Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラザレフ&日本フィル

2009年06月22日 | 音楽
 首席指揮者ラザレフ&日本フィルによる「プロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクト」の第2弾。
(1)チャイコフスキー:組曲第4番「モーツァルティアーナ」
(2)モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番(ヴァイオリン:ニコラ・ベネデッティ)
(3)プロコフィエフ:交響曲第2番

 チャイコフスキーの曲は、モーツァルトのピアノ曲のオーケストラ編曲版だが、その選曲の渋さに感心してしまう。第1曲の原曲はK.574の「小さなジーグ」、第2曲はK.355の「メヌエット」、第3曲はK.618の「アヴェ・ヴェルム・コルプス」(リストによるピアノ編曲版)、第4曲はK.455の「主題と変奏」。
 ――思い出話になって恐縮だが、私が大学生だったころ、大枚をはたいてギーゼキングの弾いたモーツァルトのピアノ曲全集(輸入盤LP11枚組!)を買った。その中ではじめてK.574の「小さなジーグ」をきいたときの驚きは今でも覚えている。なんだかシェーンベルクのようなモダンな感じがした。
 K.455の「主題と変奏」も印象に残った。主題はグルックのオペラ「メッカの巡礼」の中のアリア。当時は知らなかったが、近年、ガーディナー指揮リヨン歌劇場のCDをきいたときの驚き!話のプロットが「後宮よりの逃走」とそっくりだし、序曲もよく似ている。作曲はモーツァルトのほうが後だ――。
 ラザレフのお陰で、日本フィルにはアンサンブルを整えようとする意識が感じられ、すべての音が同じ方向を向いていた。

 ヴァイオリン協奏曲第3番は、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の中でも屈指の名作だが、ベネデッティの演奏のツボはつかみかねた。アンコールにイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番から第2楽章が演奏されたが、これは面白かった。

 プロコフィエフの交響曲第2番は、意図的にスキャンダルを狙ったふしのある、あざとい作品だが、そんなことを感じさせない名作にきこえた。ラザレフ&日本フィルのよく踏み込んだ、かつ、見通しのよい演奏のゆえだと思う。
 この曲の初演時には、大方の人々は冷淡に受け止めたが、作曲家プーランクは高く評価したと伝えられている。そのプーランクは、後年、次のように語っている(「プーランクは語る」千葉文夫訳、筑摩書房刊)。

 「ストラヴィンスキーはおそるべき革新者でしたが、プロコフィエフは革新者ではなかったですね。でも、だからどうだというのでしょう。シューベルトだって革新者ではなかった……。シューベルトがいなかったとしても音楽の流れは変わりはしない。優れた音楽家であっても革新者ではないというケースがありうるのです……。」

 シューベルトを引き合いに出したこの言葉は、私には核心をついているように感じられるが、皆さんはどうでしょう。
(2009.06.20.サントリーホール)

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