Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブロムシュテット/N響

2022年10月23日 | 音楽
 ブロムシュテット指揮N響のCプロ。曲目はシューベルトの交響曲第1番と第6番だ。N響のCプロはショート・プログラムになったので、わたしはCプロの定期会員をやめたが、今回は1回券を買って出かけた。

 先日のAプロのマーラーの交響曲第9番が異常な緊張に包まれていたので、今回はどうなるかと思ったが、N響もブロムシュテットも、大きな山を乗り越えた安堵感からか、平常心を取り戻したようだ。そうなるとN響の押しても引いてもびくともしない鉄壁のアンサンブルが戻った。ブロムシュテットの指揮も、楷書体というのか、清潔で格調高く、しかも窮屈なところは微塵もない、ブロムシュテット本来のものに戻った。

 ブロムシュテットは今回N響に客演に来る前にベルリン・フィルの定期演奏会を振ったが、そのときはシューベルトの交響曲第3番を演奏していた。いまはシューベルトに共感を持っているのだろうか。今回の第1番と第6番も共感が溢れる演奏だった。

 わたしはシューベルトの「初期交響曲」(堀朋平氏のプログラムノートによる。第1番から第6番までを指す)が好きなのだが(とくに第2番が好きだが)、今回第1番を聴いて、自分でも意外だったが、単調さを感じた。

 一方、第6番はそれほど好きだとは思っていなかったが、今回は大変おもしろく聴けた。だれか指摘をしているのかどうか、よくわからないが、とくに第3楽章と、第4楽章の一部に、ハ長調の大交響曲「ザ・グレート」を彷彿とさせる部分があった。第6番もハ長調なので同じ調性だが、それ以外にもリズムが似ている部分がある。第6番は「ザ・グレート」の先駆なのだろうか。

 余談になるが、わたしが初めて第6番を実演で聴いたのは、1983年のザルツブルク音楽祭のときだ。当時の若武者ムーティがウィーン・フィルを振った。そのときは「第6番はずいぶん堂々とした曲だな」と思った。演奏がそうだったからかもしれない。なお、さらに脇道にそれるが、当日のメインのプロフラムはロッシーニの「スターバト・マーテル」だった。独唱者はジェシー・ノーマン、アグネス・バルツァ、フランシスコ・アライザ、サイモン・エステスといういまでは夢のような顔ぶれだった。

 話をブロムシュテットとN響に戻すと、演奏終了後、盛大な拍手が起こったことはいうまでもないが、それに応えるブロムシュテットもN響も、マーラーのときのような精魂が尽きた様子はなく、わたしは日常が戻ったと感じた。95歳のブロムシュテットだが、日常は続く。それが尊いのだろう。
(2022.10.22.NHKホール)

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