいろなスタイルで聴くという楽しみもある。

最初は笹沼のチェロで、チェロ・ソナタ4番。ピアノの伴奏は兼重稔宏。結構、高度なテクニックを使った曲だが、何となく曲が盛り上がらずに低調だった印象。幕開きで硬さが残っていたのだろうか。

続いて山根のヴァイオリンで、ヴァイオリン・ソナタ2番と1番。伴奏は大井駿のフォルテピアノ。珍しく昔のフォルテピアノを使った伴奏で、平均律ではなくキルンベルガー第二音律で調律された楽器を使用していた。現在のピアノと異なり、ペダルがなく、音のダイナミック・レンジも狭いので、単独の楽器としては魅力を欠くかも知れないが、ヴァイオリンの伴奏では音の大きさが大きすぎず、とても相性が良いと感じられた。また、ベートーヴェンも使っていたらしい音律だったので、ヴァイオリンとよく音が合い、聴いていてとても心地よい音楽となっていた。

休憩の後の後半は、大西による歌曲。伴奏は兼重のピアノ。最初に「アデライーデ」続いて連作歌曲「遥かなる恋人に寄す」1~6曲だった。大西は今が旬のバリトンといった感じで、声も美しく良く響き、ベートーヴェンを堪能した。

最後は笹沼のチェロ・ソナタ3番。前半に弾いた4番は今一つの印象だったが、後半の3番は打って変わって、素晴らしい演奏。もともと人気の曲らしいが大いに盛り上がった演奏だった。盛沢山のプログラムだったので、終了は9時20分を過ぎていた。外に出ると、雨が降っており、傘もなく陸の孤島のようなホールなので、どうしようかと思ったが、タクシーがうまく捕まったので、タクシーで帰宅。家で軽い食事をとる。人参のラぺ、枝豆のポタージュ、チョリソー、生ハムなど。飲み物はボルドーの白。

小林研一郎+神尾真由子

2024-10-06 10:51:24 | 音楽
10月5日(土)の昼に文京シビックセンターで、小林研一郎指揮の東京フィルを聴く。ソリストはヴァイオリンの神尾真理子。午後3時開演で、20分の休憩を挟み、終演は5時半ごろだった。完売で、場内は満席。

最初の演目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。1時間近い大曲で、同じテーマが繰り返し演奏されるが、ベートーヴェンらしい編曲で退屈させない。神尾真理子のヴァイオリンは初めて聞いたが、高い音まで美しく響かせるので驚いた。低音のふくよかさと、高音の美しさは今まで聞いたヴァイオリンの中でもトップクラスと感じさせた。重音や難しいフレーズも難なく弾き、いつまでも聞いていたいような心地よい演奏だった。

神尾はすらりとした印象で、黒の細身のドレスで白いリボン状のベルトをしていてシックな感じ。上手側で見ていたので、入場時には気付かなかったが、後ろには深いスリットが入っていた。8cmを超えると思われる高いピンヒールで1時間弾いたが、これも退場時に、靴底が赤いのが見て取れた。隣の観客は「ルブタン」ではないかと話していた。1時間の大曲だったので、アンコールはなく、休憩に入った。

後半も大曲で、ベルリオーズの「幻想交響曲」。交響曲ではあるが標題的な作品で、恋人との出会い、裏切り、絶望が、5楽章で綴られる。大太鼓、ティンパニー、テューバがそれぞれ2つづつなので、最後の楽章のフォルテッシモはすさまじいほどの音だった。小林はハンガリーでの活躍が有名で東欧音楽が得意というイメージがあるが、ベルリオーズも得意のレパートリーらしく、暗譜で指揮していた。80歳を超える年だが、まだまだ元気な印象で、エネルギッシュな印象だった。指揮そのものはそれほど身体を動かすわけでもないのに、どうしてあれだけの音をオーケストラから引き出せるのだろうと、感心した。

充実した演奏を聴いてすっかりと気分がよくなったが、あいにくの雨で、レストランは断念して家で食事。各種温野菜、田舎風のパテ、生ハム、チョリソー、ブルーチーズのディップなど。飲み物はボルドーの赤。

新国立劇場「夢遊病の女」

2024-10-04 14:33:40 | オペラ
10月3日(木)の夜に、新国立劇場でベッリーニのオペラ「夢遊病の女」を見る。ベッリーニのオペラは新国立劇場では初めてらしい。テアトロ・レアル、リセウ大劇場、マッシモ劇場との共同製作。2幕のオペラで、前半1時間半、30分の休憩があり、後半は1時間。6時半開演で終演は9時半過ぎだった。新シーズ開幕の夜だったが、9割程度の入り。1階はほぼ埋まっていたが、2階、3階は空きが見られた。

主役のアミーナとエルヴィーノはイタリアから呼んだが、そのほかの配役は日本人だった。指揮はマウリッツィオ・ベニーニで、熟達の指揮ぶり。オーケストラは東京フィル。

アミーナ役のクラウディア・ムスキオは、まだ若いソプラノで、少し細い声だが見事な歌唱で観客を魅了した。エルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザは、10月5日の誕生日で還暦を迎える大ベテラン。しかし、声を聴くと輝きのあるテノールで、とても60歳には聞こえない。しかし、かなりの高音域のある曲なので、高い音はちょっと力んでいた。

日本人もなかなか良いが、アミーナの母親役メゾソプラノの谷口睦美の声がしっかりと響き、最も良かった気がする。ほかに、伯爵役でバスのベテラン、妻屋秀和は安定した歌唱を聴かせた。

日本では上演が少ないベリーニの作品で、歌唱レベルは満足のいくものだったが、演出に疑問が残った。夢遊病の原因を表すような10名のダンサーが、アミーナの周りで蠢いたり踊ったりするが、意味不明な印象で、ダンスなどない方がよいと感じた。夢遊病ということで、おどろおどろしさを出したかったのかもしれないが、この作品はハッピーエンドで、どちらかというと喜劇的なので合わない印象。もう一つ舞台セットもおかしな感じで、最初は森の中のようなセットで、宿の部屋の場面も、同じセットで演じらっれるため、どうも気分が出なかった。後半も、意味不明のセットで、最後の場面は、かなり高い小さな屋根の上で、ソプラノが延々と歌うので、落ちたら大変だと気になって、落ち着いてみていられなかった。変な、読み替え演出ではないのは良いが、意味不明の演出は感心しない。

帰りがけに、パブでビールを飲みながら軽く食事。サラダ、ローストビーフ、フィッシュ・アンド・チップスなど。歌い終えた妻屋氏が、仲間と一緒に飲みに来ていたので、簡単に挨拶して帰る。大雨に遭遇して、かなり濡れた。

バイグレ指揮の読響

2024-09-30 14:00:50 | 音楽
9月29日(日)の昼に東京芸術劇場で、セバスティアン・バイグレ指揮の読響を聴く。ドイツ・オーストリア・プログラムで、ウェーバーの「オベロン」序曲、ブルッフの「コル・ニドライ」、コルンゴルドのチェロ協奏曲、休憩の後でコルンゴルドのシュトラシアーナ、最後は、リヒヤルト・シュトラウスの「ばらの騎士」組曲。午後2時に始まり、15分間の休憩を挟み、終演は3時50分頃。ほぼ満席で、日曜日の昼間だが客層は年金生活者と主婦層に限られている印象。

ブルッフの「コル・ニドライ」とコルンゴルドのチェロ協奏曲はエドガー・モローがチェロを弾いた。素晴らしく美しい音色で、チェロの音色を堪能した。弦楽器は、ある程度以上のレベルになると、音色の勝負というような気がする。チェロ協奏曲は1946年の作品で、コルンゴルドがハリウッドで映画音楽を書いていた時期でもあり、1940年代のハリウッド・サウンドそのものという感じ。懐かしいというか、重厚な映画音楽でこの時代の映画音楽は良かったなあと思った。モローのアンコールは、バッハの無伴奏組曲3番。重音を美しく奏でた。

後半は最初にコルンゴルドの編曲したヨハン・シュトラウスのワルツ曲。シュトラウスの滑らかさとは異なり、ちょっと現代的な響きがあって、面白い。コルンゴルドは第二次世界大戦中の米国でマックス・ラインハルトと組んで「こうもり」の改訂版を上演しているが、これを聴いてみたくなった。

最後は、「ばらの騎士」組曲。いつもはオケピットから聞こえてくるサウンドが、舞台上から直接耳に飛び込んでくるので、迫力があった。リヒヤルト・シュトラウスの一番美しい曲なので、大好きだ。メロディーを聴くと、舞台場面が目に浮かぶようで大いに楽しんだ。

帰りがけに買い物して、家で食事。小松菜のお浸し、きぬかつぎ、レンコンのはさみ揚げ、竹輪の磯辺揚げ、揚げ出し豆腐などを作って食べる。飲み物は福島県産の吟醸酒。

ファビオ・ルイージ指揮のベートーヴェン7番

2024-09-21 11:03:52 | オペラ
9月20日(金)の夜にサントリーホールで、ファビオ・ルイージ指揮のN響を聴く。今シーズンの開幕公演。9割程度の入り。相変わらず年寄り比率が高い。プログラムは、最初にシューベルトのイタリア風序曲、続いてシューマンのピアノ協奏曲、20分の休憩の後はベートーヴェンの交響曲7番だった。7時開演、終演は8時55分頃。

前半のピアノ協奏曲はエレーヌ・グリモーが弾く予定だったが、体調不良でキャンセルとなりアレッサンドロ・タヴェルナが代役で弾いた。まるで19世紀の音楽家を思い起こさせる風貌で、端正なピアノを弾いた。シューマンの協奏曲なので、あまり盛り上がらず、ひたすら美しく弾いた印象。アンコールでバッハを弾いたが、こちらは素晴らしい音色で、ピアノのソロで聴きたいと思った。

後半はルイージの渾身のベートーヴェンという感じで、最初から最後まで観客を引き付けて離さない名演だった。2楽章の葬送も良かったが、4楽章はこんなに早いテンポで演奏して破綻しないのかと思うほどの速度で演奏された。どのパートもめまぐるしいほどの速度で演奏したが、それで乱れないのが、さすがN響だと感心した。観客も熱狂的な声援を送っていた。ルイージはイタリア人だけど、ドイツ音楽もうまいなあと、改めて思った。

午後9時になっても、まだ熱波という感じで暑かったが、帰りがけにいつものスペインバルで軽い食事。生ハム、トルティージャ、ポテトサラダ、イワシのエスカベッシェ、タラのフライなど。ワイン各種。