Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パリ日記4:後宮よりの逃走

2014年11月08日 | 音楽
 翌日もガルニエで、演目はモーツァルトの「後宮よりの逃走」。これは全席完売だった。ガルニエでオペラ、しかもモーツァルトだから当然、ということかもしれないが、もう一つは、演出が人気の女優・映画監督のザブー・ブライトマンZabou Breitmanということもあったかもしれない。

 その演出だが、序曲の途中から、このオペラの前史(コンスタンツェがペドリロとブロンデをお供にして旅行中にトルコ人に捕えられ、それを知ったコンスタンツェの恋人のベルモンテが救出に向かう)をレトロな無声映画で見せるなど、それなりの工夫はあるのだが、総体としては、こういってはなんだが、(今回観たオディやミキエレットのようなプロの仕事と比べて)お嬢様芸的なものだった。

 でも、そのお嬢様芸的な舞台が、ガルニエの独特の雰囲気(ヨーロッパでも類を見ない豪華な装飾と貴族性)に合っていないわけでもなかった。苛々しない自分が可笑しかった。

 歌手はA組、B組のダブルキャスト。初演後(10月16日)間もないので、この日はA組だった。ブロンデをアンナ・プロハスカが歌っていた。知っている歌手はそれくらいだが、他の歌手も見劣りせず、プロハスカだけが目立つということはなかった。皆さん実力ある(もしかすると名もある)人たちなのだろう。

 指揮は音楽監督のフィリップ・ジョルダン。さすがに精彩を放っていた。もっとも、モーツァルトの青春の輝きであるこのオペラを、つまらなく演奏する人は、ほとんどいないかもしれない。でも、そんなレベルではなく、活きのいい音楽の運びは、ジョルダンの音楽性を感じさせた。

 じつはこの公演で一番感じたことは、オーケストラも声楽も、聴きやすい音だということだ。2日間バスティーユで聴いた後、前日はガルニエだったが、PAを使う現代音楽だったので、気が付かなかったのだが、生音のこの公演を聴いて、ガルニエの音は尖っていると思った。残響が少ない(ほとんどない)ので、音が生々しいのだ。

 それに比べてバスティーユの音は、残響が多いせいか、または巨大な空間のせいか(もしくはその両方のせいか)、音の角がとれて穏やかになる。その音が沈殿する。

 現代的な劇場とは難しいものだと思った。顧みて新国立劇場はどうだろう。バスティーユよりはよっぽどいいと思う。それにしては、時々、生気のない公演があるが――。
(2014.11.1.パリ国立歌劇場ガルニエ)

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