酒のさかな

平凡な笑市民が日ごろの暮らしの中で出会ったこと
【縦横無尽探険隊別館】

ネガティブ・データ!

2013-04-09 21:56:02 | ことば系
決して「プラチナデータ」のパクリではない。

何か問題が発生すると、皆さん発生した事象ばかりにとらわれてしまう。
実は、問題というのは通常に対する相対事象なのであるから、「問題がない部分」または「事象の裏側で何が起こっているか」を探すことが必然的に問題の本質を理解することにつながる。
これが、極意中の極意【ネガティブデータ】だ。

「あのー教えてください」
『ハイハイどんなご相談ですか?』
まるでラジオの子供相談室みたいな出だしだが・・・

「薬にはほとんど有効期限が書いてありますが、有効期限が書いていない薬はいつまで使っていいかの判断をどうすればいいのでしょうか?」
『ムムム・・・』
・・・実はこれは結構難しい質問なのである。

説明の前に、まずは有効期限の意味から考えてみよう。
有効期限とは、薬事法に定める「使用の期限」というやつ。
3年以上期間がある薬については、表示しなくてもよい。
最近は、3年以上であっても「品質保証期間」などとして表示してある場合も多い。
有効期限は、その医薬品の規格をすべて満たすことができる期間で設定してある。

しかし一般の人は、有効成分がもつ期間だと勘違いしている。
もちろんそれは有効期限の本質のひとつである。
ちなみに一般的な医薬品の含量規格は95%~105%とされている。
よって、95%を切らない期間が有効期限として設定してある。
(あくまで一般的な医薬品の場合)

こんなイメージか。
皆さんの考えは、95%の効果しかなければ「医薬品としてはもはや使えない」と。

これは全く違う。
そもそも、医薬品の承認申請に必要な臨床データの有効性は、たった15%あればいいと言われてきた。
(私が若かりし頃、つまりずっと昔ね。今も似たようなものだと思う)
実はプラセボ効果による有効性に、プラス15%の明らかな有効性の上乗せがあれば、有効性ありと認められるのである。
プラセボ効果は実に60%の有効性があるとみなされていた。

つまり医薬品が「95%の効果だから使えない」なんてありえないのだ。
だって、プラセボだって60%あるのよ。
成分100%からたった5%の減少で、有効性を問題にする必要は・・・ない。
薬の有効期限って「効かなくなる」ことが理由じゃないことは明らかなのである。

そう
問題なのは、図で示した黄色の「劣化」部分。
有効成分については、動物実験から健康人への影響、臨床試験での副作用まで、安全性は十分に確認されている。
しかし、有効成分が劣化分解(化学変化)した物質については全く(でもないが^^;)確認されていないのである。
95%というのは、およそ有効成分10%程度の分解物なら重大な悪影響を与えないだろうとの経験値から出されたものなのである。
(よって、95~105%でない含量規格を設定した医薬品については、規格幅によって分解物の安全性データを求められる)

さて、先ほどの質問。
「有効期限が書いてないものはいつまで使えるか?」
前提がなければ、私なら『3年』と答えるだろう。
それ以上は、メーカーにコッソリ教えてもらうか、自分で全ての規格試験をしてその医薬品の規格を下回っていないことを確認するしかない。

単純に【少々規格割れでも十分効くから大丈夫】って考えで終わるようでは、まさにネガティブデータの極意が理解できない浅いアタマの持ち主だと言えよう。
『あなたは、その不純物が安全だと言えますか?』