源公忠朝臣の近江守にて下るによめる
ねになきて わびしとおもはぬ ほどなれど つねのこころに かはりけるかな
音に泣きて わびしと思はぬ ほどなれど つねの心に かはりけるかな
源公忠朝臣が近江守として任地に下るにさいして詠んで贈った歌
声を出して泣くほどわびしいと思う別れではないけれど、普段とは異なる心持ちであるよ。
738 と同じく源公忠の赴任に際しての離別の歌ですが、あらためて詞書を付しています。また、別れの歌といえば時に大げさなまでに別れを惜しむ気持ちを歌ったものが多いですが、この歌は、「泣くほどではないが普段とは違う」と、一歩引いたような表現にとどめているのが印象的です。