Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

インキネン/日本フィル

2018年06月16日 | 音楽
 インキネン指揮日本フィルの東京定期は、仕事の関係で、1曲目は間に合わなかったが、2曲目から聴けた。事前には、前半は無理で、後半だけでも聴ければ、と思っていたので、幸いだった。

 聴けなかったが、曲名だけでも書いておくと、1曲目はシューベルトの「イタリア風序曲第2番」だった。珍しい曲で、わたしは聴いた記憶がないので、聴いてみたかった。インキネンの音とシューベルトとは相性がよさそうに思われたが。

 2曲目はメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏はサリーム・アシュカール。名前からいって、中東系の人だろうか(※)。ザルツブルク音楽祭、ルツェルン音楽祭などヨーロッパ各地で活躍し、CDも大手レーベルから出ているそうだ。今や注目のピアニストなのかもしれないが、残念ながら、わたしのほうに気持ちの余裕がなく(仕事の余韻が残っていたため)、演奏に集中できなかった。

 アンコールは「トロイメライ」だった。わたしは、無言歌の中から一曲かな、と思っていたので、これは意外で、演奏に乗り切れなかったというか、自分の気持ちと演奏との間にちぐはぐなものが残った。これもわたしの側の問題だが。

 3曲目はメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。これは名演だった。明るく、澄んだ、軽い音で、浮き立つような演奏。インキネンの美質がよく表れていた。第4楽章では思いがけなくがっしりした音で、彫りが深く、激しい表現を展開した。全体を通して、聴き応えのある、プログラムの最後を飾るにふさわしい演奏だった。

 インキネンの演奏は、とくに何かユニークなことをするわけではなく、自然体というか、てらいのない、素直な演奏なのだが、それでいて、音楽を聴いたという確かな手応えが残る点が、ユニークといえばユニークだ。新奇なものを求める向きには、物足りないと感じるかもしれないが、そこを踏み止まって、聴く側もじっくり構えると、音楽の確かな実体が聴こえてくる。

 インキネンは日本フィルの首席指揮者としての契約を、2019年9月から2年間延長することが発表された。繰り返しになるが、インキネンは、自分の音と、自分の演奏スタイルとを持った、現代には稀な指揮者の一人かもしれないので、その延長期間を含めて、日本フィルが学び、身に着けるべき要素は多いと思う。

 日本フィルはベートーヴェンの生誕250年をインキネンとともに迎える。
(2018.6.15.サントリーホール)

(※)追記:他の方のブログによると、アシュカールはイスラエル出身とのこと。
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