Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パーヴォ・ヤルヴィ/N響

2020年02月17日 | 音楽
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮N響の注目すべきプログラム。1曲目はデンマークの作曲家ハンス・アブラハムセン(1952‐)の新作「ホルン協奏曲」。1月29、30、31日にベルリン・フィルの定期で初演された曲だ。ベルリン・フィルと同様にパーヴォ・ヤルヴィ指揮、シュテファン・ドールのホルン独奏。我が国でも新作がベルリン・フィルとリアルタイムで演奏される時代になった。

 アブラハムセンという作曲家は知らなかったので、事前にいくつかCDを聴いてみた。ある種の作風というか、この作曲家が好む音の世界がありそうだ。それをぼんやりつかんだうえで、わたしがN響を聴くのは二日目なので、一日目のFM放送を聴いた。そこまで用意周到に準備をするのは初めてだったが、ベルリン・フィルとリアルタイムという事象に敬意を表して臨んだ。

 実演で聴くと、FM放送で聴くよりも、無音の「間」が生きているように感じた。FM放送で聴くと無音の部分に戸惑い、集中力が途切れがちだったが、実演で聴くと、無音の「間」が音楽に空間性を与え、流れが切れなかった。

 安川智子氏のプログラム・ノートによれば、全体は3楽章からなるそうだが、各楽章には曲想の変化があるようで、全体を通して聴くと、3楽章構成というよりも、むしろ幻想曲風の曲に聴こえた。冒頭部分は郷愁を誘うような曲想だが、それに浸るのではなく、鋭角的な無機質の動きもあり、現代に生きる曲という根拠を保っていた。

 2曲目はブルックナーの交響曲第7番。第1楽章冒頭の第1主題が、遅めのテンポで、入念なアーティキュレーションをつけて提示された。それは旋律線を受け持つパートだけではなく、ハーモニーをつけるパート(ヴィオラやチェロ)の入りのところに軽いアクセントをつける徹底ぶりだった。そのペースは第1楽章を通して変わらず、楽章全体としては克明に音楽のラインを追う演奏になった。

 第2楽章も遅めのテンポで第1楽章のペースを維持したが、第2楽章で特筆すべき点はワーグナーチューバ(4本)とチューバ(1本)のアンサンブルだった。ワーグナーチューバは、普通はホルン・セクションの中に置かれることが多いが、今回はホルン・セクションとは分離して、チューバの前に配置された。その効果は抜群で、第2楽章ではワーグナーチューバがチューバと一体となって動くが、それが視覚的にも強調された。

 第3楽章と第4楽章は、オーケストラ全体がよく鳴ったが、とくにどうということはなかった。第3楽章のトリオで大きなクシャミが聞こえたのは花粉のせいか。
(2020.2.16.NHKホール)

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