ひとはいさ われはむかしの わすれねば ものへとききて あはれどそおもふ
人はいさ われはむかしの 忘れねば ものへと聞きて あはれとぞ思ふ
他の人はいざ知らず、私は昔のことを忘れないので、あなたさまが遠くへ行くと聞いて、寂しく思います。
同じ詞書(734)による三首目の歌。「ひとはいさ」と聞けば、あまりにも有名な歌が思い出されますが、あちらは「人」と「花」との対比、こちらは「他の人」と「自分」の対比ですね。
ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
(古今集 0042、貫之集 790)