Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2017年01月15日 | 音楽
 東京シティ・フィルは、秋の定期では毎回ベルリオーズを組み入れたが、冬の定期では毎回ベートーヴェンを組み入れている。今回はその第1弾。

 1曲目は武満徹の「オリオンとプレアデス」(1984)。堤剛のチェロ独奏を想定したチェロ協奏曲だが、今回は宮田大の独奏。新旧の世代交代を感じる。わたしは堤剛の独奏でも聴いたことがあるが、そのときの記憶は薄れているとはいえ、深々と沈潜して語り続ける独奏だった(という印象がある)のにたいして、宮田大の独奏はオーケストラの音響空間の一部を構成する感じがした。

 そう感じたのは、オーケストラがよく鳴り、雄弁に音楽を語ったからでもある。けっして背後に引っ込んではいなかった。それが正解かもしれない。概して地味で、変化に富んでいるとは言い難い曲だから。

 アンコールにバッハの無伴奏チェロ組曲第1番から第1曲「プレリュード」が演奏された。低音をたっぷり響かせて、豊かな呼吸感のある演奏だった。

 2曲目はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。冒頭のトゥッティの2度の和音が張りのある音で鳴り、続くチェロの第1主題の提示の後で、第1ヴァイオリンが入ってくるときの音型が、明確なアーティキュレーションを付けて演奏された。それでもうこの演奏がどういうものになるか予感できて期待が高まった。

 以降の演奏は、その期待を裏切らなかった。快適なテンポで進み、所々で顔を出す明確な意図を持ったフレーズ処理に目をみはった。全体を通して新鮮な感覚が漂った。背筋が伸びる演奏だった。高関健の譜読みの緻密さと誠実さは、ご自身のツィッターからうかがうことができるが、以前は(他のオーケストラだったが)整理されすぎて感興に乏しいこともあった。だが、今回は感興が乗っていた。

 個々の奏者では、ティンパニ奏者に感心した。硬めのマレットを使って、パンチの効いた、音楽性豊かな演奏をした。ベートーヴェンはティンパニの使い方がうまいと思うが、そのうまさを十分に感じさせる演奏だった。

 また首席オーボエ奏者の成長が嬉しかった。素人のわたしが‘成長’などというのはおこがましいのだが、今の奏者が入団したときは、正直言って、まだ硬さがあったと思う。その奏者が聴かせどころをきれいに聴かせるようになった。若手奏者の成長ぶりを見ることは、聴衆の喜びの一つだ。
(2017.1.13.東京オペラシティ)
コメント (3)
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