【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ウォーリー」:亀戸六丁目バス停付近の会話

2009-01-10 | ★錦25系統(葛西駅~錦糸町駅)

火事のときに活躍する消防車って頼もしいわね。
でも、火事のときって、実は後片付けが一仕事なんだよな。
そんなとき、ウォーリーみたいなお掃除ロボットがいたらいいんだけどね。
そりゃ、名案だ。何しろ、ウォーリーは人類が逃げ去った地球で、人類が後片付けを放棄したゴミを片付けようと、700年間もひとりぼっちで黙々と働いているっていうんだから。
けなげよねえ。その設定だけで、好感持っちゃうわよね、ピクサーの新作「ウォーリー」。
設定もそうだけど、ピクサーだけに、このロボットの細かな動きひとつひとつに血が通っていて、びっくりするくらいすばらしい。
まったく喋らないんだけど、眼や手のちょっとしたしぐさだけで、寂しさや喜びや微妙な気持ちの揺れが手に取るように伝わってくる。
眼なんて実はただの双眼鏡だぜ。ただの双眼鏡だけで、あれだけ豊かな表情をつくりだせるなんて奇跡としか言いようがない。
ほんと、ほんと。これから双眼鏡を見る目が変わっちゃうわ。
人間的な情感があふれる描写は、CGアニメだってことを忘れさせてしまうほどだ。
そして、誰もいない荒涼とした地球を黙々と一人行く後ろ姿。
孤高のロボット!
寂寥感と凛々しさを同時に感じさせて、もう、たまんないわよね。
突飛な連想だけど、チャップリンの無声映画を思い出してしまった。
そういえば、手と手が触れ合うなんてモチーフは、チャップリンの「街の灯」のラストみたいだもんね。
そうだよ!
ど、どうしたの?いきなり大声出して。
そうだよ、あのロボットたちは「街の灯」のカップルなんだよ。この気持ちの高まりは「街の灯」を観たときの高まりと同じなんだよ。
それは言いすぎじゃない?
そうか?
後半は一転して、スリルとサスペンスの連続。
これはもう、ピクサーおてのものの世界だ。
それだけに後半はちょっと新鮮さが薄れたかな。
いやいや、何でも機械がやってくれる宇宙船の中に住んで足が赤ん坊のように退化した人間なんて、人類の行き先を暗示するようでぞっとする。
「2001年宇宙の旅」みたいなシーンもあったしね。
そうだよ!
ど、どうしたの?またまた大声出して。
そうだよ、あの監視の赤い眼は「2001年宇宙の旅」じゃないか。「ツァラトゥストラかく語りき」まで入ってたし。
そんな大発見みたいな大声出さなくても、みんながそう感じるシーンだと思うけど。
あ、そう?
そういう大声は、火事のときにでも出してよ。
「ウォーリー」は火事のように俺の心に火をつけたってことだよ。
火事というより、ぽっと暖かい炎が灯ったっていう感じだけどね。



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「K-20 怪人二十面相・伝」:亀戸七丁目バス停付近の会話

2009-01-07 | ★錦25系統(葛西駅~錦糸町駅)

ちょっと作ってもらいたいものがあるんだけど、この鉄鋼会社で作ってもらえないかしら。
何を作ってもらいたいんだ?
決まってるじゃない、「K-20」の中で空中を飛んでたヘリコプターもどきの金属的な乗物よ。
ああ、風をはらんでなんとも気持ちよさそうだったよな。
あの乗物が東京の上空を飛ぶシーン、もっともっと観ていたかったな。
それじゃあ、まるで宮崎駿の世界になっちゃうじゃないか。
というか、「K-20」って本来なら宮崎駿をはじめとするアニメの世界になるところを実写とCGでやってみました、っていう映画よね。
「ルパン3世」とか「天空の城ラピュタ」とか、アニメおたくじゃなくても、いろんなシーンが思い浮かぶ。
必見はなんといっても、あのファーストシーン。第2次世界大戦がなかったという設定の架空の昭和東京のパノラマ。気が遠くなるほどの精密さ。
あれでスタッフは80%の体力を使っちゃったか?
いえいえ、普通はアニメでしかやらないだろうというところ、CGとはいえあれだけの世界をつくるなんて、たまげたもんよ。
ALWAYS 続・三丁目の夕日」の冒頭、怪獣の登場シーンに匹敵する出来だ。
だって「ALWAYS」の技術スタッフでしょ。あの映画で培った技術が生きてるってことよね。
その中で繰り広げられる怪人二十面相とか、明智小五郎とか、少年探偵団とか、華族の令嬢とかのてんやわんやは、特別新鮮なものじゃないけど、正月気分で肩肘張らずに楽しむにはうってつけかもな。
内容は「バットマン・ビギンズ」ならぬ「怪人二十面相ビギンズ」っていう映画なんだけど、扮するのが金城武だから「ダークナイト」の世界みたいに暗い魅力は湛えない。
ここにヒース・レジャーでも出てくればまた違った魅力を持つ映画になったんだろうけど、老若男女に楽しんでもらいたい映画だからそうはならない。
あくまで明るい娯楽映画。
でも、このスタッフの実力を見ると、次回はぜひ、対象をおとなにしぼった映画もつくってほしくなる。
「K-20」の「R-20」版ね。
なるほど、R-18じゃなくて、R-20か。
そのとき、宿敵・明智小五郎は復活するのか。
少年探偵団は、根暗な青年探偵団になってしまうのか。
期待に胸がふくらんじゃうな。
えっ、ふくらむほどの胸、あったのか?
って、なんだか話題もR-20っぽくなってない?



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「ブロークン・イングリッシュ」:亀戸九丁目バス停付近の会話

2009-01-03 | ★錦25系統(葛西駅~錦糸町駅)

なんておしゃれなマンション壁面!
そうかあ?なんか、おしゃれの真似してみました、みたいな感じでいまいちのセンスだぜ。
そうかしら。
ああ、そうとも。映画でいえば「ブロークン・イングリッシュ」みたいなさ。
あら、それはないでしょう。「ブロークン・イングリッシュ」のおしゃれ感は本物だと思うわよ。
どうかなあ。ニューヨークに暮らす30過ぎの女が結婚したくてデートを繰り返すうちにいい男を見つけるなんて話じたい、オールド・ファッションだろう。
そういうありふれた話をいかにセンスよく仕立てるかが、監督の腕の見せ所よ。
でも、見るからにおしゃれって感じじゃなかったぜ。
そう、そう。そのさりげなさがいいのよ。デートで行く日本料理店とか古いシネマとか、新鮮ではないけど、観ていて疲れない程度のおしゃれ加減。
ま、ニューヨークの空気感は、何度映画で観ても気持ちいいけどな。
パリの光景だって、気持ちよかったわよ。
そう、そう。最後はパリに行っちゃうんだよな。ニューヨークではもう幸せは見つけられない、ってか?
ブロークン・イングリッシュだからね。
監督のゾエ・カサヴェテスは、「グロリア」のジョン・カサヴェテスの娘だっていうから、硬派な映画を期待しすぎちゃったかな。
あー、そういう見方したらダメかもね。むしろ、ソフィア・コッポラ系の映画だもんね。
でも、ジーラ・ローランズとか出てるんだぜ。
あのおばあちゃんは、存在感があって素敵だった。そういうところがさりげなくおしゃれなのよ。
それは別に監督のせいじゃないだろう。ジーラ・ローランズなんて何に出てたって素敵なんだから。
要するにあなたはこの映画、気に入らなかったわけ?
いやいや、そんなことはないさ。あの主演女優。ああいう、いわゆる美人ではなく、でも個性的な女優を配役する監督のセンスには感心したよ。
でしょう?傑作とはいえないかもしれないけど、憎めない恋愛コメディだと思うわよ。
ソフィア・コッポラ監督ほどあざとくないしな。
そう、あのマンション壁面みたいにさりげない。
さりげない?あの壁面は、どう見てもあざといんじゃないの?
うーん、今年も意見が合わないなあ。



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「ワールド・オブ・ライズ」:浅間神社バス停付近の会話

2008-12-27 | ★錦25系統(葛西駅~錦糸町駅)

こういう自動車販売会社もいまは大変よねえ。
とくにアメリカのビッグスリーとかは大変らしいぞ。
アメリカも自分の国が火の車なんだから、よその国で嘘のつきあいなんてしている場合じゃないわよね。
そういう目で観てたのか、中東でのアメリカCIAの暗躍を描いた「ワールド・オブ・ライズ」を。
うん。まったく、こんな嘘をつきあってまで、よその国でよけいなことする必要ないんじゃない、っていうのが私の素朴な感想ね。
だけどこの映画、戦争の意義について語る映画じゃないぜ。
単なる娯楽映画だっていうのは私だってわかってるわよ。でも、中東には、もっと複雑怪奇な嘘がいっぱい渦巻いているはずなのに、この時代、この程度の嘘のつき合いじゃあお人よしって言われてもしょうがないんじゃないの?
いくら娯楽映画とはいえ、リアルな状況を背景にしているんだから、もっとリアルな感覚があってもよかったんじゃないかってことか。
宇宙とか古代とか荒唐無稽な世界を題材にしているわけじゃなく、いまここにある薄気味悪い世界を題材にしているんだから、もう少し歪んだ匂いがしてもいいんじゃないかと思うわけよ。
たしかに、中東の駆け引きはあんなわかりやすいもんじゃないだろうって思うもんな。
監督がリドリー・スコットだから観ていてあきないけど、ブライアン・デ・パルマの「リダクテッド」とか観たあとだと、中東の闇はこんなもんじゃないぞ、ってどうしても思っちゃうのよねえ。
娯楽映画を社会派映画の「リダクテッド」と比べるのもどうかとは思うけど、二つの映画の共通点といえば、みんな、映像の中で戦争をしているってところかな。
そうね。「リダクテッド」がホームビデオとかテレビのインタビュー映像とかインターネット映像とか、すべて映像を通して物語を語っていったのにちょっとイライラしたけど、「ワールド・オブ・ライズ」で指揮官たちがみんな現地ではなく、大画面映像で戦闘の模様を眺めているのを観るにつけ、最近の戦争はそういう肌感覚のないところで進んでいくんだなあ、ブライアン・デ・パルマは全編を通してそれを訴えたかったんだなあ、っていまごろ見直しちゃったわ。
「ワールド・オブ・ライズ」もそこまでのギミックはないけど、とにかく指揮官たちは映像の中の戦争を観て傍観者のように判断する。実はそれがいちばん恐かった。
傍観者といえば、CIAの上司のラッセル・クロウなんて、アメリカ本土で子どもの学校への送り迎えとかしながら、中東で戦っている部下のデカプリオに携帯で指示するんだから、ひどいもんよね。
異常と日常の垣根を飛び越えてしまう。あきれたもんだ。
でも、リドリー・スコットのめざすのは娯楽映画だから、結局は中途半端なロマンスへ話を収斂させてしまう。
いけないか?
いけないわよ、中途半端は。それこそ、映画自体が嘘っぽく、文字通り「ワールド・オブ・ライズ」な映画に見えてきちゃうじゃない。
わかった、こんどリドリー・スコットに会ったら言っとく。
って、そんなチャンスあるの?
ないけど。



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「その木戸を通って」:中川新橋バス停付近の会話

2008-12-03 | ★錦25系統(葛西駅~錦糸町駅)

都心にしては優雅な土手の昼下がりね。
昔の人々もこういうところを往来していたのかな。
「その土手を通って」・・・。映画のタイトルにでもなりそうな感じね。
それを言うなら、「その木戸を通って」だろ。
あ、そうそう。市川崑監督の最新作。
市川崑はもう亡くなっているんだから、最新作ってわけじゃない。1993年に作られていたのにこれまでほどんど上映される機会がなかっただけだ。
15年前!どうりで、浅野ゆう子が若い、若い。「OLにっぽん」の彼女とは雲泥の差。
江戸時代の下級武士、中井貴一の家にふらっとやってきて住みついてしまい、またふらっと出て行ってしまう素性の知れない女。
実は彼女は月から来た女、満月の夜には月に帰らなければいけないのでした。
・・・なんて話なわけないだろ。ただ、どこからともなく来て、侍との間に子どもをもうけ、どこへともなく去っていく。ただそれだけの話なんだから。
波乱万丈のストーリーが展開されるわけじゃない地味な話だから、長い間公開されなかったのかもしれないわね。
その分、映画は当時の下級武士の生活を丹念に追っている。城での仕事のやりかたや、家の造りなんて観ていて興味深いものがある。
山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」や「武士の一分」から派手な斬り合いの部分を除いて生活の部分だけ抜いてきたような映画ね。
あれよりもこっちのほうがずっと以前に完成しているんだけどな。
才気煥発な市川崑監督にしては、じっくりと腰を落ち着けて撮っている。
日本で最初にハイビジョン・カメラで撮った映画だっていうから、制約も多く、あまりカメラを振り回すこともできなかったのかもしれないな。
でも、ハイビジョン・カメラで撮っただけのことはある美しい映像。
あの、黒光りする柱!
風に揺れる緑の竹の葉!
細部をじっくり味わう、落ち着きのある映画だった。
たまにはこういう映画があってもいいわね。
たまには優雅な土手の昼下がりがあってもいいようにな。



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