東京都美術館で開催中の「ボルゲーゼ美術館展」。ルネッサンスからバロック初期までの絵画を中心に48点。多過ぎず、少な過ぎずという作品数で、じっくりとイタリア美術を堪能できる。
ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」に代表されるルネッサンス絵画がメイン。私などは名前も知らない画家の作品が並ぶ。その中で自分のお気に入りの作品を探すのがこの展覧会の楽しみ方だろう。
私はリドルフォ・デル・ギルランダイオという画家の「若者の肖像」にひかれた。小品ながら明瞭な輪郭をもった肖像画で、今にも生き始めそう。
また、音楽が好きなので、ヴェロネーゼの「魚に説教する聖アントニオ」にも注目した。向かって左側に海と空が大きく広がり、右側から突き出た崖の上に聖アントニオが立っている。この主題はマーラーの歌曲集「子どもの魔法の角笛」で馴染みだが(後に交響曲第2番「復活」にも転用)、同曲は民謡詩集にもとづくため、アイロニーに満ちている。が、実はヒロイックな話だったのだ。
いちばん楽しみにしていたのはカラヴァッジョの「洗礼者ヨハネ」。この画家の最後の作品の一つ。向かって右上から左下にかけての対角線上に裸体の青年が描かれ、左上からの強い光に照らされている。腹部のしわがリアルだ。放心したような大きな眼と厚い唇。どことなく少年愛を感じさせる。力が漲っていた時期の劇的なものとはちがって、厭世的な気分が感じられる作品。
異色だったのは、ジュゼッペ・デ・リベーラ(母国スペイン語ではホセ・デ・リベーラ)の「物乞い」。ボロボロの服をきた汚い男が、おどおどした眼で物乞いの帽子をこちらに向けている。身なりのよい美男美女のオンパレードだったルネッサンス絵画をみた後ではかなりのショック。これはもう別の時代のものだと感じた。
なんとなくボルゲーゼという名前はきいたことがあるなと思っていたら、はっと気が付いた。レスピーギの交響詩「ローマの松」の第1曲が「ボルゲーゼ荘の松」だった。手元のLP(CDではない)を調べてみたら、原語ではVilla Borghese。ボルゲーゼ美術館のあるボルゲーゼ公園もVilla Borghese。つまりかつての大貴族の邸宅が今では公園として開放され、名前がそのまま残っているわけだ。
日曜日に久しぶりにそのLPをきいてみた。オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏(1973年録音のもの)。暖かくて透明な色彩感にあふれた音色。このコンビはたいしたものだったのだ。
(2010.1.21.東京都美術館)
ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」に代表されるルネッサンス絵画がメイン。私などは名前も知らない画家の作品が並ぶ。その中で自分のお気に入りの作品を探すのがこの展覧会の楽しみ方だろう。
私はリドルフォ・デル・ギルランダイオという画家の「若者の肖像」にひかれた。小品ながら明瞭な輪郭をもった肖像画で、今にも生き始めそう。
また、音楽が好きなので、ヴェロネーゼの「魚に説教する聖アントニオ」にも注目した。向かって左側に海と空が大きく広がり、右側から突き出た崖の上に聖アントニオが立っている。この主題はマーラーの歌曲集「子どもの魔法の角笛」で馴染みだが(後に交響曲第2番「復活」にも転用)、同曲は民謡詩集にもとづくため、アイロニーに満ちている。が、実はヒロイックな話だったのだ。
いちばん楽しみにしていたのはカラヴァッジョの「洗礼者ヨハネ」。この画家の最後の作品の一つ。向かって右上から左下にかけての対角線上に裸体の青年が描かれ、左上からの強い光に照らされている。腹部のしわがリアルだ。放心したような大きな眼と厚い唇。どことなく少年愛を感じさせる。力が漲っていた時期の劇的なものとはちがって、厭世的な気分が感じられる作品。
異色だったのは、ジュゼッペ・デ・リベーラ(母国スペイン語ではホセ・デ・リベーラ)の「物乞い」。ボロボロの服をきた汚い男が、おどおどした眼で物乞いの帽子をこちらに向けている。身なりのよい美男美女のオンパレードだったルネッサンス絵画をみた後ではかなりのショック。これはもう別の時代のものだと感じた。
なんとなくボルゲーゼという名前はきいたことがあるなと思っていたら、はっと気が付いた。レスピーギの交響詩「ローマの松」の第1曲が「ボルゲーゼ荘の松」だった。手元のLP(CDではない)を調べてみたら、原語ではVilla Borghese。ボルゲーゼ美術館のあるボルゲーゼ公園もVilla Borghese。つまりかつての大貴族の邸宅が今では公園として開放され、名前がそのまま残っているわけだ。
日曜日に久しぶりにそのLPをきいてみた。オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏(1973年録音のもの)。暖かくて透明な色彩感にあふれた音色。このコンビはたいしたものだったのだ。
(2010.1.21.東京都美術館)
こちらの展示ですが、それなりにゆっくりと一通り見るにはどれくらいの時間を見積もればよいでしょうか?
関東在住ではないため訪館は一度きりになりそうで、予定を立てる上で大体の所要時間を教えていただけますと非常に助かります。
ご紹介の作品をいくつかググってみたのですが、カラヴァッジョに特に興味を引かれます。
肌に当たる光に不思議なインパクトがありますね。
肌や衣服などはさまざまな光のバリエーションを描くための素材のようにも見えます。
実物を見てみるのがとても楽しみです。
2時間でしたらその後に予定があっても疲れない程度ですね。
東京文化会館へコンサートを聴きに行くついでにと考えていますが、西洋美術館まで同じ日に見ようというのは、さすがに欲張りすぎですか(笑)
ほどほどにしておくことにします(笑)
実は上野駅で降りたことがないのですが、同じ敷地内に上野の森美術館まであるんですね。
おのぼりさんなので、地図を見るだけでびっくりしています(笑)
コンサートの感想の方も、楽しく読ませていただいています。
コンサートホールだけでなく、レストランと資料室まであるんですか。
時間を潰すには困りませんね。
色々と教えていただきありがとうございました。