Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

下野竜也/東京シティ・フィル

2012年12月15日 | 音楽
 東京シティ・フィルは宮本文昭音楽監督になって、路線がガラッと変わった。宮本さん自身も振るが、それ以外の月は、日本の第一線の指揮者が入れ替わり立ち替わり振るようになった。常任指揮者が空席なので、適任者を探す意味もあるのかもしれない。

 今までに、尾高忠明さんがエルガーで、秋山和慶さんがラフマニノフで、広上淳一さんがハイドンとモーツァルトで登場した。皆さん得意のレパートリーだ。今月は下野竜也さんが登場。プログラムは一味ちがって、アグレッシヴなものだった。

 1曲目はハイドンの交響曲第28番。数あるハイドンの交響曲のなかでなぜこの曲が選ばれたか、知るよしもないが、ともかくハイドンらしい快活な曲だ。第3楽章にけたたましい音響がある。ハイドンらしいウイットが感じられた。こういう曲を聴いていると、ハイドンの100曲以上ある交響曲は、皆面白いのではないだろうかという気がする。

 演奏もよかった。しっかり組み立てられて、見通しがよく、快活な演奏だった。曲も快活だが、演奏も快活だった。

 2曲目はシェーンベルクのピアノ協奏曲。以前シェーンベルクがプログラムにのったことはあるだろうか。ちょっと思い出せない。それくらいこのオーケストラはシェーンベルクから遠のいていた気がする。それがいきなりピアノ協奏曲。ヴァイオリン協奏曲とならんで奥の院的な曲だ。実は少し不安だった。

 だが、その不安はものの見事に外れた。メリハリの利いた、雄弁な演奏だった。もちろん下野さんの的確な棒あってのことだが、一方ではこのオーケストラの、在京オーケストラでは随一の熱い音の故でもあった。こんなに血の通ったシェーンベルクは、他のオーケストラでは難しいかもしれない。

 ピアノ独奏は野田清隆さん。シェーンベルクのピアニズムに浸らせてくれる演奏、といったらいいだろうか。シェーンベルクのピアノの音を堪能した。

 3曲目はモーツァルトの交響曲第28番。第25番や第29番ならともかく、第28番は珍しい。1曲目と符合させたユーモアだろう。これも快活な、しかも安定感のある演奏だった。

 最後はベルクの「ルル」組曲。第1曲ではもう少し甘美な音色がほしいと思ったが、それ以降はドラマティックな演奏に引き込まれた。ソプラノ独唱は半田美和子さん。歌も容姿もルルに相応しい。いつかこの人の「ルル」を観てみたいと思った。
(2012.12.14.東京オペラシティ)

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