高橋アキのピアノドラマティックVol.9、「モートン・フェルドマンとその系譜」。メインプロが「トライアディック・メモリーズ」とあれば聴かない手はない。気合を入れて出かけた。
1曲目はバニータ・マーカスの「…バット・トゥ・ファッション・ア・ララバイ・フォー・ユー…」…but to fashion a lullaby for you…(1988/1998)。フェルドマンの「バニータ・マーカスのために」でその名を聞いているバニータ・マーカスだが、作品を聴くのは初めてだ。実に美しい曲。この曲のCDは出ているのだろうか。もし出ているなら、手元に持っていたいと思わせる曲。
初めはフェルドマン的な静謐な音調で始まるが、やがてポピュラー音楽的な甘いメロデイーが出てくる。そこに楔のような音が打ち込まれる。長い休止があり(亡くなったフェルドマンにささげる黙とうのようだ)、最後に「子守唄」が奏される。
2曲目はバーバラ・モンク=フェルドマンの「ソフト・ホライズン――ケベック州ガスペズィ」SOFT HORIZONS-Gaspesie Quebec(2013)。フェルドマンが亡くなる直前に結婚した人。この人の作品も初めてだ。茫洋とした音のつながりが、1曲目の「…バット・トゥ~」よりフェルドマン的だ。
3曲目は藤枝守の「パターンズ・オブ・プランツ・イン・ア・クロマティック・フィールド」Patterns of Plants in a Chromatic Field(2013)。フェルドマンに学んだことがある藤枝氏だが、この曲はフェルドマンからは遠い。前2曲に比べると大きな音で、流れがあった。この曲が一番普通の感覚で聴けたともいえる。
休憩をはさんで、4曲目がフェルドマンの「トライアディック・メモリーズ」。1曲目と2曲目に比べると、音に劇的なインパクトがある。やはりちがうと思った。集中して聴いていたが、――凡人の悲しさというべきか――最後まで続かなかった。音のパターンが崩れ、変化し、糸の切れた凧のように浮遊し始めて、どこへともなく彷徨っていくうちに、集中力がもたなくなった。
高橋アキはさすがだった。わたしよりも年上のはずだが、その容姿と同様に演奏も若々しい。これはもう嬉しくなってしまう。音は瑞々しいし、感覚もそうだ。昔と少しも変わっていない。驚くべきことにアンコールがあった(曲名は聞きとれなかった)。これは普通に現代音楽的な曲。「トライアディック~」で凝った肩をほぐしてくれた。
(2013.4.12.東京オペラシティリサイタルホール)
1曲目はバニータ・マーカスの「…バット・トゥ・ファッション・ア・ララバイ・フォー・ユー…」…but to fashion a lullaby for you…(1988/1998)。フェルドマンの「バニータ・マーカスのために」でその名を聞いているバニータ・マーカスだが、作品を聴くのは初めてだ。実に美しい曲。この曲のCDは出ているのだろうか。もし出ているなら、手元に持っていたいと思わせる曲。
初めはフェルドマン的な静謐な音調で始まるが、やがてポピュラー音楽的な甘いメロデイーが出てくる。そこに楔のような音が打ち込まれる。長い休止があり(亡くなったフェルドマンにささげる黙とうのようだ)、最後に「子守唄」が奏される。
2曲目はバーバラ・モンク=フェルドマンの「ソフト・ホライズン――ケベック州ガスペズィ」SOFT HORIZONS-Gaspesie Quebec(2013)。フェルドマンが亡くなる直前に結婚した人。この人の作品も初めてだ。茫洋とした音のつながりが、1曲目の「…バット・トゥ~」よりフェルドマン的だ。
3曲目は藤枝守の「パターンズ・オブ・プランツ・イン・ア・クロマティック・フィールド」Patterns of Plants in a Chromatic Field(2013)。フェルドマンに学んだことがある藤枝氏だが、この曲はフェルドマンからは遠い。前2曲に比べると大きな音で、流れがあった。この曲が一番普通の感覚で聴けたともいえる。
休憩をはさんで、4曲目がフェルドマンの「トライアディック・メモリーズ」。1曲目と2曲目に比べると、音に劇的なインパクトがある。やはりちがうと思った。集中して聴いていたが、――凡人の悲しさというべきか――最後まで続かなかった。音のパターンが崩れ、変化し、糸の切れた凧のように浮遊し始めて、どこへともなく彷徨っていくうちに、集中力がもたなくなった。
高橋アキはさすがだった。わたしよりも年上のはずだが、その容姿と同様に演奏も若々しい。これはもう嬉しくなってしまう。音は瑞々しいし、感覚もそうだ。昔と少しも変わっていない。驚くべきことにアンコールがあった(曲名は聞きとれなかった)。これは普通に現代音楽的な曲。「トライアディック~」で凝った肩をほぐしてくれた。
(2013.4.12.東京オペラシティリサイタルホール)