Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

財務省職員の遺書と手記を読んで

2020年03月22日 | 身辺雑記
 自死した財務省職員・赤木俊夫氏の遺書と手記が載った週刊文春を買ってきた。ささやかながら、供養のつもりだった。一読して、言葉もなかった。人が死を前にして残した言葉は重い。新たな材料があったのかどうか、今までの国会説明と食い違う点があったのかどうか、それはわたしには判断がつかないが、これらの遺書と手記の重みを受け止めることは、それを読んだ一人ひとりに課せられた宿題だと思った。

 記事がよく書けているので、赤木氏の人となりがわかる。一言でいうと、きちんと仕事をする実直なノンキャリアの人だろう。いうまでもないが、官僚組織はこのような人が実務を支え、そこにキャリアの人が来ては去っていく。

 赤木氏は2018年3月7日に縊死した。享年54歳だった。定年まであと数年のベテラン職員だった。直属の上司は赤木氏より年下だったが、その上司を「尊敬していて本当に好きでした。」(未亡人の話)というから、赤木氏の人柄がしのばれる。

 なぜ自死したかといえば、それは文書の改ざんをやらされたからだが、もう一歩踏み込んでいうと、過労によるのではなく、「虚偽」(手記の中の言葉)を強いられたことにより、精神のバランスを崩したからのようだ。手記の一部を引用すると――

 「平成30年(引用者注:2018年)1月28日から始まった通常国会では、太田(現)理財局長が、前任の佐川理財局長の答弁を踏襲することに終始し、国民の誰もが納得できないような詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられているのです。(引用者注:アンダーラインは原文のまま) 現在、近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。」。

 その少し先にはこうある。「本省からの出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省杉田補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。」と。リアルな描写だ。

 2017年7月の人事異動では、同じ部署の他の職員は全員異動したのに、赤木氏は残された。ショックだったようだ。最後に責任を負わされるのは自分だと思った。それはたぶん当たっていただろう。

 走り書きの遺書が残されている。「佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNО.を誰れもいわない理財局の体質はコンプライアンスなど全くない」「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、(引用者注:アンダーラインは原文のまま) 恐い 命 大切な命 終止府(引用者注:「府」は原文のまま)」。この遺書は縊死の直前に書かれたようだ。
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