劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

イタリア文化会館のジョヴァンニ・ソッリマ

2025-03-22 13:58:27 | 音楽
3月21日(金)の夜にイタリア文化会館で、チェリストで作曲家のジョヴァンニ・ソッリマの対談と、ワークショップを観る。6時30分開演で、途中15分程度の休憩を挟み、終演は8時45分頃。9割程度の入り。

前半は読響のチェリスト遠藤真理との対談だが、音楽評論家が質問して答える式だっだので、ソッリマから面白い回答があまり引き出せていなかった印象。作曲家としての立場と演奏家としての立場を併せ持つ人なので、楽譜通りに演奏するのか、演奏者の解釈や即興性をどこまで考慮するのかという点をもう少し深堀して欲しかった。対談は1時間弱で、最後に遠藤真理とジョヴァンニ・ソッリマのデュオの演奏があったが、短い曲ながら美しいものだった。

後半はチェリスト50人ぐらいが舞台上にあがり、ソッリマの指導で合奏するワークショップップ。こんなに大勢でどうやるのだろうと思っていたら、グループをざっくり4つに分けて、各グループにこれを弾けと言う形でソッリマが演奏して見せて、それを繰り返し、見事な四声のチェロ演奏が出来上がる。それをバックに、ソッリマが即興で演奏して見せたり、テンポを代えたり、伴奏の中身を代えたりしながら、1時間以上ワークショップをやった。雰囲気はミニマルミュージックともバロックともつかない不思議なもので、なんとなく、ソッリマの出身地シチリアの空気を感じさせるものだった。50人がグルーヴして弾く感じで、まるでジャズのジャムセッションのような感じ。クラシック音楽でグルーヴ感を始めて感じた。

チェリストは4分の1ぐらいがプロの演奏者といった感じで、音大生みたいな人や素人も混ざっていた。最前列の演奏者は、バロックの弓を使ったり、ビオラ・ダ・ブラッチョという珍しい書きで演奏していた。楽譜ではなく、師匠がやって見せてその通り弾かせるというのは、大昔からの伝統的な教育法のようにも感じた。途中でバッハの無伴奏チェロソナタ1番の旋律を引用しながら、曲を組み立てていくので、こういう音楽の作り方があるのだと、新しい発見があった。

帰りがけにスタンド式のワインバーで軽く食事。キノコのマリネ、レンコンのアラビアータ、ホタルイカのケッパー風味などをつつきながら、イタリアワインを飲む。主にトスカーナ付近の白と赤。イタリアには数知れぬほどの品種があり、奥が深い。

小澤音楽塾の「椿姫」

2025-03-21 11:00:50 | オペラ
3月20日(木)の昼に東京文化会館でヴェルディのオペラ「椿姫」を見る。15時開演で、20分間の休憩が二回入り、終演は18時ごろ。9割程度の入り。

小澤征爾音楽塾のオペラ公演で、出演者や演奏者は若い人が中心。指揮はディエゴ・マテウスで、オケも合唱も音楽塾のメンバー。演出はデイヴィッド・ニースで、美術はロバート・パージオーラ。演出は極めてオーソドックスで、歌詞の内容と舞台がピタリと合っていて、わかりやすい舞台。服装は現代風だが美術は美しく仕上がっていて見るだけで楽しい。特に2幕前半の田舎の家の場面は秀逸だった。

歌手は若い人なので、まだこれからといった印象。声はよく出ているのだが、主役のヴィオレッタ役のニーナ・ミナシアン、アルフレッド役のカン・ワンとも、一本上使の歌い方で、情感や繊細さに欠けた。ジェルモン役のクイン・ケルシーは、なかなか堂々たる歌いぶりで、場内の反応も良かった。

マテウスの指揮は、ゆっくり目のテンポだったが、メリハリをつけて盛り上げた。オケの音はなかなか良いなあと感心した。

スポンサーがしっかりついているからか、セットや衣装がお金をかけていない割にはきちんとしており、十分に楽しめる。歌はばらつきがあるが、若い人の応援だと思えば問題はなかった。

帰りがけにスーパーで買い物して、家で食事。ガーリック・オリーブ、ジャンボン・クル、大根サラダ、ビーフストロガノフ。飲み物はヴァン・ムスー。

読響の「ヴォツェック」

2025-03-16 10:43:59 | オペラ
3月15日(土)の夜にサントリーホールで、読響の演奏会形式オペラ「ヴォツェック」を聴く。6時開演で、休憩なしで3幕15場、1時間35分を上演した。主要キャスト6人のうち5人は来日組で、日本人ではただ一人テノールの伊藤達人が参加した。ほかに日本人4人の歌手、新国立合唱団、東京FM児童合唱団など。指揮はセバスティアン・バイグレだった。チケットは売り切れで、追加発売も出ていたようだが、天候が悪かったせいか、結構空席が目立った。

ヴォツェックの無調の作品で、今まで敬遠していたが、実際に聴くとなかなか面白い作品だった。1910~20年代に書かれた作品で、第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期のドイツの退廃的なムードが漂っており、何か当時流行した表現主義的な感じもある作品。

主人公のヴォツェックはうだつの上がらない兵卒で、マリーとの間に子供もいるが、生活は苦しく、マリーは鼓手長と浮気する。ヴォツェックはマリーを殺して、自らも亡くなるという話。同じころに書かれた「フィレンツェの悲劇」にも一脈通じるような題材だった。

無調音楽はあまり好きではないが、面白く聞けたのは、バイグレの指揮が良かったのと、歌手陣が揃っていたためだろう。特に題名役を演じたバリトンのサイモン・キーンリーサイドは素晴らしく、歌だけでなく演技もヴォツェックに成り切ったようで、聴きごたえ十分だった。マリー役のアリソン・オークスもしっかりとした芯のある声で、観客を魅了した。その周りを固める歌手陣も充実していた。伊藤達人も良く頑張っていた。

こうした舞台は、本来ならばきちんとした演出付きで見たいと思うが、こうした一流メンバーが揃うならば、演奏会形式も悪くない気がする。

読響も管の充実したフル編成で、見事な演奏。一幕前半のチェロの響きがとても印象に残った。

少し雨模様だったので、家に帰って食事。トマトと玉ねぎのサラダ、生ハム、ガーリック・オリーヴ、ホタルイカのアヒージョ、マフィンなど。飲み物はスプマンテ。

新国立劇場の「バレエ・コフレ」

2025-03-15 10:05:36 | バレエ
3月14日(金)の夜に新国立劇場でバレエ・コフレを見る。バレエの3本立て。4回公演の初日で、新作も入っていたためか、満席だった。19時開演で、25分間の休憩を挟み、終演は20時40分頃。

最初にストラビンスキー音楽、ミハイル・フォーキン振付の「火の鳥」。2010年に初演されたものだが、初めて見た。火の鳥は小野絢子でイワン王子は奥村康祐。振付、衣装ともオリジナルに近いものを再現した舞台らしい。ストラビンスキーの音楽は何度も聞いていたが、舞台で踊りを見ると、踊りの動きと音楽がピタリと合っているので、音楽、振付ともよく練り上げられたものだということがわかった。前半は火の鳥と王子の出会い、中盤は魔法をかけられた王女たちとの出会い。後半は魔物や大魔王がたくさん出てきて群舞が展開される。この後半の群舞がめっぽう面白かった。王子は魔王に襲われるが、火の鳥が助けに来て魔物たちを踊らせて、最後は魔法の源となっている大きな卵を割って、魔法は解かれ、王子と王女の結婚式となる。後半の衣装美術が素晴らしい。こういうバレエは退屈しないので、どんどんとやって欲しいものだ。

休憩の後の後半はウィリアム・フォーサイスの「精確さによる目眩くスリル」。これはシューベルトの曲に乗せて、素早い動きが連続する小品。米沢唯、渡邊峻郁ほかの踊り。何しろ早い動きが連続して続き、いろいろな動きで踊る。物語は全くなく、テクニックだけのダンスだが、退屈する前に終わる短い演目なのが良い。米沢唯は心臓に問題がありドクターストップがかかった時期があったが、こんな激しい踊りを踊って大丈夫か心配になった。

最後は、ハラルド・ランダーの振付による「エテュード」。チェルニーのピアノ練習曲をオケに編曲した音楽に乗せて、バレエの練習風景を見せる。最初はバー・レッスンで。バレエの基本的なポジションやテクニックを次々と見せていく。音楽をうまく使って、対位法的な音楽に乗せて、いくつかのグループが脚の動きを見せたりする。振付のランダーはデンマーク出身で、ブルノンヴィルを踊っていたらしいので、細かい脚の動きが出てきて、良く見ていると面白い。物語はないが、基本的なテクニックからだんだんと難しいテクニックに移っていくので、さしずめ、「プリマの誕生」を見るような気分となった。プリマ役は木村優里。

一晩で、小野絢子、米沢唯、木村優里の3人を見ることができるのは素晴らしい。3人とも素晴らしいが、小野絢子の品格、米沢唯の躍動感、木村優里の成長ぶりを改めて感じた。

すっかり良い気分となり、帰りがけに英国風のパブでビールを飲む。エール・ビール、フィッシュアンドチップス、タコとポテト・卵のサラダ、チョリソーと生ハムなど。

飲み足りなかったので、家に帰ってプーリアの赤ワインと、ブリー。

東フィルのストラビンスキーとヒンデミット

2025-03-13 10:50:09 | 音楽
3月12日(水)の夜に東京オペラシティで東フィルを聴く。7時開演で、15分間の休憩を挟み終演は8時35分頃。7割程度の入り。

プログラムは前半がストラビンスキーの「ペトルーシュカ」で、休憩後にウェーバーの「オベロン」序曲、最後にヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」だった。

もともとは、アンドレア・バッティストーニの指揮の予定だったが、張り紙の説明によるとバッティストーニがミラノ駅の階段で右肩脱臼の事故があり、医師の指示で指揮活動ができないとのことで代理の指揮者となった。

代理に立ったのはケンショー・ワタナベで、日本生まれだが米国育ちで現在も米国中心に活躍しているらしい。メトロポリタンで「ラ・ボエーム」を振るということなので、それなりに評価されているのだろう。

今回のプログラムは、バッティストーニがストラビンスキーのバレエ音楽を振るということで構成されたようだが、ストラビンスキーもヒンデミットも曲そのものが熱気に包まれるような熱量の高い音楽だった。音楽の熱量は高いのだが、指揮ぶりは結構クールな印象で、淡々とリズムを刻んだ印象。その結果、大音響で響く音楽の割には盛り上がりを欠いた演奏となった。やはり代役というのは難しいものだなあと思った。

それでも、ペトルーシュカは、これまでバレエで見ていたので、踊りに気をとられて、どんな音楽が鳴っているのかあまり気にしたことがなかったが、改めて音楽だけで聴くと、いかにもストラビンスキーらしい響きがあり、なかなか面白いと感じた。

帰りがけにいつものスペインバルで食事。ハモンセーラの、トルティージャ・エスパーニャ、牡蠣のアヒージョ、タコのガルシア風、イワシのエスカベッシェ、豚皮の唐揚げなど。ワイン各種。