【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「キッズ・オールライト」

2011-05-10 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

奥さまの名前はジュールス。そして、だんな様の名前はニック。ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をし、ごく普通の子どもたちが生まれました。でも、ただひとつ違っていたのは……。
だんな様は女だったのです!
女二人が一緒になってどうやって子どもを産むんやねん、と思ったら人工受精だと。
で、精子バンクから同じ男性の精子をもらって二人がひとりずつ子どもを産む。
なんか、ドロドロした物語になりそうなんだけど、場所が陽光降り注ぐカリフォルニアだからか、あっけらかんとした感じで、子どもたちも屈託なく育つ。
いまや、姉は大学入学直前、弟は高校生になっているんだけど、どちらも素直ないい子。映画はそこから始まる。
家族だんらんのシーンなんて、ほんと、ありふれたファミリーにしか見えない。
女同士が一緒になっても、子どもができると、家族の中の役割はお父さんとお母さんに分かれるんだなっていうのがわかっておもしろい。
母親、父親って、性別の違いじゃなくて、家族という枠組みの中の役割の違いだったたんだな。
ところが、そこへ精子提供者の男性が現れて、平和な家庭にさざ波が立つ。
アメリカではあんなに簡単に精子提供者の素性が知れるのかと思うと驚きだけど、その男性が気の置けない、いいやつだったっていうのが、またおもしろいところでね。
ジュールスが彼にひかれたりして、さあて、いよいよドロドロの物語になっていくのか。
男性の登場で、家族の中で父親の役割を果たしていたニックがだんだん浮いた存在になっていくっていうのも、自然な成り行きだな。
さあ、これで家族は崩壊していくのか。
……と思わせといて、最後には、どこの家庭だって他の家庭とは違う固有の事情を抱えているんだよねえ、と意外に爽やかな展開になったりする。
暗い話にならないのは、やっぱり、カリフォルニアの陽光のせいかしら。住む土地って大事ね。
「あそこの父親は女なんだぜ」って後ろ指差されたら、こう言い返してやればいいんだよな、「誰にだって欠点はある!」。
「お熱いのがお好き」じゃないっちゅうの。