Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

鈴木雅明/東京シティ・フィル

2017年02月19日 | 音楽
 鈴木雅明が東京シティ・フィルを振るのは何度目だろう。ハイドンなどから始まってマーラーまで行った過去の演奏会はすべてよかった。今回はウェーベルンとバルトークが入っている。いよいよ20世紀の音楽にまで及んだ。

 1曲目はウェーベルンの「パッサカリア」。‘作品1’という作品番号が何となく誇らしげだ。いうまでもないが、ウェーベルンは「パッサカリア」の前にもいくつか作曲していた。管弦楽曲「夏の風の中で」がもっとも有名だろうが、それ以外の曲でもよい曲がある。清新なロマンを湛えた曲たちだ。

 だが、ウェーベルンは、シェーンベルクに師事して、ショックを受けたのだろう。その影響の下で作曲した「パッサカリア」に‘作品1’を付けた。自分の歩む道はこの道だという宣言のようなものが感じられる。

 演奏はよかった。どうよかったを、あえて説明してみると、ウェーベルンの精妙に絡み合う音が具現化され、そこに漂う孤独感や、衝動的な情熱の高まりが表現されていた、ということになるだろうか。要するにこの曲をよく捉えた演奏だった。

 2曲目はベートーヴェンの交響曲第4番。この曲を「二人の北欧神話の巨人の間にはさまれたギリシャの乙女」(シューマン)と形容する人は、今はもういないかもしれないが、ともかくこの演奏はとてもそんな性格のものではなく、真正面からこの曲に取り組み、この曲の力強さを示す力演だった。

 わたしは東京シティ・フィルに備わったDNAのようなものを感じた。飯守泰次郎が長年の常任指揮者時代に培ったもので、それが東京シティ・フィルのDNAとなり、鈴木雅明もそれを尊重して最大限引き出しているように感じられた。

 3曲目はバルトークの「管弦楽のための協奏曲」。正直言って幾分食傷気味のこの曲が、鈴木雅明のお陰で驚くほど新鮮に聴こえた。冒頭の弦の囁きからして、音がリフレッシュされていた。続く金管、木管もまたしかり。第2楽章「対の遊び」でのファゴットをはじめとする木管各奏者の多少誇張した演奏も楽しかった。若い奏者たちの自由闊達な演奏が嬉しい。また、エキストラのようだが、トランペットの1番を吹いていた女性奏者はだれだろう。バリバリ吹くのではなく、そっとアクセントを添えるような吹き方が好ましかった。

 終演後、オーケストラから鈴木雅明へ送られた拍手は温かかった。今後とも定期的に振ってほしいものだ。
(2017.2.18.東京オペラシティ)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« パーヴォ・ヤルヴィ/N響 | トップ | B→Cシリーズ浜野与志男 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音楽」カテゴリの最新記事