近江守公忠のぬしの下るにおくる
わかれをしき みちにまだわが ならはねば おもふこころぞ おくれざりける
別れ惜しき 道にまだわが ならはねば 思ふ心ぞ おくれざりける
近江守公忠が任地に下るのに際して贈った歌
旅立つ人との名残惜しい別れの場に私はまだ慣れていないので、あなたを思う私の心は、取り残されまいとあなたについて行ってしまいますよ。
第五句の「おくる」は「遅る」で、ここでは取り残される意です。
この歌は、続後撰和歌集(巻第十二「恋二」 第1278番)に入集しており、そちらでは初二句が「わかれをし きみにまだわが」とされています。