陸奥守藤原有時がむまのはなむけ、宰相の中将のしたまふに、よめる
みてだにも あかぬこころに たまぼこの みちのおくまで ひとのゆくかな
見てだにも あかぬ心に 玉ぼこの 陸奥まで 人の行くかな
陸奥守藤原有時の旅立ちのはなむけの宴を、宰相の中将が催した際に詠んだ歌
あなたと逢っていても十分と思えない私の心なのに、遠く陸奥へ旅立ってしまわれるとはとても辛いことです。
藤原有時(ふじわら の ありとき)は詳細はわかりませんが、551 の歌が拾遺和歌集では藤原有時作とされ、同集にさらにもう一首入集歌があります。「宰相の中将」は藤原師輔(ふじわら の もろすけ)のこと。「たまぼこの」は「道」に掛かる枕詞で、ここでは同音の「みち(のく)」に掛かっています。
この歌は、新古今和歌集(巻第九「離別」 第861番)に入集しており、そちらでは第五句が「ひとのゆくらむ」とされています。