Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴァイグレ/読響

2024年01月17日 | 音楽
 ヴァイグレ指揮読響の定期演奏会。1曲目はワーグナーの「リエンツィ」序曲。重心の低いがっしりした演奏だ。劇場でオペラ公演の序曲として聴いたら、堂々とした立派な演奏だと思うかもしれない。だが演奏会の曲目として聴くと、音色の魅力に欠ける。音色をもっと磨いてほしい。ドイツのローカルなオーケストラの音のようだった。

 2曲目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏はダニエル・ロザコヴィッチ。2001年ストックホルム生まれというから、今年23歳だ。驚くほど澄んだ音色の持ち主だ。フレージングも美しい。抜群の音楽性を持っているようだ。

 だが、気になる点がある。たとえば第1楽章のカデンツァが終わり、オーケストラが戻る箇所で、ヴァイオリンの音が聴こえるか聴こえないか、というほどの弱音になった。テンポは今にも止まりそうだ。オーケストラもそれに付ける。そんな極端な瞬間が生まれた。第2楽章にも同じような瞬間があった。終わり間際に音は弱く、細くなり、ほとんど消え入りそうになった。テンポも止まりそうだ。オーケストラも付けている。たぶんロザコヴィッチの意図だろう。ヴァイグレの演奏スタイルではない。

 わたしはその意図をいぶかった。まだ若いので、いろいろやってみたいのかもしれない。でも率直にいえば、そんなことをしなくても、筋の良さは人並外れた人だから、天性の音楽性を伸び伸びと発揮してもらいたい。少なくともわたしは、今が旬の若い音楽性を楽しみたいと思った。

 アンコールがあった。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番から第1楽章アダージョだ。抜けるように澄んだ音色に魅了される。フレージングは美しいという以上に、わたしの琴線に触れるものがある。テンポは遅めだったかもしれない。若者のピュアな感性が捉えたバッハだと思った。

 3曲目はリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」。基本的には1曲目の「リエンツィ」序曲と同様に、骨格の太い、がっしりと構築された演奏で、「リエンツィ」序曲にはなかった振幅の大きさが加わる。だが音色の魅力が乏しい。オーケストラのショーピースと化した曲だから余計にそう思うのかもしれないが、どうしてもローカル色を感じてしまう。

 ヴァイグレは2023年10月にアイスラーの「ドイツ交響曲」で大ヒットを飛ばした。わたしは本気になったヴァイグレに初めて触れた気がした。底知れないパワーがあった。それに比べると今回は通常運転だったかもしれない。次の大ヒットはいつかと思う。
(2024.1.16.サントリーホール)

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