橘公頼の帥の筑紫へ下るとき、その日阿波守敏貞朝臣、継母の典侍におくるものどもに加へたる歌
くすり
しばしわが とまるばかりに ちよまでの きみがおくりは くすりこそせめ
しばしわが とまるばかりに 千代までの 君がおくりは くすりこそせめ
橘公頼(たちばな の きんより)の帥が筑紫へ下るとき、その当日に公頼の子の阿波守敏貞朝臣が継母である典侍に贈った品にそえて詠んだ歌
くすり
もうしばらくここに留まる私に代わって、この薬こそがいつまでもあなたさまを見届けてくれることでしょう。
「帥」は太宰権帥(だざいのごんのそち。大宰府の長官とは別に仮に任ぜられる官位。)の意。
同じ詞書での歌が「くすり」の721(本歌)、「かづら」の 722、「装束」の 723 と三首続きます。