「彼らはウジヤ王の前に立ちふさがって言った。『ウジヤよ。主に香をたくのはあなたのすることではありません。香をたくのは、聖別された祭司たち、アロンの子らのすることです。聖所から出てください。あなたは主の信頼を裏切りました。あなたには、神である主の誉れは与えられません。』」(Ⅱ歴代誌26:18新改訳)
ダビデから十二代目の王ウジヤは16歳でその地位についた。すぐれた資質の持ち主で、敬虔な信仰教育をほどこした指導者ゼカリヤの生きている間は、よく神に従ったので、神も彼を栄えるようにされた(26:5)。戦いにも連戦連勝したため、その名は遠くまで鳴りひびいた。すなわち、ペリシテ人、アラビア人、メウニム人、アンモン人も彼に服し、エルサレムをはじめ、国内の防備を固め、新しい兵器を考案し、強力な軍隊と装備を充実させたのである。▼だが名声が高まるにつれ、ウジヤは次第におごり高ぶるようになった。神によって成功したのに、自分の能力や手腕がすぐれているからこうなったのだ、と自分に栄光を帰し、「鼻高々」になったのである。周囲の人々も、彼をほめたたえ、称賛したにちがいない。▼こうして「自分にできないことはない」と過信するようになった彼は、あるとき、祭司以外は入室を禁じられていた神殿に入り、勝手に香をたこうとした(26:16)。エルサレム神殿の聖所に入ることは、たとえ王と言えども律法できびしく禁じられていた。それは祭司だけにゆるされた行為だったのである。これを見ておどろいた祭司アザルヤは八十人の祭司たちと共に後を追いかけ、神殿からすぐ出るようにいさめた。アザルヤとしては決死の覚悟でそうしたと思われる。万一ウジヤが死を命じれば、彼は死んだからである。▼「だまれ。私に逆らうのか」と烈火のごとく怒ったウジヤは、やめずに聖所内の香壇に香炉をもって近づこうとした。しかしそのとたん、額にツァラァトが生じたではないか。王は瞬間的に神から撃たれたのだ。並みいる祭司たちはおどろき、ウジヤ自身も自分が神に罰せられたことを悟った。ツァラアトに感染した者はなんびとといえども、ユダヤ社会では追い出され、隔離される。彼はただちに神殿から出され、以後、汚れた王として隔離された家に住み、さびしくその生涯を終えた。52年間、ダビデやソロモンよりも長く王位にとどまったとはいえ、後半は息子ヨタムが実務に当たり、名前だけの王であった。主をあがめず、自分自身に栄光を帰し、うぬぼれるほど恐ろしい罪はない。しかし何と多くの人々がこの罪におちいり、むなしく生涯を終えることか。▼ただ、謙遜のご実体であられるキリスト・イエスを宿し、羊のようにそのあとについて行くことだけが信仰生涯を全うする道である。