Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パーヴォ・ヤルヴィ/N響

2017年02月18日 | 音楽
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮N響の定期Cプロ。シベリウスのヴァイオリン協奏曲とショスタコーヴィチの交響曲第10番というプログラムは、来る2月28日から3月8日までのヨーロッパ公演に持って行く2種類のプログラムのうちの一つだ。

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲でのソリストは、ヨーロッパ公演にも同行する諏訪内晶子<追記;ヨーロッパ公演は別の人でした。すみません>。冒頭、弦の小刻みに震える微かなトレモロに乗せて、独奏ヴァイオリンが第1主題を提示するときの演奏が、抑制が効いていて、わたしはたちまち諏訪内晶子ワールドに引き込まれた。

 第1楽章のコーダでテンポを上げる箇所では、諏訪内晶子が先に仕掛けて、オーケストラを先導するように感じられた。第2楽章、第3楽章でも諏訪内晶子の堂々としたヴィルトゥオーソぶりが強く印象に残る演奏が続いた。

 アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番からラルゴが演奏された。最初は(シベリウスを聴いた直後だったからだろうか)、リラックスした清新な演奏が、北欧の音楽のようにも感じられたが、聴き進むうちに、堂々とした構成と精神的に充実した内容を持つ演奏であることが分かった。

 次のショスタコーヴィチの交響曲第10番では、第1楽章の序奏の低弦の音型が、緊張感のある音で、しかも物々しくならずに、快適な流れを持って演奏され、直後のクラリネットの第1主題が、名演というに相応しい意味深い演奏で提示された。

 以下、厳しさがあり、かつ緊張感が途切れない演奏が続いた。パーヴォ・ヤルヴィらしい演奏。前回Aプロのシベリウスの交響曲第2番では、オーケストラにある程度任せているようなふしが感じられたが、今回はパーヴォの意図がより明確に出ていた。N響も渾身の演奏でそれに応えていた。

 先ほど触れたクラリネットをはじめとして、各所で木管のニュアンス豊かな名演を聴くことができた。さすがにN響の首席奏者たちだ。それと同時に、ショスタコーヴィチのオーケストレイションの冴えも感じた。木管楽器の使い方のうまさと鮮やかさでは、ショスタコーヴィチはモーツァルトに並ぶのではないだろうかと思った。

 第2楽章の狂乱の音楽での打楽器のうまさにも感心した。名手・植松氏のティンパニはいうまでもないが、竹島氏のスネア・ドラムの適切な音量と、音楽の流れにぴったり乗った演奏も見事だった。
(2017.2.17.NHKホール)

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